「世界が土曜の夜の夢なら ヤンキーと精神分析」ファッション的補填


Guitar Wolf 『野獣バイブレーター "Beast Vibrator" (Music Video ...
斎藤環「世界が土曜の夜の夢なら ヤンキーと精神分析」を読み終わった。
現代の文化に浸透している“ヤンキー”的なものをテーマにワンピースをヤンキーが出て来ないヤンキーマンガであると指摘したり、キムタクのヤンキー的要素に言及したりなかなか面白いのだけど中〜後半からめんどくさい感じになって来る。精神分析、ですから。
世界が土曜の夜の夢なら ヤンキーと精神分析 (角川書店単行本)
読んでいて面白い部分もあれば足りない部分も当然ある。
個人的に感じた物足りない部分を書いておきたいメモ。


現代の「ヤンキー」ファッション

本ではヤンキー的ファッション、としてポンパドール(リーゼント)などのルーツに触れているが、いわゆるDQNカラーギャングと言ったストリート系の「ジャージに金ぴか」というファッションへの推移と断裂に触れていないが、この辺りはやはりヒップホップ文化の上陸が大きな影響を与えていて、その辺りが「田舎のヤンキーと都会のDQN」という差異になってるんだろう。
ヤンキー的ファッション要素を現在のファッション界に見ると最近のKENZOに強い。
近年のKENZOに見られる虎や目玉と言った「下品」「ダサイ」「野暮ったい」モティーフを表に出してみせることで逆にファッションに昇華させた。
これを髪を紫に染めたおばちゃんが着れば大阪の日常だが、これをモデルや若い娘が着ることで「オシャレ」になる。
こういうモティーフにヤンキー的な片鱗が見える。

このルーツは、山本寛斎か。
山本寛斎が和的なものと洋的なものの折衷を極彩色で描き、それをデヴィッド・ボウイが認め、衣装とした。
当時のボウイは衣装などに華美さを求めるグラムロック
ファッションにおける和と洋、和的な刺繍や美的感覚は狩野派や浮世絵などで海外にも知られていたが、海外のサイケデリックでグラムなデザインにそれらを重ね合わせた山本寛斎のイメージはやはり強い。

David Bowie-Starman-1972. - YouTube


ヤンキーとDQNの断裂

ヒップホップカルチャーと共にジャージと金のアクセサリーと言うストリートファッションが持ち込まれ、都会からはヤンキー的な装いが衰退し、田舎には残った。YAZAWAやいわゆるヤンキー的なものはラップとストリートに駆逐される。
だから田舎とヒップホップは合わない。
映画「サイタマノラッパー」が成立するのは田舎でラップをやっている若者だからだろう。
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駒木根隆介,みひろ,水澤紳吾,奥野瑛太,杉山彦々,入江悠

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田舎にヤンキーやYAZAWAは合うが、田舎にヒップホップやラップは合わない。


DQNが好むファッションには柄が多い。
以前から疑問だったんだけれど、海外からストリートファッション的なオーバーサイズのジャージ、トレーナーなどが持ち込まれ、しかしそのヒップホップ的なジャージにさらに柄を足して現在のDQNのジャージになる。
DQNのファッションに柄が多いのは、かつてのヤンキー文化における特攻服の刺繍などにルーツがあるのかもしれない。


そして本で触れられていなかったがワンピースにしろ「ヤンキーの出て来ないヤンキーマンガ」における大きな要素はタイマンにあると思う。
一対一で正々堂々と戦う。
勝つためならなんでもやる、というのは信義にかける。
そういう意味ではプロレスでも同じなのだが、栓抜きなどの凶器を持ち出した時点でその人物は悪に堕ちる。
凶器の強さではない。
栓抜きを使うくらいなら相手をコーナーポストにぶつける方が余程効きそうなものだけれど、ベビーフェイスのレスラーがコーナーポストに相手をぶつければ観客は絶賛し、悪役が栓抜きを出せばブーイングが起きる。
変化がない、正々堂々と言う技の繰り返しの中でヒールの繰り出す「反則」というのは試合のリズムにおけるアレンジでもあり、観客に対しての善悪の明確な定義でもある。


まとめ ヤンキーとモッズ

本は面白いのだけれど、こう言うマンガやファッション文化的な側面や、歌に関してもギャルなんかが好きな「逢いたくて恋しくて逢えなくて〜」のようなポップス文化などの掘り下げが浅くルーツ探索の方に深い。
ほかに自身の理論を補強したいのか「〇〇が××だからこの理論は正しい」という主張が少々気になった。
本宮ひろ志チェックとか途中で丸投げになってたり、私的な因縁にページが費やされたり。
「ヤンキー的」というのは属性というよりもパラメーターのような感じなんだろうが。


そういえばヤンキーの服を仕立てるのは「洋服の並木が有名」と書いてあって、日本にモッズが入って来た時に細身のスーツを仕立てる為によく利用されたのが同じ「洋服の並木」で、一見関係無さそうなヤンキー文化とイギリス発のモッズカルチャーとが洋服の並木で出会っているとは、その辺りも興味深いし、そこからガレージロックに繋がってTMGEがライヴ前に流す「ゴッドファーザー愛のテーマ」やギターウルフの「仁義無き戦いのテーマ」にその辺りのヤンキー文化の片鱗が見れてとても面白いと感じTMGEのダニーゴーでこの記事を締める。

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