昭和プロレス裏面史 原田久仁信「劇画 プロレス地獄変」

劇画 プロレス地獄変
プロレススーパースター列伝原田久仁信氏によるプロレス裏面史
「劇画 プロレス地獄変
既発の別冊宝島 プロレス劇画シリーズを一気に収録した一冊。
450ページ近くあってとても分厚い。
とはいえ紙質が安い感じなので見た目よりは軽い。


プロレスの世界は、表舞台の派手さに比べて裏側は昔ながらの興行商売だし、ショービジネスだがシステムでは無く人と人との縁と付き合いで出来てる。
だから騙したり裏切ったり駆け引きもあれば恩もある。

そして金。
金で動き、金が無ければ始まらないし、何よりも金。

長州のWJ、NOAHのタニマチが起こした詐欺事件、猪木が北朝鮮で行った興行、ラッシャー木村。
レスラーだけではなくターザン山本やKー1の谷川氏、永島勝司のナイガイ→リアルスポーツの話までとりあげて劇画にしてる。

かの有名な前田日明vsアンドレ・ザ・ジャイアント戦をとりあげているが、ミスター高橋氏の視点から書いてるのも面白い。

田コロ(田園コロシアム)でのスタン・ハンセンvsアンドレ・ザ・ジャイアントなんていうのもある。


昭和のプロレスとは、猪木と馬場だったんだろう。
馬場がいてこその猪木で、業界はそのバランスで保たれ馬場が居なくなりかつての全日は内紛状態になり群雄割拠し、その中で猪木は周囲を置いて独りで暴走を始める。猪木はカリスマだが独善的でアクが強い。
だからこそ「プロレス」と言う裏にドロドロと黒い闇を抱えたショービジネスを成功させた。


小学生の頃になぜか学校に全巻揃ってた「プロレススーパースター列伝
ハンセンがウエスタンラリアートを必殺技として編み出し、木に吊るしたタイヤに腕を打ち付けて修行したとか、幼心に読んだあのマンガによってそういう与太話を沢山インプリンティングされた。

上田晋也「ハンセンはハンセンでさ、木に吊るしたタイヤをバンバン(ラリアット)。」
上田晋也「(左腕が)こんなに腫れ上がって。」
有田哲平「ハンパない腫れ方。ラオウ以上に。それを水に冷やしながら寝るんだよね。あとドラム缶とか潰したり。」
上田晋也「ドリー・ファンク・シニアが帰って来た時に、(ベアハッグで)潰すんだよな。「これで俺をアマリロ道場に入れてくれ」みたいな感じで。」

上田ちゃんネル #32-2


その虚構は、素直な子供の頃の心に染み込んでリングの上を一層華やかな夢の世界に仕上げた。
あの頃に「プロレスが強いのか?」なんて誰も思わなかった。
だって強いのは明らか。
なにせブッチャーはガマ・オテナにシンガポールでカラテを習ったんだから。
強いに決まってる。
プロレスのギミックなんて気づいても別にどうでもいい。
だって面白い。
そんな事を偉そうに「オレは判ってるぜ」なんて言うヤツの方が野暮。
流れてる汗もぶつかり合う筋肉は嘘でもなんでもない。


しかし表向き華やかで光が強いほど、その影も濃い。


藤子・F・不二雄が描いた「劇画オバQ
子供らに夢を与えた「オバケのQ太郎」から15年。大人になった大原正太の元に帰って来るQ太郎。
しかし大飯食らいのQ太郎に居場所は無く、Q太郎はオバケの国に帰ってしまう。

藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編 1藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編 1
藤子・F・ 不二雄

小学館

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プロレススーパースター列伝が「オバケのQ太郎」のように子供に夢を与える作品だとすれば、この「劇画 プロレス地獄篇」は、「劇画オバQ」のようにプロレスのリングでは描かれ無い、プロレスから夢を除いた部分が描かれている。
当然、読む人を選ぶ作品。
大した説明もないままに進んで行くし
ターザン山本が競馬のせいで人生をダメにする話」
なんて誰にでも勧められるわけはない。
これを読んで面白いのはマンガを読みながらあの甲高い声を脳内に再生できる人たちだと思う。
それにK-1が没落し、谷川氏の寂しそうな背中に漂う哀愁...。


業界ゴシップ、プロレス裏面史、あの当時のアンドレの悲しみとか、ギミックとか、橋本とか、猪木とか、藤波を一喝して黙らせる猪木とか、笑ってるのに目が全然笑ってない猪木とか、とっても怖い猪木とか。
そーいうのに興味がある人にはお勧めの一冊。
ボリュームがあるので寝転んで読むには少々つらい(軽いとはいえ)。

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原田 久仁信

宝島社
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