男性向けファッション誌「HugE」の小型化を考える

HUgE (ヒュージ) 2014年 5月号 [雑誌]
よいことなのか悪いことなのかHugEの大きさが28.2x22.2cmから 22.6x17.8cmに変更になった。
近年で言えば二度目のリニューアルになる。


HugEは、DiorHommeなど男性高級ブランドの隆盛を背景に部数を伸ばした。
メンノンなどよりもハイエンドで高級な服がズラズラと並び、スナップショットなどは扱わずモデルが高級な服を着、写真家が撮影する誌面造り。
ファッション及びアートやカルチャーなどを紹介するオシャレなコンテンツを揃えていたが、時代の流れの中、徐々にファッションよりもアートやカルチャーに重きを置き始めた。
紙質を変え以前よりも軽くて柔らかいものに変更し、写真の見せ方よりも雑誌自体の取扱いの良さを優先させ始めたのも*1そんな「ファッション→カルチャー誌への路線変換」をイメージしたのかも知れない。

実用性重視の雑誌なら神田神保町の特集だろうが、HugEで書店を特集するならニューヨークやパリなどの老舗ブックストアで構成する。
そりゃあワールドワイドなファッショニスタは読み逃せないっすよね。
……えぇ。

同じように祐真朋樹の元でハイエンドを一時は目指したPOPEYEが、アメカジを中心にストリート/カルチャー(ノウハウ)的な誌面作りに変え部数をV字回復させたのに対しHugEは迷走した。
その間にVogue Hommeは日本から撤退。

男性誌は「かつてのブランドブームを支えたオジサン」を意識した年上目線の雑誌が主流になり始めた。
これは洋楽を支えるのが今や若者ではなく「かつてライブに足しげく通ったオジサン層」を意識して展開しなければならない状況に近しい。
若者がメインターゲットだったファッションは中高年がメインとなり、その嚆矢となったオヤジ向け雑誌「LEON」や、高級品と革ジャンと黒い服ばかりの金持ちのちょい悪オヤジ向け「SENSE」は成功をおさめた。


そんな中、HugEの遺伝子を受け継ぐファッション誌が二誌創刊された。
PRODISM EXT. (プロディズム エクスト) 2014年 05月号 [雑誌]
SHIPS MAG vol.11 | 新雑誌「PRODISM」が伝えること

「ですね。カタログの役目って物欲を掻き立てるツールだと思うんです。それと同じ目的を持ったファッション誌って意外と少ないなって思ったんです。格好いいファッション誌を作りながら、これを見て読者がショッピングを楽しもうと思ってくれるものを作りたかった。一言で言えば“ビジュアルにこだわったプロダクトファッションマガジン”ということです。ページをめくった瞬間、そこに掲載されているものに魅了される。この一冊の中に読者にとって一個でもそんな物欲を掻き立てるものがあれば、この雑誌の役割は成立しているのかなと思っています」。
かつてHugEに携わった渡邊敦男が立ち上げた雑誌PRODISM EXT.
アート、カルチャーに舵を切る前のHugEっぽい雑誌。
ドメ、海外などのブランドのアイテムを紹介するカタログっぽい誌面。

Them magazine 2014年 04月号 [雑誌]
そしてこちらもHugEに携わった右近亨や野口強らが創刊したThem magazine
こちらはHugEからカタログ的な見せ方を薄めてファッションフォトを中心に組み上げた印象で、かつてのVogueHommeなどに近い感じを受けた。

どちらの雑誌もかつてのカルチャー誌に舵を切る前のHugEを思わせる。
PRODISM EXT.は、29.4x20.8cm
Them magazineは、30x23.4cm
写真を見せる、という意味ではこのくらいの大きさは欲しい。


対して本家のHugEはサイズを小さくした。
そして中身はと言えば半分ファッション、あとはカルチャーと言った具合で、以前ならば無かった車や高級時計の特集が「大人向けのトータルカルチャーの提案」という大義名分を匂わせるが、誌面の構成で安い雰囲気に感じてしまう。
今の、ネットが主流の時代に紙媒体でファッションを取り扱うファッション誌は難しいだろう。
Vogueから若い世代向けのVogueGirlという雑誌が出ているんだけれど、Vogueと比べると小さい。
VOGUEの29.8x23cmに対してVOGUEgirlは22.4x17cm。
HugEの28.2x22.2cm(旧)と22.6x17.8cm(新)にサイズが近しい。

この「大判で高級なVOGUEと小型で若いひと向けのVOGUEgirl」という版型、価格での読者層の分け方は判りやすいのだけれど、HugEが誌面を小さくしてそれでいて「大人ファッショニスタ」と言う漠然としたオヤジ(かつてのファッション隆盛を支えた)を意識した言葉の使い方には違和感を感じる。
果たして「大人ファッショニスタ」がこの紙面を受け入れるのかどうか。

このHugEの大きな路線変更が果たして吉と出るか凶と出るかはわからないが、同系統の雑誌創刊が相次ぐ中でのこれからのHugEの新展開はとても興味深い。
かつての自分の影に負けるのか、それとも生き残るのか。
Naked&Famousのデニムを育てつつ見守ろうと思う。

*1:コストかも知れないが