「物語」を読み込みたい人に贈る映画5本

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考えるな、感じるんだ。

それは確かに至高だけれど考えて面白い作品だってある。
特に暗喩が全編にばらまかれている作品は。

「果たして何を現しているのか」
「物語の構造とは何か」

ウチは、昔っからそーいう見方が好きで過去に「HUNTERxHUNTER」でやったりしたけれども、映画でもそれをやりながら観たりもする。
上記記事で言う「分析力」が何かは判らないけど(「マネーボール」って...)物語として分析や理解、思考が必要な映画ならいくつか知ってる。
どれも面白い。
以下、順不同に並べてみた。



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◆弓/キム・ギドク

『うつせみ』のキム・ギドク監督が手掛けた純愛ドラマ。海に浮かぶ船の上でふたりきりで暮らす老人と少女。老人は10年前に連れて来たこの少女が17歳の誕生日を迎えた時、彼女と結婚しようと考えていた。ところが、少女が青年と恋に落ちてしまい…。
キムギドク作品は常に何かの暗喩がある。

輪廻転生だったり、キリスト教だったり。
色々な作品にその作品ごとの暗喩がある。
この「弓」でもとあるモチーフが描かれているんだが、それを読み取れないと

おじいさんの勝手な願いとしか思えなかった。
音楽が良かったので救われる。
ラストの処女喪失?の部分も何だかなぁ~と冷めてしまった。。
やりたい放題やって満足したおじいさんの話?

投稿者:nakajhgさん

とか的外れな感想にしかならない。
読み取ると言うのは表層だけではなく構造を見て「このような表現をする意図」を考える必要がある。
ギドクの映画は優しくない。
説明をしない。謎かけの答えの無いまま観客に提示して見せる。
それを読み取ろうとして観るから面白いが、読み取らないならただの変質者の映画で終わる。
弓 [DVD]


◆ロスト・ハイウェイ/デヴィッド・リンチ

80年代最高の天才監督と謳われたデイヴィッド・リンチによるサスペンス。謎のメッセージを受け取ったサックス奏者のフレッド。その後、妻が惨殺される不気味なビデオテープが届けられ…。
「難解」とはリンチの事。
もちろん「マルホランドドライブ」でも「イレイザーヘッド」でもいい。
しかしリンチの映画は考えても無理。
完全な答えが無い。
頭がおかしく、物語の構造がねじ曲がっている。
だからこそ考える意味がある。
しかしどこまで考えてもその先には狂気と深淵しかない。
理性で判断できる際まで考えるからこそリンチの映画は面白いのだと思う。

中でも「ロスト・ハイウェイ」は解りやすい。
説明されなきゃ判らんって言うのであれば仕方ないけれど。

思考によってどこまで狂気に迫ることが出来るのか。
感覚と抽象の構造物を知性で捉えられるか。
「これ頭おかしいわ」
そう考える事は思考の放棄。
「ワイルドアットハート」みたいに真っ直ぐな愛の映画も大好きだけど。
ロスト・ハイウェイ デイヴィッド・リンチ リストア版 [Blu-ray]


◆愛のむきだし/園子温

幼い頃に母を亡くし、神父の父テツと二人暮しのユウ。
理想の女性“マリア"に巡り合うことを夢見ながら、平和な日々を送っていた。
しかしテツが奔放な女サオリと出会ってから生活が一変。
やがてサオリがテツのもとを去ると、テツはユウに「懺悔」を強要するようになる。
父との繋がりを保つために盗撮という罪作りに没頭していくユウ。
そんな彼はある日、罰ゲームで女装している最中に、ついに理想の女性ヨーコと巡り合う・・・。
家族、宗教、性欲、兄妹。
スカートめくり、さそり、生、愛、カルマ、勃起、カオス。
様々な要素が混然となって凄まじい熱量で繰り広げられる異端の物語。
延々と続く物語は役者人の異様な熱演に押されてついつい引き込まれてしまう。
しかし一歩引いて冷静に考えるとこんなに混ざり合ったベクトルが混とんとしてる作品もなかなか見当たらない。
「愛」とはなにか。
執着か。宗教が唱えるように清らかで美しいものか。
独占欲か。
ただの本能的な肉欲か。
「誰もが簡単に口にしてわかっているつもりの“愛”と言う概念」
それは果たして何なんだろうか。
そんな風に考えさせる一本。
愛のむきだし [Blu-ray]


◆エレファント/ガス・ヴァン・サント
ガス・ヴァン・サントの「エレファント」はとても静かな映画。
だから「退屈」「眠くなる」なんて言う感想が多い。
この映画の上辺しか見れないと何も読み取れないから当然「退屈」だろうし「眠くなる」だろう。多くの映画は観客に対してセリフで説明を行う。

こう思ってるんだ、こう考えてる、こうしよう、こうなるんだ。

しかしこの映画は言葉で語らない。
その代わりにカメラワークや行動、演出に意図が込められてる。
役者人はアマチュアで最低限の流れだけが与えられてほとんどがアドリブで組み立てられている。
日常、人は自分の事や他人の事をベラベラ説明したり話したりはしない。
だから観客にわかりやすくキャストは語ってくれない。
セリフ以外の部分にある意図、暗喩、メッセージ。
読み取るために観ようと思えばこの映画は退屈でも何でも無くなる。
このカメラワークはどういう意味だろうか、どうしてピンボケしてるんだろう、なぜこのシーンは繰り返し描かれるのか。

観客に対して優しくは無い、しかし読み取れればとても深くそして悲しい映画。
エレファント デラックス版 [DVD]


◆ドッグヴィル/ラース・フォン・トリアー

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』などのデンマークの異才、ラース・フォン・トリアー監督による衝撃作にして問題作。アメリカ・ロッキー山脈の村に、ひとりの女グレースがギャングに追われて逃げ込んでくる。初めは彼女をいぶかしむ村人たちだが、2週間で村人全員に気に入られることを条件に村に留まることを承認。献身的な肉体労働をこなすグレースだが、警察に手配されていることが発覚し、事態は急転する。
一切セットが無く、だだっ広い空間に建物の位置がチョークで書かれている。
小さい子供がよくやるごっこ遊びみたいに。

壁も何もない虚構の村。
何の仕切りも無いからこそ、そこで行われるむき出しの人間の醜さが露呈する。
壁が無い映画で壁があるように役者は演じ、観客はそこに壁は無いが壁があるのだと想像し、しかしそこに壁が無いからこそ描かれる風景を見ることになる。

映画と言うのはフィクションだが、「ドッグヴィル」ではキャストは物語世界に存在しているがカメラと役者人はメタレベルに存在していて、その二重のレイヤーによって「コミュニティ」「道徳」「社会」が解体され同時に再構築されている。
ドッグヴィル プレミアム・エディション [DVD]


以上、5本。
リンク先の方のように「分析力が云々」と言うよりも、観客に少し不親切で、表層的に観るよりも物語を読み取るのに少し労力がいる作品を並べてみた。
他にもドニー・ダーコだのブルーだの挙げれば幾らでもあるんだろうが、難しいだけで面白くないのはダメだし(ドニーダーコが面白くないと言ってるんでは無くて)。
えーと、リンク先みたいに要素を抜き書きしてみると


1.映像表現に込められた暗喩によって描かれる裏面

2.物語を解体、断片化し再構築する際に不条理な狂気をはらむ事で複雑になる構造

3.多すぎる情報量とその意図。愛と執着

4.セリフ以外の演出やカメラワークなどで語られるメッセージ、意図

5.あるべきものが無い事によってメタの視点が観客だけでは無く作中にまで及ぶ構造。人のおぞましさ


こんなところか。
どれもハズレでは無い(完全に読み取れたのに面白く感じないなら趣味が合わないんでしょう)おススメの作品になっとります。