「暗殺教室」を読んで考える先生と生徒の関係

・なにも特別ではない平凡なひとのための物語/かわんごのブロマガ
http://ch.nicovideo.jp/kawango/blomaga/ar316513

松井優征「暗殺教室」を読んだ。
暗殺教室 4 (ジャンプコミックスDIGITAL)

ある日突然、進学校「椚ヶ丘中学校」の落ちこぼれ組・3年E組の元に政府の人間と、どう見ても人間ではない謎の生物がやって来た。マッハ20で空を飛び、月の7割を破壊し常時三日月の状態としてしまう危険な生物は「来年3月までに自分を殺せなければ地球を破壊する」ことを宣言。そして、何故か「椚ヶ丘中学校3年E組」の担任教師となることを希望した

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「教師が宇宙人」というまでならありそうな話だが、そこへ「先生を殺せなければ地球が破壊される」という突飛な発想が加わってる。
通常、生徒と教師は「教える者と教えられる者」の関連性で成立している。
人として成熟しているとは言い切れないような人間でも教師になれば、子供らに対して何かを「教える」事になる。

学校で先生が教えるのは勉強だけではなく
「先生が人生について教える」
構造を持つのが
「金八先生」「熱中時代」であり。
「GTO」であれ「伝説の教師」であれ、模範的でなくても結果的に生徒はそれを学び成長していく。
模範であれ反面教師であれ。
女王の教室」では教師が生徒らの壁になって立ちはだかる事で「戦い乗り越えていく」事を教える。
学園モノにおける先生と生徒間の関係性。


「暗殺教室」を読んでいて思い出したのは本谷有希子の「乱暴と待機
乱暴と待機 (MF文庫ダ・ヴィンチ)
乱暴と待機」の奈々瀬は、兄 英則に天井裏から覗かれて生活している。
覗かれていることを知っているし、知られていることも知っている。
そして二人は、実際は兄妹ではない。
疑似兄弟が除くものと覗かれるものと言う関連性に成り立つんだがその動機に「復讐」がある。

英則は過去の事件から奈々瀬に復讐しようとしており、奈々瀬は英則に復讐される事を待っている。
復讐しないのは復讐してしまえば関係性が終わってしまうからで、「復讐者/非復讐者」その関係を終わらせたくないために二人はひたすら毎日覗き覗かれあう。
愛や恋は相手に幻滅したりぶつかり合いいずれ冷めてしまう。
同じところに生まれただけ、と言う家族と言う関係性も二人には容認できない。

永遠の愛は疑ってしまうけど、永遠の憎しみなら信じられる
しかし過去に原因があり、実行しない限り解消できない「復讐」という絆は、愛や恋等よりも信頼できるし二人はそれに寄り添って生きている。

映画にもなってる。


教師と生徒の関係性はとても複雑でとても微妙。
少しのやりとりの不手際でいつでも壊れるし、修復は難しい。
だからこそ教師の力量・技巧が問われてしまうし、それは多くが見合わない。

殺せんせーは生徒に勉強を教え、生徒らは教師を殺そうとする。
「暗殺教室」の殺せんせーと生徒の関係性は「先生と生徒」であると同時に「殺すもの/殺されるもの」
生徒は能動的に教師に向かい、結果的に生徒らは勉強以外の何かを学ぶ。
「暗殺」と言いながら相手が「宇宙人」だからこそその響きに暗いものが無い。


学校という空間の軸になる「勉強」と「人間的成長」
教師は「勉強」を教え理想論的には「人間的成長」を支え、生徒らの範になる。
しかし実際は生徒らは「人間的成長」を自らや友人関係、ネットなどで学び、教師に学ばない。
だからこそモラトリアムであるドラマや映画、マンガは「人間的成長」を学校の舞台にする。


生徒らの模範になる「教師」というキャラクターは消費されてしまった。
だから「鈴木先生」では、先生でも人間的苦悩をもって描かれ、
女王の教室」では生徒らの敵として登場した。
生徒らは、自分たちで成長する。
ただ模範になり、ただ生徒らに人間的な成長を促す。
そういうキャラクターでは成立しなくなってしまった。


かつて父親は「父親」で、母親は「母親」
子供は「子供」で、先生は「先生」だった。
サザエさん幻想のような家庭像からすっかり家族は変わり、学校も変わった。
先生は尊敬されるべき対象から「勉強を教える専門員」へと変わった。

3年E組の生徒らは不自然な「暗殺」という関係性を通じて、模範にするのではなく自らで学びとり殺せんせーはその補佐をしてる。暗殺と言う絆が人間的成長を支える構造。

作品に登場する学園長は「勉強」「人間的成長よりも勉強(スポーツ)が出来る方が素晴らしい」という評価軸の暗喩として登場する。
「人間的成長」を主とする3年E組は、だからこそ学園長の目の敵になる。


連載を読んでないので何ともだけれど、殺せんせーの
「なぜ教師になって生徒らに教えるのか?」
辺りの処理と、成長した生徒らが最期にどういう判断を行うのか。
その辺りも楽しみなので読んでいきたいと思ってる。

暗殺教室 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)暗殺教室 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
松井 優征

集英社

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