京極夏彦と聞いて、当時の想い出と並べた

ぜひ読んでもらいたい 京極夏彦の「百鬼夜行シリーズ」のまとめ - ネットの海の渚にて
京極夏彦を初めて読んだのって丁度、新本格にハマってる頃で、個人的には海外ミステリ好きだったのが新本格第一世代(綾辻行人、法月綸太etc)以降国内ミステリにハマってた頃。

当時、講談社ノベルスの発売日(8日)には書店に確認に行って、ごっそり買ってたが「姑獲鳥の夏」を最初見た時の
「ぶ、ぶ、分厚い...」
ってインパクトはすごかったのにそれがまさか際限なく分厚くなっていくとは(姑獲鳥の夏はシリーズ中薄い方で「絡新婦の理」の830pで極限を極める)思いもしなかった。
だからメフィスト賞でデビューした清涼院の「コズミック」を見ても「まぁ京極と比べればな」と言った感じだった(コズミックは壁投本だが)。

確か、流行り始めた頃に友だちに「京極面白い?」って聞かれたので「絶対面白いから読んでみ?」とオススメして、翌週会ったら「ハマりすぎて全巻(当時の)一気に買った」とか言ってた記憶がある。
あの分厚さを一気買いさせる魅力が確かにあるし、映像になってもそれは原作とは違うし、やはり読まないとあの京極の“世界”は解らない。


姑獲鳥の夏

文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)
書影は文庫版。
ちなみにノベルス版と文庫版ではそれぞれ段組みが変わるので文庫化にあたって全面的に京極氏は修正しているのだそう。
ページをめくった時のインパクトが変わってしまうのと、あとページを句読点で終わらせたかったからだそうだが。

20ヶ月妊娠したままの妊婦、失踪した夫、姿を消す新生児。
初めて読んだ時は「この小説のジャンルは何なんだろう?」と思って読んだ記憶がある。
なにせ京極堂は「陰陽師」で、自分の中の陰陽師と言えば安倍晴明とか孔雀王とか。それはミステリじゃないだろ。

最後まで読んで、いやはやすごかった。
仕掛けられたトリック自体はシンプルだけれども、作中に溢れる大量の衒学的知識は過去作で言えば中井英夫「虚無への供物」、竹本健治「匣の中の失楽」に連綿と連なる系譜の一端じゃないですか。その大量の衒学知識と舞台装置によってシンプルな仕掛けを見えなくする、作品自体の雰囲気そのものがレッドへリングになってる。
フィクションだからこそありえないことがあり得るし、その可能性を読者に考えさせることこそが意図した仕掛け。

映画版は「ウルトラセブン」の実相寺昭雄監督。
実相寺昭雄らしい演出だったのに、印象がものすごく薄い 笑
観たはずだが...。



魍魎の匣

文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)
少女のバラバラ死体、巨大な箱のような病院。
とても素晴らしい。
完成度が高いし物語として綺麗にオチてる。
江戸川乱歩とか夢野久作的世界を思わせるエロティックで耽美でフェティッシュな世界と残酷な殺人。
衒学知識は変わらず、この作品ではミステリ王道の「バラバラ死体」をやってみせる。
こちらも映画化されてる。

箱に入った美少女、と聞くと個人的には「ボクシングヘレナ」のイメージで読みながら勝手に当てはめてた。

Boxing Helena - YouTube
まぁ、女性が好き過ぎて両手両足を切っちゃう映画なんすけども(デヴィッド・リンチの娘が監督やってる)。


鉄鼠の檻

文庫版 鉄鼠の檻 (講談社文庫)
狂骨の夢」を飛ばして、四作目「鉄鼠の檻」。
自分的にはこの「京極堂」シリーズで一、二を争うほど好み。

禅寺坊主連続殺人事件。
しかも今回はミステリ王道中の王道「見立て殺人」。
繰り広げられる大伽藍が見事に合致し最後に京極堂が憑き物を落とす、完成度はシリーズ中一、二の素晴らしさ。あの分厚さに苦しみながら(寝転んで読むと腕が付かれる)一気読みした記憶。

◆製本技術の限界に挑戦し続けてきた、京極の講談社文庫シリーズだが・・・。9月発売予定の『鉄鼠の檻』の厚さは、ついにその限界を越えてしまったらしい。で、どうするの? というと・・・なんと"講談社学術文庫仕様"で出版されるとか。(それはそれでスゴイかも)

週刊 大極宮 第22号


で、京極堂シリーズはここまで。
読んでるんだけど「これは素晴らしいから是非!」って事は無いかなー。


ゲゲゲの鬼太郎 第101話 言霊使いの罠

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確か冬に放送された。
京極氏が水木しげる大好きなのは有名だが、一話だけ京極氏がシナリオを書いた「言霊使いの罠」

ぬらりひょんが、古からの契約によって言霊使いに鬼太郎たちを倒すように依頼をする。
言霊使いは「言霊」を操り、妖怪を構成しているそもそもの存在へと戻してしまう。
砂かけババアはただの砂山に戻り、一反もめんは布きれに戻されてしまう。
子泣き爺はカボチャに、塗り壁はただの壁に。

なんやかんやあって(ggrks)ぬらりひょんのしくじりで鬼太郎はかろうじて言霊使いから逃れる。
契約が切れた言霊使いは去っていく。
その後で鬼太郎が
「ねぇ父さん、ぼくたちは本当にここにいる(存在して)んでしょうか?」
的なことを言い始める。
言霊使いによって元々の構成要素に戻されてしまうのであれば一体妖怪とは何なのか、と。
我々は本当にここにいるのか?実存とは何か?
山口雅也が「不在のお茶会」でやって見せたテーマをアニメでやるとは...。
作中のキャラに“自己の存在”に疑問を持たせるメタなシナリオはさすが京極氏といったところ。

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百器徒然袋 風

百器徒然袋 風 (講談社ノベルス)
推理も無しで真相が“視えて”しまう探偵 榎木津礼二郎を主人公にした短編集。
京極堂シリーズでは陰陽師が事件自体を落としてしまうので探偵は賑やかしでしかない。
その探偵 榎木津だけにスポットを当てた短編集。
推理をしない探偵なんてもはや清涼院シリーズのJDCみたいな存在。
そんな榎木津を主人公にするなら短編にするしかない。
これも名編が多くて面白い。


京極氏の作品の魅力は作品によって違うし人によってハマるものも違う。
「ルー=ガルー」が好きな人もいれば「どすこい」が好きな人もいるかも知れない。
どれを読んでも高い文章力と豊富な知識と、埋め込まれた人間の機微が魅力的で分厚さにも拘らずついつい読みふけってしまう。
新作も出たことだし、年末は読書三昧するつもり。
まずは法月の「ノックスマシン」からだけれど...。
書楼弔堂 破暁