ハチワンダイバー 28巻に見る、吹き出しとフォントの技術

ハチワンダイバー 28 (ヤングジャンプコミックス)ハチワンダイバー 28 (ヤングジャンプコミックス)
柴田 ヨクサル

集英社

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中静そよの結婚発表と同時に、28巻が発売。
相変わらず高クオリティのまま安定感。

まだ予選の真っ最中。これから先は長い。
とはいえ鷲尾麻雀よりは短いだろう。


今回の見所、一番は名人 鈴木大介八段。
ヨクサルさん、張り切って色々仕組んでます。
細かい芸は幾らでもあるんだけど、まずこのページ。
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まず「命の代金を」「払わせる」でフォントを変えてる。
普通だったらこの「払わせる」はトゲトゲした吹き出しにするようなセリフなんですよね。
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こういう感じで(テラフォーマーズ4巻より)
ところがここでは吹き出しは大人しいままで、しかし「払わせる」に込めた決意の重さをフォントで表現してる。
谷生♡明太のフォントが毎回違うのは不安定で危うい不気味さを表現してる。
落ち着かない。


鳴らない音を鳴らすのさ


漫画って音は出ない。
当たり前なんだけど読んでると意識しない。
それくらい漫画の文法っていうのは出来上がってる。
例えば漫画BECKは歌を描かずに歌を表現した。
そこに歌詞も音も無くても、歌っている表情、汗、観客の狂騒、それらで読者の脳の中に歌を作り出した。
一番容易なのは吹き出しの形ですよね。
テラフォーマーズなんかはマトモなアクション漫画なので吹き出しとか、背景とか動きの描写とか真っ正直。
逆に言えば面白くない(漫画文法的に)んだけども。


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鈴木八段がプロ棋士を語る。
圧倒的に重い言葉。
吹き出しはコマの半分以上を占め、ルビはフォントに被ってしまってる。
フォントは黒く太くて四角い。
真面目、真っ正直、王道の印象。
「だから」「プロは強い」「だから」「プロなんだ」
1つ1つのコマの画密度が高く、吹き出しの影から鈴木八段の鋭い眼光が見えてる。

これがもし同じフォントだったとして、脳内でこれを再生する時に
「だから」「プロは強い」「だから」「プロなんだ」

「だから」「プロは強い」「だから」「プロなんだ!!!」
だったら下部の方が強そうにも思える。
しかし鈴木八段が語るプロ棋士が「強い」と言うのは当然の事で声を張る必要はない。
熱量も勢いもいらない。
プロが強いのは当たり前。
名人が強いのも当たり前。
だから、淡々と、ゆっくり、重みがある言葉で。
「だから」「プロは強い」「だから」「プロなんだ」
と語ってる、と。
この2コマでそれだけのことを表現してる。
上手いな〜(うーむ)。


と言う事でハチワンダイバー相変わらず面白い。

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