寿司とアイドルを比べるな

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日本文化から学ぶ海外進出のポイント 〜アメリカで寿司が人気を博し、アイドルが拒絶されるのはなぜか?〜 | freshtrax | btrax スタッフブログ

またアニメが有名ならアイドルも知っているだろうと思い、AKB48などのアイドルの話を振ってみる。日本のことが好きな人に尋ねても、まるで変なことを聞いてしまったかのように怪訝そうな顔をされる。アメリカ人曰く「アニメは受け入れられるけれど、アイドルは強烈すぎて理解できない」とのこと。未成年が奇妙な衣装を纏い、体を一部露出している姿は、日本より宗教的に未成年の性を重んじるアメリカからするとポルノのように見えてしまい、なかなか良いイメージが持たれにくい。
記事では日本の寿司などの食文化は浸透しているのにアイドルは全く受け入れられないのはなぜだ?としてそれは適切なローカライズがされていないからではないだろうか?という論理展開をしているんだけれど、このレトリックに違和感があったので
え?日本にハンバーガーは浸透してもアメリカのアイドルは流行らないですけど何か?
ブコメをつけてみたんだけれど足りないのでここに追記。


この「日本の食はアメリカに受け入れられるのにアイドルはなぜダメなのか?」という疑問には大きな錯誤がある。
それは寿司は「味」「食文化」であり「モノ」だが、アイドルは「人種」であり「歌」であり「言語」が絡んでいる「コト」。


モノとコト

寿司は、「モノ」だ。
「モノ」は、海外向けにローカライズすればなんとでもなる。
さきほど寿司がアメリカに浸透するのに100年以上かかったが、実はあるときを境にいきなり寿司が受け入れられるようになっている。1970年代にカリフォルニアに日本料理屋をオープンさせた(板前の)真下一郎が、生の魚を食べる習慣がないアメリカ人に受け入れてもらえるカリフォルニアロールを発明したのだ。トロに食感が似ているが生臭くないアボカドを代わりに使い、アメリカ人に食感、色、味ともに嫌煙されがちだった海苔をご飯の内側に入れこむことで目立たなくした。今でも海苔が外側に巻かれている寿司をアメリカではなかなか見かけないのはアメリカ流のアレンジがどれだけ成功したかを示しているだろう。
これはカレーが本場よりも日本人向けに味を変えているのと同じ。
ローカライズは容易でしょう。

では日本のアイドルがなぜ海外で受けないかといえば、単純に英語圏に対して売ることを考えるのであれば英語が前提になる。
英語の曲が日本でヒットすることもまれにあるが、ヒットし続けることはないし単体(曲のみ)で売れることはなく、売れてもそれは何かヒットコンテンツの主題歌に採用されるのが切っ掛けだったりする。
それと同じく海外で日本人歌手が受け入れられることもあるが、多くは英語でつまづく。
また日本人の音の好みと海外での音の好みが違ったり、その時の流行が違うことも多い。


そして寿司は、寿司屋によって味も違う。
寿司とは「料理」のひとつのジャンル名であり「モノ」を呼ぶ。
変わって「アイドル」は確かにジャンル名だが、そのアイドルは量産されているわけではなく例えば「ももクロ」なら全部で五人しかいない。
売るのはAKBであれももクロであれ「アイドル」という人間が作り出すコンテンツ。
つまり「コト」を売る。
音楽やライブにでてバラエティで笑いを取る。
それを受けての一般客の体験が「コト」。
寿司は職人が一人で造るが、アイドルはその裏にスタッフがいて、同じコトを与えるための「CD」を大量生産する。
寿司はウケが悪ければ職人が研究し味を変えればいいが、アイドルがウケが悪かったからと言って変えるとなれば多くの人間がまた動き始めることになる。
人数が少なければフットワークも軽いし設備投資も比較にならない。
規模も仕組みも全く違う。

アイドルが歌い踊る副産物としての「コンテンツ」が「寿司」に相当するが、モノは消費すれば無くなるがコトは消費しても無くならないこともある。
音楽は何度聞いても同じ体験ができる。


アイドルと寿司を比較するのは、逆にすればすし職人とCDやコンサートやバラエティ番組や写真集を比較するのに近い(これでも厳しいけど)。
どれもこれも本質的に全く違うアイドルと寿司を比較するのは不自然だろう。
だからロジックに無理が生じる。


人種

ところで、どうして東洋人のアメリカ大統領はいないのだろう。
アメリカで生まれたアメリカ国籍の東洋人は多いのに誰ひとり大統領になっていない。
黒人ですらオバマ大統領が初めて。
NBAにもようやくジェレミー・リンやヤオ・ミンなどの東洋人が登場し始めた(スポーツの場合、人種以上に体格が問題になる)。

もし「アメリカでは白人が90%で残り8%が黒人、2%が東洋系」というのなら歴代大統領が黒人1人、他は白人でも判る。
しかし実際はそうではなく、黒人は人種差別されてきた歴史があり、東洋人も大統領になるにはまだまだ遠いコーカソイド(白人)の国 多民族国家アメリカ合衆国
同じ国に住む人間同士ですらまだ人種の壁を完全には乗り越えられていないのにどうして海外の東洋人アイドルを受け入れるのか。

英語が主体なのにモンゴロイドの娘が出している日本語の曲を売ろうとしてもそりゃあ難しい。
ローカライズして英語にすれば売れるか?といえばそんなこともない。
そもそもモンゴロイドのアイドルが売れる市場がアメリカに存在するかどうか?だろう。
Babymetalの動画、海外でも話題に へビーメタルとアイドルが合体
ヘヴィメタルの市場は海外にもあるし、そこでならある程度の反応はある、と。
これまでにない切り口だからこそ目立つ。
海外のアイドル市場と日本のアイドル市場は求めているものも形態も全く違うもので、そこはローカライズで何とかなる部分でもない。
人種が違っても東洋でなら日本のアイドルがそのまま通用するのも判りやすい。
東洋であれば言語の違いさえクリアーすれば美醜の感覚は近しい。


日本の映画やドラマは海外へは出て行かないし(いけない)、アイドルにしろバンドにしろ難しい。
どれも日本語でモンゴロイドの文化で造られたコンテンツだから。

でもアニメには人種を越える無国籍な世界観がある。
吹き替えのローカライズも容易(ただし海外のギークは日本語が好みらしいが)。

ギターウルフみたいに「ロックンロールは共通言語だぜ」と言葉が通じないとか無視して力技でやってりゃあ海外のバンドからリスペクトだってされる。
きゃりーぱみゅぱみゅにしろそうだが、それ単体の成功方法論を他に持ち込めば通用するということでもない。

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※海外のバンドが参加したトリビュートアルバムが作られるのも珍しい


コンテンツローカライズの高い壁

「東洋人」だし「日本語」なんだから。
それはローカライズでどーこーできるモノでもない。
全く違う文化圏で「味」という地元の味の嗜好を調べて、それに合せて調味料の配合や材料で調整できるものではない。
歌の流行を調べて、好まれる音に合わせて、それで売り出したって売れない可能性の方が高い。
同じアメリカの国内ですら失敗してるアイドルは山ほどいるのに。
日本で流行ってるからって海外に持ち込む必要はないものはあるし、海外で受けても日本では全然ダメなものだってある。
アレとか…。

先日「東洋人を贔屓しやがって」と美術館で壺を割られたアイ・ウェイウェイ

寿司とアイドルは全く違う。
食文化とコンテンツ文化は、認識が根本から全く異なるとしか思えないんですがね。

グローバル化が叫ばれる今日であるが、異なる国の異なる文化を理解することは一朝一夕で成せる簡単なものではなく、日本文化の海外進出の歴史から、その国の文化を取り入れてアレンジすることの重要性が学べる。実際に、日本のアイドル文化はアメリカ文化からすると御法度であり、今現在アメリカで受け入れられているとは到底言いがたい。それに対して日本の寿司は、アメリカから理解されなかった生魚、海苔という部分を巧くアメリカ流に代替、アレンジすることで今ではアメリカで最も知られている日本の文化になっている
日本では、海外のバンドもアイドルもあまりウケないですけど、これはどういうことなんですかねぇ。
ハンバーガーみたいにローカライズすれば売れるんですかねー。
日本語を話すアメリカの白人アイドルなら売れるのかな……ダニエル・カールみたいなもんか。

ローカライズって大事ですよねー。
さすがグローバルブランディングエージェンシー、すばらしい。はははh


……レトリックで煙に巻く牽強付会は仕方ないとしても、それで納得してるのがこわいわ。

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