なりあがり

※いまいち
昼のラーメン屋は戦争だが、それを過ぎればアイドリングに入る。
ランチの繁忙を手伝うパートさんが帰り、夕方の学生バイトに切り替わる合い間。
ラジオが流れる店内で二人。客はいない。

店長と二人仕込みをする。
ずんどうに水と背油を入れ煮込み、麺玉を準備し、チャーシューを切る。
ネギを切っている店長に
「ムカつく客って多いじゃないですかー、この辺パチンコ屋も多いし」
とざっくりしたことをいうと店長は笑いながら
「あー、確かにな。パチンコで儲かって気前のいいお客さんはいいけど、負けてラーメン1杯で粘る人は困るなぁ」
と答えた。


しかし店長はどんなに失礼な客にも怒っているところを見たことがない。
裏で悪口すら言わない。

「ある家に少年がいて、両親の愛情をいっぱい受けて育った。
ところがある時、父親が詐欺師に騙される。詐欺師は家族の全財産を巻き上げどこかへ消える。父親は借金の返済に追われ過労で死に、母親もその後を追った。少年は親戚の家で引き取られることになったが、そこでは馴染めずに家を飛び出る。

しかし少年は、独りで暮らすにはまだ幼すぎた。
大人にいいように使われ、ボロボロになりながら裏の社会へとどんどん踏み込んでいった。
そこで少年は学習し「賢い生き方」てやつを学ぶ。
気づけばすっかり裏社会の住人。似たような境遇の仲間の中で、少年はいつの間にかトップに立っていた。
何人もの手下を引き連れ、どんな悪どい事でもやる。
年齢も少年と呼ぶのには似つかわしくない。もう青年だったんだな。

そんな青年にも好きな人ってのができる。
荒事は得意だが、女の扱いは苦手だ。
初めて会った時に一目ぼれして、そのまま夢中になっちまった。
結婚したい、初めてそう思って青年は娘の両親のところに挨拶に行く。
そしたらだ、その娘の父親が自分の家族を無茶苦茶にした詐欺師だったんだ。
「娘さんを僕にください」
両親の仇を目の前にそんなセリフは吹っ飛んじまった。
何も言わずに頭だけ下げて、家を飛び出した。そのままパチンコ屋に入り頭が真っ白になるまで球を打ち続ける。
どうしたらいいんだ。どうすべきか。
今の青年になら復讐はたやすい。だが相手は好きな娘の父親だ。
気が付くといつの間にか昼も過ぎてる。幾ら復讐だの考えてても腹は減る。
そこで目の前にあるラーメン屋の扉を開けて……。

もし目の前の嫌な客が、そんな人生を送ってたとしたr……いらっしゃいませー」

アイドリングタイムでも客は入ってくる。
食券機の豚骨しょうゆラーメンのボタンを押すのを確認して、店長はずんどうに麺を放り込んだ。

よくわからんけど店長、話長いわ。


※この物語はフィクションであり、登場する人物・団体等は実在のものといっさい関係ありません
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