西澤保彦「彼女はもういない」

彼女はもういない彼女はもういない
西澤保彦

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Kindleの電子書籍30%ポイント還元時、一気に買い込んだ。
その一冊、西澤保彦氏の「彼女はもういない」を読み終わった。



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西澤保彦作品は、デビュー時から読んでる。

講談社ノベルスから「解体諸因」などトリッキーな作品。
同じ時間を繰り返す「七回死んだ男」、瞬間移動能力を持った主人公が殺人を企てる「瞬間移動死体」などの特殊な設定を使った作品。
それが「麦酒の家の冒険」辺りからロジックもの(毒入りチョコレート事件的な)ものとか、あるいは「猟死の果て」みたいに狂気に満ちた作品まで幅広い作品を上梓してる。

今作はどちらかと言えば「猟死の果て」に近い雰囲気。
他作家で言えば我孫子武丸氏「殺戮にいたる病」が挙がる。

連続殺人

主人公鳴沢は、金持ちの息子だが劣等生。
卒業名簿、住所の無い幼馴染、音響部屋、連続暴行殺人、強姦を撮影し送りつけるDVD、記憶喪失のホームレス、甥。
パズルのピースがすべて揃い鳴沢の狂気が走り始める。

正直、後味が悪いし誰にでもオススメできる作品ではない。
途中の強姦殺人なんかも是非読んでくださいと言えるものでも無い。
ただ入り組んだ物語と主人公の行動と目的が明らかになり、最後の真相が現れた時に見える風景。
「彼女はもういない」
作品に付けられたタイトルに真相が重なって唸らされるのは間違いないところ。
なるほど。

ただ主人公の犯行動機が...ぐぬぬ、だなぁ。
そこが理解出来ないし、刑事が理解できたのもよく判らん。
良く判ったな。

ネタバレ

※ここからはネタバレです



さて読んでいて違和感を感じる動機の部分の詳細を。
鳴沢は、金には不自由なく育った。
ただその金が原因で周囲と距離を作ってしまった。
音楽で繋がった関係は特別で、だからこそ鳴沢は奏絵との関係が無くならないでほしかった。
そこまでは判る。
でも、だからと言って殺人事件を引き起こし招きよせなきゃならない、と言うのは動機としては弱い。
どちらかと言えば手段が目的と言うか。
連続殺人こそが目的で、その先に奏絵との再会がある、と言うなら判る。
どうにも読んでいるとそういう感じを受けない。


「彼女はもういない」と言うタイトルと奏絵は本当に「彼女」としては居なくなってしまった、と言うダブルミーニングのタイトルは感心するし、ジェンダーに関しても出てくると予測はしていたが(最初は鳴沢が女性ではないかと思いながら読んでた)途中で女装の話が出て来たからそこでジェンダーは終わったかと思ったら最後の最後で出て来て驚いた。
ダブルが鳴沢に似ている理由は単に「DVD投函時に防犯カメラに映ったのがダブルだった」という事に使いたいために似ていると思ってたのに、さすがなるほど。

なんだか非常に惜しいと言うか。
全体的に端正なミステリなのに鳴沢の動機の部分に感情移入出来ないから入りきれなくて、だからきれいなトリックもハンパって言う。
勿体ない。

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