「テレビ業界は、首の皮一枚しかつながってない」らしいので軽く調べた

別にテレビ側の人間でもなんでもないが、こんな的外れな記事を読んだ。
・テレビ業界は、首の皮一枚しかつながってない
http://toyokeizai.net/articles/-/19596

こんな脇の甘いデータに乏しい記事を載せる東洋経済の方が、よほど首の皮一枚。
さっくり調べればおかしいのは一目瞭然。
この記事のおかしな部分を4つほど挙げて考えてみたい。



【1.視聴者の年齢層】

お笑いも、テレビ局がかかわる必要はありません。大がかりな番組も、お金があって視聴者さえいればテレビ局じゃなくても視聴者に届けることは可能です。独自検証も行わずに会見内容を抽出するだけのニュース番組なんて、アナウンサーをひとり雇ってしまえばできてしまう。

おそらく、テレビは過去50数年間で放送したすべてのコンテンツをオンデマンド配信して小銭を稼ぐ程度の著作権商売しかできなくなるのではないでしょうか。

テレビ業界は、もはや首の皮一枚しかつながっていません。主にネット業界で活動してきたボクとしては、ネット系企業のどこかが早くその首を絞めてやればいいのに…… と思っています。そんな自分がちょっとおそろしくもありますが、ネットの成長には最大限の拍手を送りたい。

釣り針がデカすぎて口から溢れそう。
昔から不思議だが、意識の高い方はどうして上から目線で声が大きいのか。

デジタル時代の新しいテレビ視聴(テレビ60年)調査(2013年2月)

こちらの資料は今年の2月の調査に基づくんだそう。
カスタマイズ視聴(録画など)をする人の割合は高齢になるにしたがって低い。

ここ数十年だろうが間違いなく
「高齢者が増えて若者が減る」
これだけは不可避。
ではそんな高齢者にネットは優しいか。

ネット映像メディアは、引き続き個人の参入による分離・小型化と、人気コンテンツの集合化が進むでしょう。

向こう10年でネットワークも大幅に進化します。投資や作業が膨大な有線ではなく、LTEやWiMAXなどの無線ネットワークが飛躍的な進化を遂げる。インターネットでも1080iのフルハイビジョン映像を何のためらいもなく送受信できる時代が近くに来ています。そうなったとき、テレビ局はいったい何をするのでしょうか?

テレビが素晴らしい部分の一つに
「選択肢が少ない」
と言う事が挙げられる。
「選択肢が多い=良い」
という価値観は浅薄で実際的では無い。
普段使うツールであるからこそ選択肢は少ない方が使いやすい。

テレビのリモコンを想像すればいい。
山のようにボタンが付いているリモコンと限られた数しかボタンの無いリモコン。
もちろん慣れれば数の多いリモコンは色々と応用も効くし使いやすいのだろう。
しかし万人がその操作にわざわざ慣れるか?

高齢者にとっては、電源ボタン一つですら解りづらい。
だからこそ大きく違う色でボタンの位置を示してある。
高齢者向けの商品は全て「シンプル」「解りやすい」
選択肢が少なく、ボタンを押せば好んだチャンネルが観れる。
それだけで良い。

自分の周囲に50代、60代の人間がいるが、口をそろえて
「難しいものは覚えられない」
「新しいもの(事)を覚えたくない」

という。
若い頃は出来た事でも年をとってくれば出来なくなる。
ネットの放送とテレビは、現行観る層も違えば役割も違う。
「じゃあ高齢者向けに簡単なネット放送の受像端末を」
それじゃあテレビで良い。
もう普及してるし、それこそ変えなきゃいけない理由がない。
自分が使えるからって誰でも使えるなんて思うなよ。


【2.社会的弱者】

テレビやラジオは、複雑な操作を必要とせずアンテナと電源さえあれば番組が視聴できる。
回線使用料も必要ない。
トラフィック量に応じた課金も無い。
必要なランニングコストは電気代だけ。
社会的弱者...一時期話題になったナマポ家庭でもテレビは観られる。
なにせ回線使用量を必要としない。
回線を敷く必要もない。
プロバイダとの契約もいらない。
色々な理由でキーボードを叩けなかったり、ネットを使えない人間だっている。

なのに彼はそういう人らが見ているテレビを「首を絞めろ」と言っている。
いやはや、何さまなんだか 笑
まぁ、生活保護でもネットはオッケーですけどね。

http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h23/html/nc341110.html
こちらの総務省の資料を見ればわかるが、高年齢、低収入になればなるほどネットの利用率は下がっている。


【3.ライフライン

災害時はどうだろう。
ライフラインが途絶してもテレビとラジオはアンテナと電気があれば観れるし、今の状況が解る。
電波は有線が無くても良い。
遮蔽物が無ければ遠くまで届く。

誰にとっても最も安価で確実な情報源。
それがテレビやラジオ。
勿論、震災を見てもツイッターなどの役割は大きかった。
でも「テレビが首の皮一枚」と言うのなら、SNSを使えない人は切り捨てるとでも言うのだろうか。

インターネットがテレビを殺す?
「その首を絞めてやればいいのに」
というが、殺してなり代わろうとでも言うのか。
欠落した視点は、だからこそ恐ろしい。

非常時に
「万人が端末を持っているとは限らない」
「回線が生き残るとは限らない」

そういう事態への想像が無い。
テレビやラジオは娯楽を担っているだけではない。


【4.収益構造】


テレビ局は、これから景気が良くなれば、コマーシャル需要はまた増えるだろうと楽観的に見ているかもしれませんが、これまでテレビ局のみで独占していた市場に、致命的な爆破スイッチを持った者たちがすでにスタンバイしていることを大いに意識すべきです。一歩間違えれば、視聴者も広告主もごっそり奪われてしまいます。

何より一番こわいのは、数千万人に対して商売をやっているからこそ儲かるビジネスモデルを作ってしまったがために、視聴者が減少すると、ネットよりも視聴者数が依然多くても潰れてしまう日が来ること。なんやかんや言って、テレビは現状を甘く見すぎです。

ハイパーITなお花畑ではそうなってるんだろう。
テレビ局の収入の大きな部分は確かに広告収入が占める。
しかし現行、テレビ局が
「うわー視聴率下がってる―、広告収入下がってるー」
と座したまま、いずれ視聴率も戻るだろうと“現状を甘く見て”いるとでも思っているんだろうか。
一介の高校生ですら解る事を数万人が関わっている規模の業界の誰もが気づいていないとでも?

・好業績の民放各局 収益支えるイベント、グッズ、不動産事業
http://www.news-postseven.com/archives/20120321_96167.html
彼は判っていないようだが、今やTBSなどは「不動産収入を除けばテレ東以下」と言われるくらい副収入が占める割合が大きい。
・いったい本業は何なのか? 日テレが旧本社跡地を本格開発
http://news.nifty.com/cs/domestic/societydetail/jitsuwa-20130916-4629/1.htm
周囲から揶揄もされるが広告収入が下がりつつある今、不動産に手を染めるのは赤字脱却への道なんだろう。
実際、TBSが先鞭をつけてしまった。
・副業好調の民放 フジのイベント171億、TBS不動産で150億
http://getnews.jp/archives/275029
こちらは2012年の記事になるのでフジはこの時点よりも厳しいと思われるが、副業のイベントでの収入も大きい。

視聴率3冠王の日本テレビは売上高3230億円(経常利益384億円)と過去最高に迫る数字。視聴率4位のTBSでさえ同3572億円(同159億円)と、前年より売上高100億円アップを見込む。

座して滅びるのを待っている訳では無く、様々な方法で収益を回復しようと模索をしているのが解る。


【まとめ】


記事に決定的に欠けているもの。
高齢者、そして社会的弱者、生活困窮者など他者への思考や視点、想像力の欠如。
テレビ局の実態と収益構造。
データに基づかない先入観と偏見から発生した意見。
テレビの役割への思考の浅さ。
広告収入広告収入と謳いながらそれを見ている視聴者に関する見識の甘さ。

最近テレビを批判する人が多いが、テレビは別にデマや偏向だけを流している訳でもないし優れた番組もあればクソみたいな番組もある。
それを一括りにして「テレビなんていらない」と言われても必要とする人間も多く存在する。
誰かに必要ないからって、誰にとっても必要ない訳じゃない。

自分には判る、自分には使える、自分には大丈夫。
古いもの=悪いもの、新しいもの=良いもの。
そんな訳がない。
万人に情報を届けるためのインフラは巨大なものだ。
何ものにも良い部分も悪い部分もある。
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確かにテレビは今や斜陽産業となりつつある。
しかしテレビにとって代わるほどの存在にネットやUストがなっているかと言えば否としか言えない。

テレビやラジオが担っているのは別に娯楽だけでは無い。
視聴者は娯楽を見て広告を見るただの収入源。
この記事を読んで、そんな視点しか感じなかった。
非常時の情報源になりえるし、一番手軽に情報が得られるのもテレビの役割。
万人にとっての情報インフラの巨人はテレビなのは間違いないし、だからと言ってネットはテレビを倒さなければならないわけでは無い。
ネットの敵がテレビなのでは無い。
テレビには足りない部分、ネットには足りない部分、それぞれを補えばいい。
「首の皮一枚繋がっているだけだ」
などと敵視したような大きな釣り針を大声で叫んでいるのか疑問しかない。

こんな隙だらけの記事を載せる前にまず
「この部分は根拠が少ないから調べた方が良い」
とアドバイスできる人間が周囲にいないのだろうか。


「ネットが世界の中心」「ネットで何もかもが解決する」と甘く見た段階で、ボクたちはテレビと同じ末路をたどることになるでしょうはテレビと同じ末路をたどることになるでしょう

この記事によって東洋経済はプレジデントやサイゾーと同レベルになった。
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