人生のあらすじ

※手慰みの創作

その男は、突然目の前に現れた。
比喩ではなく、何もないところから。


男は、私の息子なのだと言った。
時間を越える技術が、未来では確立されている。
左手に付けた腕時計に見える機械を使い未来から逃げてここへ来た。

奇術でないのなら、男が言うそれらは事実なのだろう。


私は、男に聞いた。
「未来から来たと言うのなら私はこれからどのような人生を歩むのか?」

男は、ニヤリと
「そういえば未来のオヤジ...あんたに言われてたよ。もしオレに会うことがあって、どんな人生なのか聞かれたら、その時は素直に知ってることを全部答えろ、って。言われたときは遂に頭がおかしくなったかと思ったが、こういうことだったのか」
そう言った。
そして男は私のこれからの人生を説明し始めた。

私はこれから結婚をして、妻との間に子供...この男ができる。
その後、妻はどこかの男と出て行き、私は独りで子供を育てるのだと言う。
アルコールに溺れ、暴力を振るい、周囲から嫌われ60歳で交通事故で死ぬ。
これが私のこれからの人生の全てだと言う。

「...言われた通りに教えたからな。追われてるんで長居は出来ねぇんだ...女を殺しちまってね」
男はそう言って腕時計にも見える機械を何やら触り、出て来たときと同じようにふっ、と消えた。

あの男...息子の言うことの真偽は判らないが、もし正しいなら私はその通りに生きていくだろう。
忠実に結婚をし、子供を作り、アルコールに溺れ暴力を振るう。
そうすれば60歳で死ぬ。


男の言ったあらすじ通りに生きれば、女の死体が見つかることはない。
これまで殺した女どもも、これから殺す女どもも...。

あの男はやはり私の息子なのだろう。
女を殺すところなんて私によく似ている。