ファッションに興味がない人たちのための「MMM」に関する雑文

前文

http://www.afpbb.com/marieclairestylejp/article/fashion/2911681/9826086
創立以来20年にわたり、「メゾン マルタン マルジェラ」は既成概念を覆すような刺激的な服を世に送り出し、ファッションというシステム自体に多大な影響を与えてきました。しかし若者の中には「メゾン マルタン マルジェラ」のことをよく知らない人もいます。過去のアーカイブに新たな解釈を加えた今回のコラボレーションによって、ファッションを愛する世界中の人に「メゾン マルタン マルジェラ」とは何かを知ってほしい。ひとりでも多くの人と「メゾン マルタン マルジェラ」が刻んできた歴史を分かち合いたいのです
前記事で知識の壁の話をしましたが、ファッションって誰しもが触れているのに知っている人と知らない人の差がとても大きいように感じる。
「服なんてユニクロで充分だし。」
「高い服買うくらいならブルーレイのボックスセット買うわ。」
「もう嫁も子供もいるし、独身時代と違ってモテたいって願望が無いなー。」
「それ以前に服どうこうでモテるレベルじゃ無ぇんだよ。」

毎日、誰しも服は着るのにその服に対する認識が全然違う。



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ここからの記事はモテるかモテないかで言えばモテません
知ってても得にはならないし、知らなくても良い。
アメカジ好きとか、ユニクロで充分って人にも関係ないかも知れない。
マルジェラの話って言うのはそういう
「コンビに行くのに着ていく服」
「モテたいから着る服」
「パーティーに呼ばれたから着る服」
では無く、そういった思考のさらに原点にある
着るとは何か?
なぜ服はこの形か?
着飾る必要がなぜあるのか?
ブランド物の服が高い理由は?

そういった服への疑問です。

ファッションクラスタの重鎮方々からすれば
「お前ごときがマルジェラを語るな」
と言われそうですが、あくまでファッションクラスタ以外の方への
「知識の壁」
への刺激として。

なぜマルジェラか。
読み終わって少しでも服に対して興味を持つ方がいれば記事は成功。




服の存在理由

「ファッションに意味なんてない」と言ったのはアンダーカバーのデザイナー高橋盾だったか。
確かにファッションに意味なんてない。
マルジェラは、その意味を考えた。


メゾン・マルタン・マルジェラ(MMM)は1988年に立ち上がったブランド。
デザイナーはマルタン・マルジェラ。
一切顔を表には出さず、そのまま2009年に退任したと言われている。

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0.ARTISANALE

20090516214727
マルジェラがデザインした服の中には奇抜なものが多い。
カットしたレコードや蝶ネクタイで作ったドレス。スキーグローブを繋ぎ合わせて作ったジャケットなんて言うものもある*1
その服を作るのに既存の(本来ならばゴミとして処理されていたかも知れない)物を職人が時間をかけて繋ぎあわせて一つの形として作り上げて、マルジェラのブランドを付けて販売する。

マルジェラのアクセサリーには真鍮のものが多い。
他にはメッキ加工のものや紙で出来た指輪なんかもある。
ペンキを塗りつけたブーツなんかもある。
時間がたてば錆びる、汚れる、破れる、はがれ落ちる。
そこには時間が表現されてる。
そしてそれがアクセサリーの装飾の一つとなる。
デニムのヒゲやアタリ、ハチノスを愛でるのと同じ。
アクセサリーが錆びるのも汚れるのも一つの個性。
アクセサリーが過ごした時間が表現されてる。

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14.REPLICA

マルジェラのアイテムは番号で別けられてる。
例えばカレンダーのようにタグに書かれた数字の10に〇が付いていれば
「10..男性のためのコレクション」
などわかるようになっている。

その中で14という数字が使われているのがレプリカと呼ばれているラインになる。
レプリカはその名の通り、かつて使われていた古着を元にマルジェラが複製したもの。
つまりそのデザインは過去のもので、マルジェラと言うタグをつけられた複製品。
どこかの古着として放置されているなら安売りでたたき売られていたかも知れないデザインの服が、マルジェラの目に留まり、タグをつけられ売られる。
レプリカと書かれて。
マルジェラのデザインは無い。
あるのはタグと服。
そこで示されるのはデザインの価値

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価値とは何か?

マルジェラの作品には、「懐疑的」な視点があるように思える。

歴史の生み出したデザインに価値があるのか?
服や装飾品は必ずしも綺麗でなければならないのか?
その服はその素材で無ければならないのか?
価値はどこにあるのか?
価値はブランド名か?
素材か?
ドレスやジャケットそのものなのか?

服にまつわる価値観や既成概念、コモンセンス。
そういった「当たり前の事」に対して疑問の提示。

マルジェラの服のタグは四本の白い糸で四隅が留められているだけ。
それはいつでも取り外せるようにするため。
「マルジェラ」というブランド名を服から外せるようにしてある。
ブランドの「名前」の価値はいつでも外せる。
そのタグを外してもそのデザインと服にはその価値があるのか?


マルジェラの後

マルジェラは退任したと言われる。
その後、「メゾン マルタン マルジェラ」は大きく変わった。
ECサイトを立ち上げ、ファストファッションのH&Mやオープニングセレモニーと手を組んだり。
デザインも変わったし、昔から知る人からすれば質も落ちた。

マルジェラの影響を色濃く受けたのはラフ・シモンズかな。
ラフシモンズは建築家を目指していたんだけど、マルジェラのショーを見てファッションの世界に入った。
今や(あの)ディオールのデザイナーを担当してる。

あのマルタン マルジェラのショーが行われたのはパリのなかでもムードのかけらもないエリアで、会場は建物の中じゃなく、黒人が多く住んでいる地区の公園でした。
住民は、子どもたちがショーを見てもいいなら、とマルジェラの会社にショーを許可しました。
みんな、子どもたちがほかの観客と一緒に端でじっと座っているものだと思っていたのですが、そうはならなかった。
モデルにちょっかいを出しはじめたんです。
本当に風変わりなショーでした。
それまでファッションに対する僕の認識といえば、大げさなアメリカ的センスでしかなかったんです。
日焼けしたハンサムな男の子がいて、ヘルシー、みたいな。
マルタンはそれを完全に覆してくれました

http://gqjapan.jp/2012/04/25/raf-simons/


まとめ

マルジェラの服を着てても特にモテはしない。
高くて買えないなんてのもある。
日頃着るのにそんな難しい服なんて無理、って言うかも知れない。

でもそうじゃなく

高い安いじゃなく
モテるモテないじゃなく
着やすい着づらいじゃなく

「服そのものの存在や価値に疑問を持つ服」

そういうファッションもあるんだって知ると服の見え方も違うんじゃないかな、と思うんだけれども。
安くて見た目がそこそこで着れればいいや、じゃなく。

映画が社会問題や哲学的な問題を暗喩的に示すように、
芸術作品が単純に人の心を打つように、
アニメの作画の隅々に書き込みの上手さや演出の妙を見出すように
マイクロアプリのUIにデザインセンスやツールとしての技巧を感じるように。

服もただ着るってだけじゃない。
そういうことです。

*1:アーティザナルライン