周木 律「眼球堂の殺人」は新本格ミステリ好きにとてもおすすめの一冊

眼球堂の殺人 ~The Book~ (講談社ノベルス)眼球堂の殺人 ~The Book~ (講談社ノベルス)
周木 律

講談社
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メフィスト賞作品は出る度に買って、全て読んでた。
森博嗣の「すべてがFになる」を何回も読み直したのを覚えてる。
先日亡くなった殊能氏の「ハサミ男」にも随分と驚かされた。
「六枚のトンカツ」や「コズミック」を読み終わって、壁に投げつけるか古本屋に売るか迷ったのは言うまでもない。
舞城や西尾維新を知ったのもメフィスト賞を受賞したからだった。

それも今は昔。
最近はあまりミステリも読まない。
しかしTwitterで何気に見かけた「眼球堂の殺人」って言うタイトルが気になった。
メフィスト賞受賞で、〜堂なんて建物の名前がついてる。
新本格好きの嗅覚なんだか、本屋に立ち寄ったら最後一冊のサイン本が残ってた。
で、読んでみた。
※以下、ネタバレがあっても保証はしません。「新本格」と呼ばれる作品が好きなら読んでみるのをお勧めします

探偵役は放浪の天才数学者 十和田 只人。
そして語り手はルポライター 陸奥 藍子。
二人が訪れるのは天才建築家 驫木煬の建てた異様な建造物「眼球堂」
集められた天才たち、閉鎖空間、そこで起こる凄惨な事件。

一言で言えば「なんか昔読んだ新本格っぽい!」って感じ(笑)


懐かしい。
こーいうミステリを好きで一杯読んでたなぁって印象。
登場人物一覧、館の平面図とかそういうのがあるってのも嬉しい。
天才学者も色々出て来て森博嗣真賀田四季とか思い出した。


眼球堂


眼球堂って魅力的な建物でまずやられた。
巨額をつぎ込んで建てられた殺人装置。

眼球堂の形状、そして館での殺人事件なら館が殺人装置なのは推測出来る。
最近だと「実はそうじゃない」パターンもあるからその辺りも考えつつ。
だからそれ以上の何かがあるだろう、と思って読み始めた。

眼球堂って名前、もちろん形状だけじゃなく何かあるんだろう。
白目の中を黒目が動くのか?目だから閉じるとか?
すり鉢場?大理石?

昔、綾辻の「霧越邸殺人事件」が片平なぎさと船越英一郎出演でドラマ化した時、童謡になぞらえて殺される被害者の側に山のような折り紙があったり、館内放送(なんと舞台は温泉旅館!)で民謡が流れたりしたりした時点で
「犯人は偶然を装ってここへ連れて来た運転手でしょ?」
って思ったらやっぱりその通りで、その運転手が船越英一郎だった。

まぁ、関係無い話だったんだが館が殺人事件の舞台だったら犯人はその館の主か館の設計者、あるいは親族である事が多い。
固定された椅子から「館が稼働する」ってところに思考が進んで、二重扉なのは二つの扉の間で何かしら稼働部があるのかなぁ、とか。
ドアのロックの類は稼働した際天井か床が全体的に傾いて固定するとか部屋全体が動いて墜落死させたのかなーとか、的外れな推理がしばし。
回廊の方か、なるほどねぇ。

驫木より善知鳥神の方が犯人に似合うなと思ってはいたがアナグラムは気づかなかった。
仕込まれた叙述トリックにもぐぬぬ、って感じで。

新本格の七則
一、事件の舞台は、孤島なり、吹雪の山荘なり、悪天候によって当地へ至るルートが切断された「閉鎖空間」である。すなわち事件発生後は、上映開始後に扉を施錠される映画館のようなもので、登場人物の出入りは許されず、許されるなら警察も排除されるので、先進の科学捜査のメスが入る余地はない。したがって、昔ながらの論理思考によって不明の犯人を推理する必然性が保証される。
二、事件は、施錠可能の西洋式ドアが付いた各部屋を持つ、プライヴァシー重視型の人口構築物内、もしくはその周辺である。
三、ここに居住、もしくは招かれた人々は、小説の冒頭で、全員がきちんと読者に紹介される。この紹介にも確立したルールがあり、若者が老人に変装しているような人物は、「老人」と描写してはならない。むろん犯人は必ずこの中におり、これらの人々は、ひと癖ありそうな、怪しげな住人たちであることが望ましい。
四、いよいよ事件が起こるが、これは血塗られた惨劇で、しかも密室内であることが望ましい。むろんこの段階で犯人が割れるようなストーリーは論外である。
五、ここへ探偵役が、外部から招かれて登場するが、彼は最初の段階から惨劇の館内にいることもある。
六、惨劇は複数起こる。しかし犯人は依然不明である。この段階で、探偵役の推理が、思い違いも含めてしきりに行われる。これと並行し、読者も彼と推理を競うことになる。
七、探偵役により、最後に犯人が指摘されるが、これは読み進んできた読者にとって、必ず意外な人物でなくてはならない。繰り返されるこの限定されたストーリーの枠組の中で、作者は知恵の限りを絞って、犯人のこの意外性を毎回演出しなくてはならない。これを達成しなくては、その作品は大きな成功作とはみなされない。

島田荘司/本格ミステリー宣言 2 ハイブリッド・ヴィーナス論

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新本格ミステリって本来、使い古されたコード型トリックを現代に蘇らせるムーブメントだったのに、いつの間にかそんな新本格も他のミステリも何も変わらなくなって気づいたらラノベと融合だとか、極端に美化された探偵の漫画が出版されてたり、取り巻く状況は随分変わってしまってた。
人称の使い分けと叙述のギミック、大胆な仕掛けと作中作トリック。
密室、嵐の山荘、コード型でありながら複合的なトリックの使い方も王道な新本格ミステリの最新系を思わせた。
次回作は「双孔堂の殺人」だそうだ。
これも是非読んでみたい。

ラスト一冊のサイン本を買ったのも何かの縁だろうし。