習作:(仮)魔王を倒した憂鬱な勇者の憂鬱

かくして勇者は魔王を倒したのでありました。
めでたしめでたし。


...なわけがない。

それならよかったが、残念ながら物事は単純じゃない。
単純に考えられるほどオレは若くなかった。

魔王の死体は勇者の剣に刺し貫かれ、広間の中央に転がってる。
オレは魔王の椅子に座ってため息をついてる真っ最中。

そもそもオレは農民だった。
嫁さんとまだ赤ん坊の息子が一人。
小麦畑を耕してる時に村が怪物に襲われた。
農具で戦ったが勝てるわけも無く、嫁さんが死んで息子だけが残された。
息子をかばったんだろう。
嫁さんの死体の背中に大きな傷があった。

難民として逃げてる最中「勇者の剣」とかいう選ばれたものしか抜けないだのなんだの言われてる剣を見つけてたまたま引っこ抜いちまったもんだから、アイツが勇者か?年食い過ぎじゃねーか?ちょっとハゲてるしニセモンじゃねーか?勇者ってもっと男前で格好いいもんだろ、とかうるさい村人を放っといて城に呼ばれて王様に伝説の勇者認定されて魔王討伐を命じられた。
兵隊も付けてくれなかったところを見ると絵空事みたいな「勇者」なんてもんに関わってる余裕はないし、とはいえ伝説だのなんだの信じてる街人は多いから一応認定だけはするぞっていう事なんだろうが、オレは親戚に赤ん坊を預けて一人旅をしながら「勇者さま」をやって、特に苦労もなく魔王の城に辿り着いた。
何匹かの魔物と戦ったが、クワを振り下ろす要領で剣を振り下ろしたら魔物がパッカリ割れた。
技術も必要ない切れ味。

怪物らは戦争に忙しいらしく、魔王の城はかなり手薄。
これまた苦もなく侵入して、いかにも魔王の部屋っていう感じの部屋を見つけて、隙を見てその部屋にいた魔王っぽい怪物の後ろからぶっ刺したら、魔王らしき怪物はあっさり死んだ。


...いや、ホントに魔王なんだろうな?

っぽいから刺したけど。
まぁ、このデカイ城のバカでかい部屋を一人で使っててしかも豪華な椅子に座ってんだから、、まぁ魔王なんだろう。
違っても何かしらの魔物にかわりはないし。
問題無い問題無い。


はぁ。
それにしてもどうしたもんかな。
(多分)魔王の死体を見てると自然にため息が出る。
魔王(仮)を倒したのはいいがこれで世界に平和が戻...らないだろ。

今は大きな三つの国が魔王軍と戦うために力を結集して戦ってる。
それぞれに影で陰謀術作は巡らしてるんだろうが、表面上は手を組んでる。
ところがここで「魔王が死んだ」となればまず空白になった領土をそれぞれが侵略し合うだろう。
今回の戦で疲弊してるから、とりあえずここ数年は大丈夫かも知れんけど。
魔王軍侵略前の地図通りに戻るわけが無い。

軍隊を派遣して居座っちまえばそこは自分らのもんになる。
オレが魔王を倒しちまったばっかりに争いが始まるんじゃ、何の為に魔王を倒したんだか意味が無くなる。
万が一「我が国は伝説の勇者が率いるのだ!」とかって祭り上げられて戦争に巻き込まれてもたまったもんじゃないし、先頭に立たされるのもごめんだ。

息子のためにもいい世の中にしておきたい。
オレが国に帰ってこのあとも勇者扱いされるかどうかは分からないが、少なくとも帰った直後はオレの言う事にも重みがあるだろう。
だから今のうちに息子が安心して住める世界にしなきゃならない。




...とまぁ、ここまで書いてライブドアにブログ開設してしょーもないこれ載っける手間を考えてやめた。
ラノベって今さら萌えキャラだとか美少女に振り回されるだとか書けねー。


ライトなラノベコンテスト - ライブドアブログ
物語工学論 キャラクターのつくり方 (角川ソフィア文庫)