クリストファー・スタイナー「アルゴリズムが世界を支配する」


その後はどんなことをしているんですか?
彼は「金融業界です」と答えました。
「なるほど」最近ニュースでよく耳にしていたからです。
「どんな具合になっているんですか?」と聞くと
「ウォールストリートには物理学者が二千人います。私はその1人です」ということでした。

ケヴィン・スラヴィン 「アルゴリズムが形作る世界」 - YouTube


クリストファー・スタイナー「アルゴリズムが世界を支配する」を読んだ。
アルゴリズムが世界を支配する (角川EPUB選書)
上に張り付けたケヴィン・スラヴィンのTEDでも語られているが、ウォールストリートに持ち込まれた人間が監視しないアルゴリズム取引は全体の70%を占め、マイクロ秒単位で各プログラムが競い合う事態になっている。
どこかのアルゴリズムは他の誰よりも上手く稼ごうと走りばれないように偽装を行い、しかしその偽装を見破るプログラムが作られ、その誰かは他の誰よりも上手く稼ごうとアルゴリズムを構築するいたちごっこ。

このようなHFTを生業としているトレーダーたちは、高速化には糸目をつけません。HFTの草分け、TradeworxとMcKayはニューヨークとシカゴ(先物取引の中心地)を結ぶ通信速度を競っています。どちらも光ファイバーでは(直線距離でないので)遅い、と考え、シカゴ-ニューヨーク間をマイクロ波で通信します。McKayは9ミリ秒、Tradeworxは8.5ミリ秒でデータが往復できると言っています。Tradeworxによれば、そのインフラのために、年間25万ドルで契約しているそうです。マイクロ波通信は天候の影響などを受けやすく「信頼性が低い」と見る向きもありますが、McKayの共同創始者ボブ・ミード(元ハーバード大学の物理学者)によれば「信頼性が低くても99%の場合勝てる。(通信が遅ければ)100%負ける」と豪語しています。2014年までにロンドンー東京間を北極海を通って結ぶ光ファイバー回線ができる予定で、今まで230ミリ秒かかっていたのが最速155ミリ秒になるといわれています。

Resident Engineers: アルゴリズムの暴走

9ミリ秒vs8.5ミリ秒のために年間25万ドル。
人間には、不可能なミリ秒、マイクロ秒の取引。
ウォール街にいるのはトレーダーやMITを持っている人間ではなく、プログラマーや数学者も多い。
そういう彼らがアルゴリズムを作り効率化し、利益を得ようと画策する。


アルゴリズムが世界を支配する」には映画のシナリオやプロットの段階で「この作品がヒットする確率」をはじき出すアルゴリズムや、過去のクラシックの名曲をヒントに新曲を作り上げるアルゴリズムを登場する。
チェスのチャンピオンと戦うアルゴリズムは有名だが、今やポーカー(機械なら理不尽にも思える人間的な駆け引きに伴うブラフすら)を行えるアルゴリズムが開発されている。

人間的であいまいな漠然としたもの。
そういったものは今までデータ化や定量化が難しいとされてきたのに今の技術はそういった杓子定規には計れないものすらアルゴリズムに取り込みデータ、プログラム化しようとしている。
法月綸太郎「ノックスマシン」や神林長平の諸作に「自動で物語を作り上げ文章を書くプログラム」なんてものが登場するが、人間の作家を超えるようなアルゴリズムが登場し、それらがベストセラーになる日が来るのも近いのかもしれない。
世間では「相性を判断しクラス分けするアルゴリズム」や「各種データー及び成績から将来何を目指すべきか判断するアルゴリズム」「企業側の欲しがる人材とのマッチングアルゴリズム」を経て就職。

ブロガーは「自動で物語を読み解きブログを更新するアルゴリズム」「自動でアニメをチェックして番組の毎週予約録画をセットしブログに感想記事を書くアルゴリズム」を作ってブログを更新し、はてな民は「自動でブログを読み、優劣を判別しブクマするアルゴリズム」で有益な情報だけを取捨選択し「燃えそうなブログを見つけ自動でブクマして拡散するアルゴリズム」をつかいネットを楽しむ近未来。
効率的な社会ですねー(棒)。


アルゴリズムが世界を支配する」
今だからこそ読んでおくほうがいい。
とても示唆的で面白い一冊でした。

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