「薄汚れたシンデレラの娘」と引用文化

「薄汚れたシンデレラの娘め...」
色んなブログでこの「あまちゃん」太巻(古田新太)のセリフについて「アレの元ネタはね」なんて書かれてると思う。

大映テレビ制作1985年のドラマ「少女に何が起ったか」の中で悪徳刑事 川村(石立鉄男)が主人公 雪(小泉今日子)に向かって
「おい!薄汚いシンデレラ!」
と言う台詞がある。
主人公 雪(小泉今日子)は北海道の漁港で働いてたのに実は父親が有名なピアニストだったと言う事で、突然東京の大学に特待生として入学する。
突然の成り上がり。
だから川村は、そんな雪を揶揄して「薄汚いシンデレラ」と呼んでた。


ドラマや映画なんかでは小ネタと言うか、音楽なんかでサンプリングとも言う。
小ネタと言っても「時効警察」のような遊びの小ネタでは無く、既存のコンテンツから一部を切り出し引用したり或いは変化させたりする事で新たなコンテクストを付与する、そういう使い方。



押井守イノセンス」の中に、オンラインでウェブに常時接続した義体経由でセリフを引用するシーンある。

ダイアログっていうものをドラマに従属させるんじゃなくて、映画のディテールの一部にしたかったというのが動機です。 劇映画の台詞って退屈ですよね。ほとんどが説明やなりゆきで。それが嫌だった。というか、もっとやることがあるんじゃないかと。言葉それ自体をドラマのディテールにしたかった。ディテールである以上は、それなりに凝ったものでなければならないわけで。一つ一つに足を留めてもいいような陰影のある言葉。ちょっとした人物が吐く台詞も何物かであってほしい。たとえば刑事の『柿も青いうちは鴉も突つき不申候』とか。ドラマといったん切り離したときに言葉は映画のなかでディテールになる。可能であれば100%引用で成立させたかった。古典に関してはほぼそのまま引用しました。世阿弥とかね。様々なレベルで、言葉を機能させたかった

http://freett.com/iu/innocence/quote.html#INNYOU


引用って別に珍しい訳じゃなくって、海外の映画・小説を観る/読んでればシェークスピア作品のセリフやポーの詩を引用したりなんてしょっちゅう見かける。
別に新しい試みではないし、パクリだなんてバカは、もはやない(Never More*1)。
でもイノセンスが公開された当時、引用のセリフに対して批判する声も多かった。
パクリなんていうのも見かけた記憶がある。
今となってはツイッターでいいセリフだと思えばRTし、パクリツイッタラーはふぁぼ狙いで他人のツイートを盗みまくる。
どっかのアルファブロガーは、引用の範疇を越えて本の中身丸写しの記事を書き、その記事に「これはいい記事だ」なんてバカがバカコメントを付けて拡散する。またその記事を読んだバカフォロワーがバカリツイートをしてバカに拡散する。

「パクリだ!」
考えなしのバカはよくパクリと口にするが、どこまでがパクリでどこからがパクリでは無いかの線引きも出来ないクセに無知無能をさらして「パクリだ!パクリだ!!」と騒ぐ。
権利者でも関係者でも無いのによくもまぁ。


サンプリングについての考察/HIP HOP FLAVA

HIP HOPにおけるサンプリングとトレンドプロデューサーの歴史/Sampling-Love
ヒップホップにおけるサンプリングの歴史は70~80年代辺り。
いわゆるレイヴカルチャーの起源が80年代後半。
アシッドハウス、テクノ、マッドチェスター、イビザ島、ハシエンダ
DJがレコードをかけて大きなハコで観客を躍らせる...
「生演奏では無く録音された誰かの曲を使う」
本来単体で成立していた曲がDJのかけるレコードによって新たな形で繋がれ、これまでと違うコンテクストが付与される。

・【The Prodigyプロディジーのサンプリング元ネタまとめ
http://matome.naver.jp/odai/2132593751727476801



映画で言えば「ウィルヘルムスクリーム」が有名。

ウィルヘルムの叫びは『スター・ウォーズ』をはじめとする多くのヒット映画や、テレビゲーム・テレビ番組などで使用されたことにより有名となった。
誰かが、矢で刺される、爆発に巻き込まれる、転落するなどして死亡する際にしばしば用いられる。 今までに217本の映画で使用されているとされ、映画界におけるクリシェとなっている。
名称の由来は、1953年の西部劇映画『フェザー河の襲撃』の登場人物で、矢で射られるウィルヘルム二等兵にちなんでいる。その際に使われたのがこの素材の2回目の使用で、ワーナー・ブラザーズの音響保管ライブラリーから使用された最初の例と考えられている。
この叫び声の主については、「パープル・ピープル・イーター」などで知られる、歌手、俳優のシェブ・ウーリー(Sheb Wooley)だとされている

ウィルヘルムの叫び/Wikipedia

「ウィルヘルムスクリーム」映画の「叫び声」で使われるサンプリングの定番素材。


アンディ・ウォーホルの「Big Torn Campbell's Soup Can」なんかに代表されるキャンベルスープ缶。

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ひとつひとつはキャンベルスープの缶。
それを繰り返す事で大量生産と没個性、そしてそのキャンベルスープの缶の意匠のひとつひとつが意味性を無くして、総体として一つの新しいコンテクストになってる。これも引用と言えば引用だろう。
キャンベルスープからデザインだけを切り出して貼り付け新しい意味を持たせてる。
マリリン・モンローの肖像を使いながらも、趣味の悪い原色を塗る事でその画はマリリン・モンローの肖像と言う意味から切り離されるが、実在したモンローのストーリーはそのままに虚飾と無為が付与される。
...ウォーホルを偉そうに語ると専門の人に色々言われそうなのでこんなもんで。
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ネットに落ちている知識(知財)は、無料(フリー)に見える。
大いなる集合知バンザイ。
しかし誰のものとも分からない権利の知識と、権利者がはっきりしていてそれを所有している人間の許可が無ければ使ってはいけないものも当然ある。
なのに「どうして使っちゃいけないの?」「だってオレが使う事で有名になってオレも得だしその人も得だし一挙両得でしょう?」なんて言うのは昔から「盗人猛々しい」とか「開き直り」とか「逆切れ」とか言う。


このツイートほんと好きだわwwwwwwwwwwwww

毎日のようにトゥギャッターでバカの開き直りはさらされて、ブログは炎上してるがそれでもあいも変わらずネットはネットのまま。


引用って何だろう?
ネットが普及してその意味はもっと考えなければならない筈なのにみんな「別に誰かに迷惑かけてる訳じゃないし」となぁなぁでやってる。
でも、これからは新しくゼロから想像されるものよりも、そういう引用やサンプリングを使ったコンテンツが主流を占めるんだろう。

ならそこで生き抜くためにも引用に関してきちんと自分の中にルールを持っておく方がいい。
勝手なルールでは無く、正しいと主張できるだけのルールを。
正しさなんてどこかから引用してくればいいんだから。

正義も悪も、もうどこかに転がってる。

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*1:もはやない:エドガー・アラン・ポ―「大烏」より