「音楽CDのような「デジタル本」が欲しい」に違和感を感じたので書いてみた

音楽CDのような「デジタル本」が欲しい/モジログ
色々と思うところはある。


1.コスト


まず、未だに
電子書籍の方がコストが安くつく幻想」
が息づいてるんだなぁ、ってのがしみじみ*1
そもそも売れるにしろ売れないにしろ書籍を電子化すればそれだけコストはかかる。
さらにサーバーの維持費もかかる。
もし電子化の際のレイアウトも考えるならそこにコストが発生する。
すべての本が一律売れるなら良いが、売れない本も電子書籍にするならコストは同じ。
維持費も同じ。
それらのコストと、これまでの書籍流通の中間マージンやコストを比較して
「圧倒的に電子書籍は安く出来るんだ!」
って言いきれるなら、
電子書籍の方がコストが安くつく幻想」
もわかるんだが。

【紙束代】 電子書籍のお値段の適正額について 【内容代】/togetter

電子書籍と「価格」について/電書魂 ─グーテンベルクの遙か彼方へ─

現状、電子書籍にかかるコストが“圧倒的”に安い訳じゃないのは明らか。
だからamazonが国内の電子書籍「既得権益」出版御一行と価格で戦えるのは「自前の帝国」がいかに有用かって現れだと思う。
勿論安くなってくれりゃあそれに越したことはない。


過渡期


んで、次の違和感は何かって言うと音楽は
レコード→カセット→CD→DL販売
の過程を経てきたわけだ。
そして今
CD→DL販売
の“過渡期なう”が現在進行形。

んで言及元が言いたいのは
紙の本→電子書籍
この間に
紙の本→データ単体売り→電子書籍
ってしたら?って言う事なんだけれども。
音楽CDと比較すると色々違っちゃうんですよね、そもそも。


データー単体売りのニーズは?


ニーズが無いのにやってもコストだけで赤字しか出ない。
そしてCDなどのデーターを売るのであれば複製防止は当然考える。
もしCDなどのデータフォーマットに入れて販売した場合、そのデータのプロテクトの手間(新しく開発?)や開発及び海賊版での損害を計算するくらいなら売り手が「読書用アプリと売り場」を作ってDL販売する方が合理的なのは明らか。


誰が買うのか?


出版社が例えば「データ単体売り」をしたとする。
じゃあ主に誰が買うのか?
紙の本=紙の本で買い・読むユーザー
データ単体売り=タブレットやスマホで読むユーザー
電子書籍タブレットやスマホで読むユーザー

電子書籍とユーザーがほぼ同じなのにコストを倍かけて新しいフォーマットで販売しなくちゃいけない理由は?
市場を作り、パッケージを考え、作成し、流通させるだけのコストを払う理由は?


もし電子書籍がなく、KindleもDL販売も無い状態でなら
データー売り→帰ってロードして読み込む
なんて市場が出来たかも知れない。
しかし今やクリック一つで電子書籍が24時間変える市場が出来上がりつつあるところに
データ売りがあればいいな
ていう提言は時期が違うとしか思えないし、首肯できない。

これをふまえて、本というメディアを考えてみよう。いまの本というのは、いわばアナログレコードみたいなものだ。そして電子書籍は、音楽のダウンロード販売みたいなものである。アナログと、データの直接販売という両端はあるのだが、そのあいだの音楽CDにあたる、「デジタルデータが物質にパッケージ化されたもの」がない

まず「いまの本というのは、いわばアナログレコードみたいなものだ」に違和感がある。
CDってデータを取り出した後、売れるんですよ。
本だってそう。
読み終わって「脳へ」データを取り出したら売る事が出来る。
再販ってやつですよね。
市場で見れば「本やCD」は買取してもらえるんですよ。
そもそも「本やCD」が再販できる仕組みに「電子データを取り出した残りかす」っていう発想は無い。
CDは聴くだけ、本は読むだけ。

「作家が書いたデジタルデータを紙という物質にプリントした」
ってのとは違うのかな?
本って電子データが紙にパッケージ化されたものだと思うけれど。

え?そんなのデジタルデータ単体で扱えないって?
自炊でアナログ→デジタルに変換するのが大変だって?
だからじゃないですか。
デジタルデータ販売しない理由は。

アナログ→デジタルは劣化する
デジタル→デジタルは劣化しない

これがデジタル販売の一番大きな問題点な訳でしょう?
デジタルの情報は、無劣化でコピーできてしまう。
どんなコピープロテクトも破られるイタチごっこ。
それを避けたいからこそデジタルでの販売はしない。
PCのプログラムも、映画DVDも、音楽CDも経てきた歴史。
割れ厨の歴史。


元々CDが普及した理由って
「レコードよりも小さくてデジタルなので音も良く」
「対応するプレーヤーも各社発売したから」
広まったんですよね。
ちょうどあの時期ってレンタルビデオ・CDも流行ってたから。
だから元々CDって
「データの直接販売」
なんて売り方は想定してなかった。
CDからカセットテープにダビングしてウォークマンで聴いたり、
CDウォークマンなんてのもあった。
そこにPCが普及して
「データーを読み取って管理しましょ」
「mp3って規格で小さいプレーヤーで聴けますよ」
っていう聴き方が後付で広まった。
だからCDって元々は「データの直接販売」じゃないんですよ。
どっちかって言えば元々
「専用プレーヤーで聴くためのパッケージ売り」
だったんですよ。
中のデーターをいじるなんてのはCDの市場の後発。
そもそも比較として挙げるには微妙だと思う。


http://mojix.org/2013/03/25/ebook-famicon

タブレットは、フル機能のPCに比べれば、操作はそれほど複雑ではない。しかしそれでも、ただ本を読みたいだけの人にとっては、なんだかよくわからなくて、面倒なものだろう。私のように、ITを仕事にしている人間から見ても、電子書籍まわりはまだ環境が固まっていないので、いろいろ面倒くさい。だから、これはPCが苦手だとか、ITリテラシーの問題というよりも、単に電子書籍の環境が未熟なので、まだ使いにくく、わかりにくいというだけの話だろう。

ここでもし、昨日の「デジタル本」のようなものが出てくれば、この状況を打破できるかもしれないと思う


んで、引き続きなんだが、
この部分もなかなか微妙。

例えだが、ウチの上司は最近ようやくAmazonでの買い物を覚えた。
PCは使えるし、コマンドラインも判る。
でもAmazonで買い物をしたことが無かった。
教えてあげてようやく使えるようになった。


もしデーターの単体売りをしたとしよう。
ウチの上司ならどうするか。
買ったとすればまずCDのデータを取り込むだろう。
で、CDに入ってたフォルダを開いてデータを取り出す。
で....どこで読むんだ?
やっぱアドビか、アクロバットか...おぉ、見れた見れた。
スマホには入れられるのか?
いやうちはガラケーなんだが。
どうやってタブレットで見ればいいんだ?
タブレットへの入れ方はどうやって?
管理アプリがあるのか?
管理アプリでは買えないのか?
ただ本を読みたいだけなのにいったいどこで見ればいいんだ??


データ単体売りだろうが、電子書籍アプリだろうが結局ウチの上司は
「新しいやり方を覚えるところからスタート」
になるだけ。
例え自分にとっては
電子書籍EPUBを焼いたデータ売れば便利なのに」
と思ってもウチの上司からすれば
EPUBってなんだ?」
からスタートする。
それならタブレットで書籍の購入が出来るパッケージとしての
「掌の上の電子書籍書店」
の方がよほど請求性が有る。


面白い提言・発想だとは思いますけどね。
ちょっと違うかなー。

*1:勿論、今後の電子書籍化のノウハウと市場次第だが、量が増えれば維持費は比例する