ジーンズはなぜ穴が開いていても許されるのか?

服屋に行くとダメージジーンズ(デニム)が並んでる。


店に並んでる新品。
なのに破れていたり穴が空いたり糸が解れたり擦れたり変色したりしているのに平然と並んでる。
ユニクロですら擦れた跡があるやつを売ってる。
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あれを
「どうして壊れてるのに許されるんだろう?」
考えてみる。


文房具店に新品のノートが並んでる。
それが破れていたり穴が空いていればどう思うか。
「これ穴空いてるんですけど?!」
もし買っても返品に出来る。
破れたり穴が空いたりしてるノートは、売り物として成立してない。
ジーンズなら良いがノートならダメ。
どうしてだろう。


マルタン・マルジェラと言うデザイナーが居た*1
マルジェラのアクセサリーは真鍮のものが多い。

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通常アクセサリーは貴金属で作る。真鍮にメッキしては作ったりしない*2
メッキはいずれ剥がれる。
使えば使うほど真鍮は錆びる、汚れる。


錆や汚れは、それを身につけた人間の時間を表す。
使えば使うほどに汚れるし錆びる。
その使った「人の時間」が錆びや汚れとして表現される。


ノートはツールで、指輪やジーンズは装飾。
装飾は表面上のテクスチャ「表現」が重要で主眼。
ノートは「書く」「記録する」ためにある。
だからノートのようなツールは用途に「時間の表現」を必要としてない。

ツールは大量生産され、並べられ、使われ、消費される。
何かしらの用途に対して「使う事」を主眼にするツールは経過時間を必要としない。
ユーザーは錆びたニッパーが欲しいんじゃなくて、よく切れるニッパーが欲しい。
汚れたノートじゃなくてキレイなノートが欲しい。
使ってれば自分なりの味が出るし、その前に使い切ったり捨てるモノも多い。


使い込まれた風合いがあり、コーヒーが入ったカップが置かれた輪のような跡があるノート。
そんなモノは一点もので、限られた人しか買わない。
「いや、オレは欲しいけど?」
そういうひねくれ者も中にはいる。
しかし、そのノートが何万もしたらどうだろう。
ノートにそれを求める人は少ないから造られない。


ダメージも装飾になる。
その道具が過ごした時間や環境が道具にテクスチャとして張り付く。
マルジェラはあえてそれを意図的に行う事で
「装飾はキレイなら価値がある」
と言う固定観念を相対化して見せた。


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道具は使い込めば「味がある」と言われる。
では装飾品はどうか。
装飾品が汚れれば、汚ないと言われる。


もし店に並んでいる時から
「この装飾は汚れる事を意図しています」
「汚れている事で時間を表現しているんです」

としたら汚れの価値は変わるのか?


ダメージジーンズは「破れている事」「擦れている事」に価値があるんだ、と汚れや時間経過の表現をあえて(意図的に、疑似的に)行う事でそれを価値にした。
それが当たり前と受け取るように「常識」として刷り込まれている。
「常識」を刷り込まれていない子供が見れば
「ねぇ?どうして穴が開いてるの?」
と聞かれたりする。
疑問に思うのが当然の筈なのに、何とも思わずあえて汚れ破れているものを買ったりする。


モノの価値とは何か。
そのモノにそれだけの価値があるか。
そもそも価値とは何か。
なぜ価値を感じるのか。
なにも考えずに単に価値があると言われ価値を感じ購買してる。


少し考えてみれば違う風景も見える。
朝からこんな事を考えた(前にもマルジェラで書いたけど)。

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*1:ブランドは残っているがデザイナーは引退した

*2:三流ブランドならまだしも