『ドラゴンボール』に本当にバランス感覚があったのか?

『ドラゴンボール』のバランス感覚
http://togetter.com/li/473342
悟空のキャラクター性とそれにまつわる展開に関するtogetterでまとめられてた。
「鳥山先生ってバランス感覚あるよねー」って手放しの絶賛には、悟空はまだこないのか?!で何週間引っ張る気だよ!ってドタバタだった連載当時の印象は拭えない。

さて、鳥山明にバランス感覚の良さはあるのか。

※少し追記。
Togetterの「バランス感覚」という単語はキャラクター造形・関係性でのバランス感覚を主に指しており、この記事でのバランス感覚は作品全体を通じての、という差異が有ります(下部の“まとめ”にも違う部分とは書いていますが)。
ただ作家は創造する世界の全てに対してバランス感覚が必用ではないか?という事。

以下、Togetterの同一視点・同一論での批判ではないとご理解ください。




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ドラゴンボール

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鳥山 明

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七つ集めればどんな願い事も叶うドラゴンボール
一度目に集めた結果としてウーロンは、ギャルのパンティを願い手に入れた。

「なぜギャルのパンティだったか?」と言うこの辺りの考察が先日あったが、個人的には過去の経験
「村から娘を攫ったのは良いけど一緒に住んで、女性の怖さも同時に知っていた」
って前提があったから生身のギャルよりも、とっさに消費財としてのパンティを選んだってところじゃないだろうか。

あるいは
「神龍に願って出したギャル→ただのギャルでは無くスペシャルなギャル→もしかすると二度と離れられない→拘束される→パンティで良いじゃん」
ってのでも良いかも知れない。


ともかく、この初回の解決は正しかった。
「願いがなんでも叶う」という可能性は、漫画の中のバランスを崩壊させる可能性を持つ。


ところが二度目に集めた時は、ウパの父ボラを生き返らせた。

この行為によって
「ドラゴンボールは人の命を蘇らせることが出来る」
可否が証明されてしまった。
生き返る事が出来るならキャラの命はその分軽くなる。

後に苦肉の策として
「一度ドラゴンボールで生き返った死者は二度と生き返れない」
という制限を付けるが、更にナメック星でのオリジナルドラゴンボールであるポルンガにいたっては
「何度でも生き返らせることが出来る」
というルールづけになった。

つまり危機感を煽る為「一度きり」に設定した上で、新たなるルールづけ(ポルンガ)への導線にもなったという事か。
これには本編でインフレを起こした力のバランス・キャラ流用への救済措置になっている面が見える。
(つまりキャラを殺しても新章に変わった時、生き返り→再配置が可能)
そして後半になるにつれてドラゴンボール集めが容易になり、「キャラ救済」の側面しか見えなくなってしまった。

どんな願いでも叶えてくれる幻の秘宝ドラゴンボール。
最重要アイテムだった「ドラゴンボール」はタイトルに残ったが、実質的な中身は「悟空の戦闘物語」に代わってしまった。

比喩としての地球

天下一武道会にて武天老師は、かめはめ波で月を破壊した。
つまり「人間は修行すれば月を破壊する攻撃力を持てる」と定義された。
一人の人間が、手も触れずに直径3,474.3kmもある衛星を破壊する事が出来る。

比べれば範馬勇次郎が、独りで軍隊に匹敵するなんて大したことは無い。

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武天老師からすれば、東方不敗が素手でモビルスーツと戦えるなんて児戯でしかない。


ベジータはギャリック砲を打つ際、
「地球もろとも宇宙のチリになれーっ!!!」
と言ったというのはベジータのアホ発言として(地球無くなったらお前も死ぬだろ)有名だが、パワーバランスからしてもベジータのブラフ(もしくは勢い)だろう。
とはいえそこに「地球」という比喩が登場し、読者も「ベジータは地球を吹き飛ばせる」という結論に到達できてしまう。
なぜならベジータより弱いであろう武天老師が月を破壊出来るから。

そこからドラゴンボールのパワーインフレが加速する。
指一本で惑星を破壊できるフリーザ。
倍率によってインフレを調整できる界王拳。
スカウターも戦闘力の「見える化」を行う事で、読者への「判り易い強さ」を見せる事には成功したものの、逆に際限なく戦闘力の桁が上がることになった(最後には桁の多さに壊れてしまう...計測出来ないからって壊れるってどんな機構なんだ)。
過剰な数字の方が読者へのインパクトがある。

強い敵が現れる→修行→勝つ→ドラゴンボールで修正→強い敵が現れる→修行→勝つ→ドラゴンボールで修正→強い敵が...。


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冨樫 義博

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HUNTERxHUNTER キメラアント篇でのネテロ会長の『貧者の薔薇(ミニチュアローズ)』使用は力のインフレを抑え込んだ。
キメラアントが力のインフレを起こす中、力を抑え込むのにそれを上回る力を使わなかった。
二の打ち要らずと言われた達人 李書文が毒を盛られたように。
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松田隆智,藤原芳秀

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しかしドラゴンボールは最後までインフレを突き進んだ。
大いなるマンネリとインフレ、危機感の無くなったなんでもありの世界の中で。

猪木イズム

まとめの中に出てくる「楽しく戦う」感覚はプロレスに通じている。
プロレスはリングの上で戦う、リングの上で決着を着ける事が正しくてベビーフェイスはリング上での決着にこだわり、ヒールはリング外での非道な行為を行う。がっぷり四つに組み合って力のぶつかり合いを見せる。
猪木イズム、ストロングスタイル。
「いつ何時、誰の挑戦でも受ける」
正面切って戦う→正しいの構図。
ヤンキーマンガや格闘マンガでは王道の構造と言える。
悟空がトリガーハッピーな戦闘バカであり、自分が戦う分のは良いけど、巻きこんじゃダメっていうのも
「テッペン獲るって言うならオレを倒してみろ!」
っていうヤンキーイズムの体現だろう。
ジャンプ式のパワーインフレと修行と精神論。

バランス感覚

バランス感覚ってなんだろう。
全体としてみればドラゴンボールのバランスはグダグダだと思うけれど
勿論ツッコミどころが多いとはいえ名作だし、評価するべきところは多々ある。
でも「バランス感覚」という意味で全篇を俯瞰してみると...?
Togetterのマンガ識者の方々が「バランス感覚=是」としている部分とは違う部分の話ではあるけれど。


以上、あくまで私見でした。