今だからこそ「プロとアマの違いなんてなくなる」を振り返る

大阪府が無報酬デザイナーを募集したが抗議を受けて中止。
そのニュースを聞いた家入氏が連続ツイートした内容が話題になり、ウチのTLにも流れて来ていた。
その中身に違和感は感じてはいたものの当時はスルーした。
最近家入氏がロゴデザインの報酬未払いの問題や、カンパでの報酬集め、その後のイベントでの燃料再投下などこを見ているうちに思うところがあったので今だからこそ振り返って考えてみる。


まず区の無報酬デザイナー募集問題。

この件、抗議する意味がわからない。無報酬でも実績を作りたい子が応募すればいいだけの話し。業界を守れ!とか言って、結局食いぶち守りたいだけなんだよ

まずデザイナーが自分の仕事に誇りを持っていたりするから抗議もあるだろう。
食いぶちを守りたいだけ、そんな単純な話じゃないしそこにはデザイナーのプロとしての挟持みたいな視点が全く感じられない。プロがどうしてプロかと言えば自分の仕事に誇りを感じるし、誇りを感じられるだけの仕事を仕上げる。
メシを食うためにサクサクと仕事をこなして右から左へ流しているような、そんなデザイナーばかりではない。

クライアント側からすれば素人考えで
「無報酬のデザインでも名前は売れるだろうし、宣伝効果を考えれば無報酬で受けるデザイナーもいるかも知れない」
という思惑で募集かけたら
「ざけんなよ!デザインがそんな簡単なもんだと思っとんのかボケ!!ケツの穴から手突っ込んで奥歯..(ry」
って反応が返ったんで慌てて引っ込めた。
そんなとこだろう。

無償でもやりたいという人がいる限り、こういった公募は増えてくだろうし、そもそも今回の様な抗議行動を毎回とってたら、それこそ最終的には安価な海外に仕事を発注する様になりますよ。国内の業界的にそれでいいんですかね?

デザインの相場って海外が圧倒的に安いとかある?
国内でもピンキリだし、海外国内で語るロジックに違和感を覚える。
国内の業界って何業界?
デザイン業界全体?大雑把な考え方?
今でも国内の巨大建築なんかだと海外も含めて世界的にコンペやる。
そこって価格競争の世界ではなく実力勝負の世界。
価格競争になり得るデザインの世界と、デザイン力勝負のデザインの世界は別けて考えないといけない。デザインってロゴだけじゃなくって、工業デザインも、建築も、出版も、ウェブもある。
一括りで語ってるけど、全部の業界がそれぞれに違う。


参入コストが急速に下がってくなかで、本当の意味で一億総クリエイターの時代がやってきてるよ。出版もデザインも音楽もファッションも絵画も、極端な事を言うと消費者数を作り手が上回る時代がくる。その中でクリエイターがやるべき事は何か。業界という名の共同幻想を守ってる場合じゃ無いんだよね。

例えばAmazonのKDPでGene Mapperが出版されヒットした。
それを受けて先日ハヤカワ文庫からGene Mapper -full build-として文庫本が発売。
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Kindleから文庫になる、と言う流れが出来た訳ですよね。
モブサイコなんかに代表されるウェブ漫画裏サンデーのコミックでの発売なんてのもある。
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一億総クリエイター時代がくる!なんて理想郷の様に僕もみんなも口にしてたけど、そんな時代が本当に訪れた時、プロフェッショナルとアマチュア、メジャーとインディーズなんて境界線は全て曖昧になり、今までプロとして食えてた人が食えなくなるんだよ。儲かるのはプラットフォーマーだけ。

さて、一億総クリエイター時代って?
確かに誰でも簡単に作品を発表出来る動線が確立しつつある。
個人がKindleで出版するのも、メルマガを始めて金を取るのも、ニコ生主になったりYoutubeに動画をアップして稼いでる人もいるだろう。プロブロガーとかなのってブログの更新とpvによるアフィ収入で食っている人も、ブログが本になったりブロガーが本を書いたり。そう言う人々もいる。
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3Dプリンタが手軽に手に入るようになれば個人で創作物を作るのも雑作も無いだろう。

プロとアマの差ってなんだろうか?
以前からウチでは「ブログは素人が書く同人誌のようなもの」と書いてる。
クオリティを期待されない、どんな中身でも許される無料の同人誌。
そんな同人誌も読まれる事で報酬が発生し、それで食う人がいる。

どうして食えるかといえば(炎上メソッドは文脈が変わるのでここでは端折るが)それはそのコンテンツのクオリティが高いからだろう。
読んで面白い、読みたくなる、読者がついている。
ブログは同人誌に等しい。だから品質も品位も低いものも多いし、pvも低く収入なんて数十円〜数百円なんてブログも多い。
pvが低く止めてしまうブログも多い。


KDPはどうだろう。
確かにGene Mapperは成功したし圧倒的に売れた。
でも素人のヒット作がぞくぞくと続く、なんて状況はない。
結局売れるものはクオリティが高く話題になり、だからこそ売れる。
本来なら商業的に成功出来るクオリティだったコンテンツが埋もれていたんだけど、動線が出来たから世に出て来た。

一億総クリエイター?
アマとプロの差が無くなる?
プロはアマチュアとの格差としてくクオリティの高いものを作り出さなきゃならない。
ん?でもそれって当たり前の事じゃない?
クオリティが高く品位の高いものを作り出せるからこそプロ。


アマチュアがクオリティの高いものを作り出せてプロとやり合える。
それはアマチュアではなくプロじゃないかな。
作り出した作品で飯が食える事をプロと言う。
一億総クリエイター時代。
聞こえは良い。
言葉の響きは「新しい時代の幕開けだ」とまるで革新的な時代が来るかのように思える。
でも現実は?
確かにキックスターターなんかで海外では新しく世に出て来るガジェットは増えた。
でもだからってこれまでのプロや企業体を脅かすような存在になっているか?


プロは作り出した作品にクオリティを保ち、作り出したものに責任を持ち、作り出したものに自信がある。自分の仕事に挟持を持ってそれを提供出来る。
それがプロでしょう。
プロとアマの差が無くなる?
プロの品位が下がる?
それとも価格だけの話をしてる?
安価で提供するアマが大量に出て来る事でプロがあたふたする?
もし価格でしか勝負出来ないプロなら淘汰されていい。


例としてファッションモデルなんかはわかりやすくて、モデルという職業がコモディティ化した結果、「読者モデル」なんて読者なのかモデルなのかよくわからない曖昧な職業が登場し、渋谷で石投げりゃ「読モ」に当たる様な時代。結果、モデルのハードルは下がり、食えてたモデルも食えなくなってきてる。

モデル業界をどんだけ知っててどの辺りのモデル業界を指してるのか判らないけど、食えるモデルが食える、食えないモデルが食えないなんて昔っからずっとそうですけど(笑)
読モが出て来てモデルが食えなくなって来た?
そうじゃなくて出版不況でファッション誌が売れないからモデルの仕事が減ってんだよ。
宣伝広告費を削るからモデルの仕事が減ってんだよ。
どこのモデルの話?何言ってんだろう??


電子出版がやってきてそれまで夢のまた夢だった出版が誰でもコスト低く出来るようになる。ニコ生の登場で誰でも不特定多数へ生放送が出来る。3Dプリンターの普及化で誰でも造形士になれてしまう。全て同じ流れ。コストもハードルも下がり、プロがプロたりえてた部分がコモディティ化し均一化していく。

正当な対価だの、健全性を守れだの言ってるやつらは結局、既得権益を守りたいだけなんだよね。もちろん、そこで食ってる人間の心理としてわからなくも無いんだけど、そんな事言ってても何も変わらないでしょと。ぬるま湯の中で茹で蛙になりつつあるのに気がつかないのかなと。


クリエイターレベルなのか企業体レベルの話なのか判らないけど漠然とそういう既得権益に対して嫌悪感を抱いて書くのは、経歴を考えてもこの人ならそう言う思考でおかしくないとは思う。
既得権益既得権益ってすごく悪い事のように言うけど既得権益ってそれを確定するまでの努力があって成立してんだよ。守ろうとすんのは当然じゃないの?


既得権益を倒したかったら努力すれば良い。
その既得権益を作るために流された血と汗以上に、血と汗を流して戦えば勝てるんじゃない?
麦酒片手にカンパしてくれとか叫んでる場合じゃないだろ。
一億総クリエイターなんだから頑張れば良いんじゃね?
「既得権益なんてずるいよー」
なんてバカバカしい。くだらない既得権益なら潰してやれば良いだけ。
世の中なんて差別とハンディキャップで出来上がってる。
みんなに同じ権利を、
みんなに同じ条件を。

理想は理想で結構だけど既得権益はどこまでも存在し続け、プロとアマも存在し続ける。

正当な対価だの、健全性を守れだの言ってるやつらは結局、既得権益を守りたいだけなんだよね

それってすごい考え方じゃね?
だって
「周りで安く売ってる連中がいるんだからお前の品質がどうであれ安くしろよ」
「で無いと生き残れないぞ」

それってすごい考え方だと思う。
つまり無料で落ちてるものと、金を払って買うなら落ちてる方を選ぶんだよね?
そん時に品質とかは気にしない訳だ。
でも世間の流れって結局「高くてもキチンと価値のあるもの」に流れてるんじゃない?
その正当な価値を対価で評価出来るののに対して正当に対価を支払う。
それでなければモノの価値ってなあに?って話になる。
こういう思考をする人が出て来て、一見良さそうで的外れな発言が評価されたり信者がわいて出たりする。ヒトラーが「どうせ付くなら大きな嘘の方が良い」と言ったとか言わないとかあるけど、夢を語るなら大きな方が良い。人は騙されて安易にその夢に食いつく。
仔細なんて気にしない。


そりゃこんな発言するんだからロゴ代も支払わないわね(笑)
納得納得。

今から振り返ってもよく判る。
この発言の中にプロから作り出されるものに対して挟持やプライドがあったり、
そんなプロの創造物に対して評価や尊敬は感じられない。
つまりアマだろうがプロだろうが安くてそれなりならそれで良い。


このブログ、GWも平常運転でお送りしております。