映像での叙述トリック(バラエティからミステリーまで)

※ネタバレなにそれ美味しいの?
映像における叙述トリックを考える。



実は国生さゆりもいた

先日、復活したくりぃむなんとか「ビンカン選手権」が面白かった。
ビンカン選手権は、さまざまな場所をゲストとロケで回り、その場所に隠された意図的な違和感(ビンカンポイント)を敏感に感じとり回答するクイズコーナー。要は大掛かりな間違い探し。

徹子の部屋(風)の収録スタジオでのロケパート。
黒柳徹子に扮した清水ミチコとゲストに漫才師ザブングル


トーク収録を行っている現場でビンカンポイントを探す。
中で収録映像がリアルタイムにモニターに映っている。
ロング(引きの映像)、各人のバストショットなどが流れてる中に
ザブングル松尾の映像だけが事前収録したものとすり替わってる」
というのがビンカンポイントだった。
目の前で撮影されているリアルタイム映像の中に撮影済(ネクタイなどの衣装が微妙に違う)映像を紛れ込ませて誰も気づかないところに目を付けた視覚トリック。


くりぃむなんとかは過去に「収録場所の牧場がニセモノ(架空の場所を作った)」とか「遠くに見えるタワーがニセモノ(実は巨大な風船)」というような大掛かりな仕掛けも多いんだが、一番有名でしかも前代未聞なのはクイックジャパンでも誌上再現された「実は国生さゆりもいた」だろう。
クイック・ジャパン (Vol.73)
いつもの様にロケでビンカン選手権が行われる。
一番最後になって未回答の「実は国生さゆりもいた」が明かされてキョトンとする回答者一同。
視聴者もキョトンとする。
国生さゆりは回答者の中にいない。


回答者らは、番組冒頭から回答者として国生さゆりがいたからキョトンとする。
ただカメラはロケ中ずっと国生さゆりを映さなかった。
「カメラは映していなかった」
だが国生さゆりはロケ地に居るのが当たり前。
テレビの視聴者にとっては映っていないものは無いもの。
いないのが当たり前。
その錯誤を使ったトリック。

このトリックが巧妙なのは「国生さゆりがいる」という回答がロケメンバーにとっては正しく、しかし視聴者には違うと言う錯誤が「カメラに切り取られた画面の中」で初めて成立するという部分だろう。
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キスマイフェイク

先日、深夜番組「キスマイフェイク」を見てた。
登場するタレントの兄弟がホンモノかニセモノか見抜け、というコーナーで「ザブングル松尾の弟」という(またザブングル松尾...)問題があった。
兄弟というよりそっくりさん並みに似てる。
あまりに似すぎなので回答者はフェイク(ニセモノ)と回答。

実はザブングル松尾の弟ではなく、松尾本人で、メガネを変えただけ、というのが真相だったんだがこういう「はっきり顔を認識されてないタレントが少し雰囲気を変えて登場」さらに「ホンモノか?ニセモノか?」という問題として登場することで普通なら気付くような事でも「双子なのか?そっくりさんか?兄弟か?」と疑いが生まれる、というのも面白い。


GO!ピロミ殺人事件

クイズ☆タレント名鑑 史上最大ガチ相撲トーナメント 2011 春場所×秋場所 [DVD]
そんなキスマイフェイクの一部スタッフが過去に担当したクイズ☆タレント名鑑という番組がある。
モノマネタレントの名前一覧が出てきて実際にその物まねタレントが存在するかどうか答える
「モノマネ芸人いる?いない?クイズ」
というコーナーがあった。
回答者はうさんくさい名前の物まねタレントがいるかいないか回答。
カーテンに隠されたブースにモノマネタレントがスタンバイ。
カーテンが上がり、いれば少しパフォーマンス、いなければブースには誰もいない。

そんな中、このクイズ常連の郷ひろみのモノマネタレントGO!ピロミがカーテンが上がった途端、ブースで倒れている。モノマネタレントはブースで死んでいた。
クイズタレント名鑑の斬新なアイデア - masahirorの気まま記録簿

実はここからこの殺人を暴くミステリードラマに突入するんだが、なにせそれまで通常のバラエティ番組だったのに急にドラマになるから視聴者はキョトンとするし、驚く。
多分、打ち切りが決まって色々あったからだろうがなんでもありのバラエティであれ、突然作り物のドラマになればどこからどこまでがシナリオに沿った作中世界なのか作中作なのか、境目が曖昧になる。

淳:「GO!ピロミ殺人事件」は衝撃的でしたね。「クイズやってたら途中で死んで、そこからドラマにしたいんですよ」って藤井くんに言われて「なにそれ?」って(笑)。「超くだんないじゃん!」って(笑)。

藤井:でも、そういうのも淳さんにはちゃんと乗っかって楽しんでもらえました。そこでMCの方に「そういうのよくわからないな」って言われたら終わっちゃうので、それも本当にありがたかったです。

お笑いナタリー - 淳「GO!ピロミ殺人事件」に衝撃「超くだんないじゃん!」

バラエティは本来「面白ければ何でもアリ」だろうが、途中から急にサスペンスに変わってしまうクイズ番組は後にも先にもこれくらいだろう。


カイザーソゼ

ユージュアル・サスペクツ [Blu-ray]
映像による叙述トリックで有名なのは「ユージュアルサスペクツ」
こちらは取り調べ室の中でケビンスペイシー扮する が捜査官の取り調べを受け事件の詳細が明かされるわけだが、最後になって実はそれが全て の作り出したニセの話であるという真相が明かされる。
作中の捜査官からすればよくできたホラ話に騙されただけだが、観客からすれば少し違う。
観客にとっては「捜査官の取り調べ」という作中世界と「ケビンスペイシーのホラ話」作中作の間に差はない。
同じ映画の同じ映像として認識する、作外の観客にとってはホラ話以上のトリックになる。


愚者のエンドロール (角川文庫)
過去に米澤穂信の「愚者のエンドロール」や綾辻行人の「意外すぎる犯人」(真冬の夜のミステリー/1994年読売テレビでドラマ化)などで使われた撮影者が犯人など物語は物語世界で成立し、その決められた枠の外に要素があることでトリックに昇華する。


他にも「サスペリアパート2」などもあるがあれは叙述トリックと言うよりも視覚の錯誤を使ったトリックと言えるだろう。
サスペリアPART2 日本公開35周年記念究極版 Blu-ray