小玉ユキ「月影ベイベ」

月影ベイベ(1) (フラワーコミックスα)

東京から転入してきた蛍子(ほたるこ)は、町の伝統「おわら」を踊れるが人前では緊張して踊れなくなってしまう。そんな蛍子にひかれる地元の高校生、光(ひかる)。どうやら、光の叔父と蛍子は昔からの知り合いらしいが、2人は何も語らない。
小さな町に吹き込む、謎と秘密の風。
情緒と青春を瑞々しく描く、新しい小玉ワールドを堪能ください!
現在、Kindleで一部コミックが30%オフで販売されていて「何か読み逃しているものはないかな?」と調べていたら小玉ユキ「月影ベイベ」を読んでなかったことに気づき、慌ててポチった。

正直、恋愛ものが昔から苦手。
しかし小玉ユキの作品は読みやすい。
坂道のアポロン」にしろそうなのだけれど、軸として「恋愛」以外のプラスアルファがある。
今回ならばおわらという踊りがそれにあたる。

主人公の光は、転校生の蛍子に一目惚れするのではなくて(伏線として薄っすらは匂わせているが)「蛍子の踊るおわら」の流麗さに惹かれる。
蛍子は光の叔父に好意を抱いていて、何かしらの過去がある。
光は「蛍子と叔父が周囲からどう見えるか」という部分に気を遣って蛍子と偽装カップルを演じる。
つまり光の行動原理は「おわら」「叔父」という二つが軸になってるし、恋愛の軸は別になってる。

蛍子の行動原理は「おわら」「光の叔父」で光に似ているが「光の叔父」への軸に恋愛をはらんでる。
もし叔父が他の男子生徒なら普通に三角関係ドラマになるところを、叔父を置くことで三角関係を成立させず、しかし恋愛ものとしての要素は盛り込んでる図式。

ついハチクロの「人が恋に落ちる瞬間を初めて見てしまった」を思い出してしまった。
光の立ち位置は「叔父に惹かれる蛍子を見て、叔父を世間の評判から庇うために偽装している」かたちで、恋愛の軸で言えば第三者のところにいる(キャラ本人の自覚的には)から恋愛の軸線上にいない(いまのところ)。

学校を舞台にしていながら授業風景はほぼ描かれず、踊りの練習や放課後を中心に描くのは学園スポーツものに多い。
学園マンガにおける授業中のシーンというのは「物思いにふける」ために存在してる。
踊りには求愛の要素も入るので、踊りという肉体言語で気持ちを表現する、という部分は大いにあるかと思われ。


小玉ユキは人物の描線もしっかり書き込むしコマ割りもオーソドックス。
少女マンガのような時制がすっ飛んだ異次元を感じさせるコマ割り*1が少なくて非常に読みやすい。
地に足の着いた高野文子的というか(高野文子が地に足がついてないというのではない)。

今のところ電子書籍で二巻まで。
5/7には第三巻発売(電子書籍化はその先)。
いろいろと展開があるようなので期待して待ちたいと思う。

*1:時間に捕らわれない恋に関するモノローグとか