町田洋「夜とコンクリート」

夜とコンクリート
金曜日、書店にフラリと立ち寄って「帰ってきたヒトラー」を買おうか、電子書籍化を待とうかと考えていたら町田洋の「夜とコンクリート」が出てることに気づいて慌てて買いこんだ(「帰ってきたヒトラー」は保留)。

電脳MAVO 町田洋
↑リンクから無料で「夏休みの町」「青いサイダー」「夜とコンクリート」の3話(「夜とコンクリート」にも収録)が読めるので時間があればどうぞ。



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シンプルな描線と雰囲気のある描写。

まったりと静かに描かれる日常に少し不思議な要素が加わることで物語を展開させる。

別の世界から友人を追ってやってきたパイロット、子どもの夢に出てくる謎の「島さん」、ビルの声が聞こえる青年。

端整に描かれた日常にそれらの普通でないことが加わり、何か起きたり、起きなかったりもする。

世界の運命がかかっているような大事件ではないが、しかし誰かにとってはとても重要だったりする出来事。

この街は悪疫のときにあって
僕らの短い永遠を知っていた
僕らの短い永遠
僕らの愛
僕らの愛は知っていた
街場レヴェルののっぺりした壁を
僕らの愛は知っていた
沈黙の周波数を
僕らの愛は知っていた
平坦な戦場を
僕らは現場担当者になった
格子を解読しようとした
相転移して新たな
配置になるために
深い亀裂をパトロールするために
流れをマップするために
落ち葉を見るがいい
涸れた噴水を
めぐること
平坦な戦場で
僕らが生き延びることを

THE BELOVED(VOICES FOR THREE HEADS)/ウィリアム・ギブスン(訳:黒丸尚)

かつて岡崎京子は「リバースエッジ」の中でギブスンのこの詩を引用した。

平和で平坦に見える「日常」という薄い膜一枚の裏には死や絶望がいつでも待っている。


高度経済成長期を経て社会問題が噴出した90年代を表現した「平坦な戦場」

今2014年、我々の拠って立つ「日常」は容易に崩れ去ると3.11で知った。

ネットと社会が二重写しで存在し、ネットでの事件(炎上)は社会の「日常」に影響を及ぼし、自殺する者すら出てきた。

物質は信じられず拠る瀬がなく、しかしネットの概念世界はとても人間的で人間らしくドロドロとエゴが渦巻く。


そんな今に「町田洋」は、日常を描いて見せる。

一見安定していて、しかし何かがズレている。

なにか世界にほころびのある日常。

今っぽい新しい感性で書かれているのに、物語や作中世界は少し古めかしい雰囲気を感じさせる。

町田洋が、こんな今の時代に描く少し不思議な「日常」のマンガ。

リアルタイムで読むからこそ面白い。

※クイックジャパン的に書こうとして風呂敷を広げ過ぎた
※SF短編集「惑星9の休日」もオススメ
惑星9の休日