ネタバレの基準は誰しも違うから難しい


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私はなぜブログで堂々とネタバレをしてしまうのか - (チェコ好き)の日記
(チェコ好き)の日記さんをよく見かけるのは、はてなのトップによく出るからだろう。
それだけ人気があるんでしょうが。

「ネタバレ」に関しては以前から思うことがある。

ミステリーなど物語の“核心”が結末にある場合は、さすがの私も、あっさりと結末を書いてしまったりはしません。だけど、上記の2作品は、その物語の“核心”が、結末ではなく「結末にいたるまでの過程」にあると私は思っていて、だからこそラストを堂々と書いてしまったというわけです。

私のなかの“ネタバレ”とは、「物語の核心をついてしまうこと」……というのは、だいたいこんな感じの意味です。

ウチの場合、ミステリ小説を読むことが多いのでネタバレには敏感。
(チェコ好き)の日記さんは「物語の核心」を言わなければ大丈夫だろう、というところを閾値にしているんだけれども、これはブログの書き手としては少し微妙だと思う。

なぜかといえば誰しも「前提知識も感性も基準も違う」からに他ならない。


匣の中の失楽 (講談社ノベルス)
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例えば竹本健治の「匣の中の失楽」と言う作品があるが、あの物語では真犯人などもそうだが、全体の仕組みそのものもネタの一つになっている。
もちろん知っても作品を損ねることはないだろう。
しかしあれを知って読むのと知らずに読むのでは大きく違う。
犯人やトリックは明かさずに「匣の中の失楽と言う作品では各章の…」などと書いてしまえば、誰かにはネタバレでないにしろ誰かの「知らずに読む機会」を奪ってしまったかもしれない。知らずに読む方が面白かったかもしれない。
もちろん「ネタバレしたくなきゃブログ読むなよ」と思わなくはないが、しかし冒頭に「ネタバレあり」と書くほうが弱小素人ブロガーとは言え、読み手に対して誠実な姿勢なのかも知れない。

「く、狂い壁狂い窓は、ゲーム三部作をよ、読み終わってから読めよ(白黒反転)」
なんて詰まりながらですら言いたくない(ネタバレ解説→*1)。


自身は一切知らずに読みたい。
「驚天動地のトリックが?!」なんてキャッチフレーズすら必要ない。
何も知らない状態で読み観て、その後で詳細を知って「あぁなるほど」と納得したい。
だからネタバレしそうな他人の解説記事はほぼ読まない。それを楽しいと思う。
だから作品解説の書き手が「これは核心じゃない」と思って書いていることも、それを読むことで自分の楽しみが減るかも知れないのだし、だから読みたくない。知ってから見る・読むのは二度目でいい。


知り合いにネタバレを全く気にしない人物もいる。
その人物の場合、ネタバレだろうがなんだろうが気にせず観て、それなりに驚くし面白いのだそうだ。
以前に確かトリックやオチを先に読んでから読み始める人ってのがいて、そういうひとから言わせると先にどんなオチが待っているのかを知った上でその途中を楽しむのだそうだ。
よく判らないが。


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※「スクリーム」「ユージュアルサスペクツ」のネタバレがあるので嫌な人はこの部分丸々読み飛ばして欲しい
ホラー映画「スクリーム」ってのがある。
あの映画は誰が犯人かわからないまま進行するわけだが、「靴に注目して」と書いてしまうと実は途中で犯人が判る。
「ユージュアルサスペクツ」では吹き替え版を観ない方がいい。
カイザー・ソゼの声優をあの人と同じ人がやってる(当たり前だが)。
声の聞きわけが出来る人なら当然のようにわかる(以前、友人と一緒に見たら友人は気付かなかったが)。
「セブンはユージュアルサスペクツの後に観ような」なんてことだけでもネタバレになる可能性は当然あるし(両方1995年映画でレンタルになる時期も近かった)観るならやはりセブンを観てからよりはユージュアルが先じゃないだろうか。
もちろん「ネタ」には関わりないかも知れないが、しかしそれらが並べば特定の役者を疑ってみてしまう(それにあの当時のあの役者の知名度からすれば…)。
借りる前に「ユージュアルサスペクツは面白いぞー…あ、でも吹き替えはやめといた方が…そう、え?あの声がさ」と言ってしまえば「声で犯人が判る=他の登場人物と同じ声」と言う推理が成立する。
そこまでは考えすぎかもしれないが、観ていない人に「何も知らずに見て驚いた一番最初の衝撃」を味わわせてあげたい、と思うし、だったら万全を尽くしたい。
もしかしたらその人はホームズ並みの推理のキレを持っているかもしれない。


「あっと驚くどんでん返しがある名作映画10選」
「誰しも騙される叙述ミステリの傑作5作品」

この手のまとめを作る方も読む方もバカじゃないかと思うんだが、どんでん返しがあると解った上で見るのと知らずに見るのとでは当然後者の方が楽しい(と思う)。
叙述ミステリだと解って読むのと知らずに読むなら後者の方が楽しい。
だがこのまとめリストに存在している時点でそれらの作品は「どんでん返しがある」「地の文にトリックがある」と判ってしまう。
ネタバレを広義に使えばリストに入っている時点ですでにネタバレしている。

しかしどこまでを「ネタバレ」と感じるかは先述したように人によって基準が違う。
だからこそブログでネタバレと思うことを書く場合は「ネタバレあり」と書いておく方が親切だろうし、誰かがネタバレと思うかもしれないがオレはネタバレじゃないと思うから書く、というのは自由だが少し誠意にかける。というか読み手の心理を考えていない。


面白く語れるなら別かもしれない。
浜村淳のように映画「ポセイドンアドベンチャー」を最後の船底に穴を開けて助け出される直前まで語ってしまっても、語りが面白いからこそ許されるし、知りたくないならそもそも浜村淳の話は聞かない。


個人的にはいつも思うのだが、映画や物語を読んでそのあらすじをただひたすら書いたり「この展開が面白かった」みたいな感想は三流だと思ってる。
自身がどう解釈したか、その映画に何があるのか、その物語は一体何なんだろうか。
面白かった、感動したという感覚を読み手にどう伝えるか、
ネタバレではなく、それ以上にその映画の魅力をどうやって伝えることができるか。
浜村淳の語り口が素晴らしいのは、映画を観たような感覚を与えてしてしまうからに他ならない。
浜村淳が語ってるから観に行く→語りの方が面白かった、なんてしょっちゅう。


PV目当てで書いてるなら別として、何かしらの「作品の魅力を誰かに伝えたい」そういう欲求があってブログを書いているなら、ネタバレ云々を越えて果たしてこの作品を見れば何が得られるのか、ということが伝わるように書いてなんぼだと思う。
本編には軽くしか触れず、それでいてその作品の魅力を存分に書ければそれは素晴らしいだろう。
ウチはできてないが。


誰かにネタバレしてもいいし、オレは書きたいように書いてるし、誰かがネタバレと感じたところで知ったこっちゃない。
まぁ、それも姿勢の一つだろうが、そういうブログならあえて読もうとは思わない。だったら鍵付きの日記でも書いてりゃ誰の迷惑にもならない。
ブログを書くなら、確実に誰かしらに読まれることを意識するのは当たり前だと思うが。
単にPVがあればいいのかもしれない。


「誰かに面白かった作品を紹介する」
それってどういう意味があるのか。
ただの自己満足か。誰かの役に立ちたいのか。
感覚を共有したいのか。
いずれにしろその作品の魅力を引き出し、伝える、それができないならネタバレ云々以前の問題なんだろうなぁ、と思いつつ日々精進しているこのブログなんです。
オタクの迷い道 (文春文庫)

おまけ

※ネタバレしまくってるが、今このドラマを探す方が難しい
余談だが以前に綾辻行人「霧越邸殺人事件」がドラマ化されたことがある。
主演は、運転手 神田正輝に歌手のマネージャー高樹沙耶と言うベタベタな火サス。
原作は「雪山で迷った主人公らが謎の洋館に辿り着き連続殺人に…」というストーリーだが、ドラマ版は驚いた事に「アイドル歌手の巡業中バスが止まってしまいオフシーズン中の旅館に退避。そこで事件に…」というものすごい変更が加えられていた。
ドラマ版、見立て殺人が起こるのだが、旅館の放送で童謡が流れ、殺され、その童謡の歌詞通りに死体が見立てられている。
第一の殺人、死体の周りに無数の千羽鶴が置いてある。
その時点で
「放送用の童謡入りテープを準備できた」「千羽鶴も準備済」
となれば、車が故障して旅館に辿り着いたのは偶然ではなく必然で(到着してすぐに旅館の放送室に仕掛けが出来て、千羽鶴など殺人の道具を常に持ち歩いていたのでない限り)だとすれば
「運転手の神田正輝犯人確定?!」
と見てたら案の定、神田正輝が片足を怪我して犯人のフラグ立ちまくりなんのひねりもなくやはり神田正輝犯人で終了。
いやいや、2時間見たのに前半で判ったがな...。
そして第二の殺人。スタッフの男女2人が殺されてました。そしてここが一番の笑いどころ。
 「雨」の二番、折鶴の見立てです。なので部屋の真ん中に位置する死体を囲むように、何十何百という折鶴が寸分の乱れもなく床一面を埋め尽くして。かなりデコラティブな光景です。
 しかしみなさん、ここで想像してみましょう。一心に小さな折鶴を折り続ける犯人の姿を。そしてちまちまと死体の周りに折鶴を並べる犯人の姿を……いったい何時間かかったんやっ!
 そんな悠長なことしてる余裕があったら、もうちょっと他にすることがあるだろうが。これにトリックはありませんでした。単なる視覚的見立て以外の何ものでもありません。そこまでする執念ですか? だいたい誰かにその現場見つかったらどう言い訳するんだよ~。

湖畔の館殺人事件

原作は面白いですよ、全然話違うし。

霧越邸殺人事件 (新潮文庫)
綾辻 行人
新潮社
売り上げランキング: 72,470

*1:「狂い壁狂い窓」はゲーム三部作と同列の探偵役が登場する物語なのだが、それとは解らないような書き方がされているので知らずに読むと「あ!これは!」となるようになってる