「題名のない音楽会」でノイズミュージック特集をやったのにノイズミュージックを解説した記事が見当たらないので書いてみる

※専門の教育は受けてないので間違ってたらすまん
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大友良英『題名のない音楽会』でノイズ語る「当時のスタンダードからするとビートルズはノイズ」(1/3) - Real Sound|リアルサウンド

題名のない音楽会」でノイズミュージックが!!
と多くのブログが書いてるけどどれも「こんなだった」の書き起こしか「ノイズはわからなかった」の感想か。
いやいや。読みたいのはそれじゃない。
ノイズミュージックが理解できないひとにも理解できるように解体・再構築した記事が読みたいなー、と思ったが無かったので、仕方ないから自分で整理の意味も込めて書いてみよう。

クリーントーン

まずクリーントーン
ひずみがない「きれいな音」。
楽譜に示されたとおり、その音符のその通りの音を鳴らす。
クラシックなんて演奏者が指揮者によりコントロールまでされてる。
完全統治下にある集団芸。
普通の「音楽」「歌」と言われるものはおおむねこれがベースになっていて、あとは「おかず」と言って演奏に少し手を加えたり、演歌なら「こぶし」「しゃくり」などと独特の歌唱法で音を歪めることもある。
ギターならトレモロアームを使って「ぐいんぐいん」と音を波打たせたりする。
歌姫、なんて言われるひとはまずこの透き通るようなクリーントーンの歌声を出して、そこに微弱なゆらぎ成分が入ってたりする。
個人的にはそんなに好きじゃない。


音楽には、楽器をよく使う。
「よく使う?いや“いつも使う”だろ?」
そうでもない。
手拍子、なんてあるがあれも音楽の一部を構成する。口笛もそう。
ストンプだとかいってドラム缶を叩いたり、モップを鳴らしたり、

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神保 彰氏くらいになればこのくらいのクオリティになる。

どうして楽器を使うか、と言えば簡単にいえば「望む音を出せる、コントロールできる」
楽器はそのために特化したツール。


ギターでいえば、特定のフレットを抑え弦を弾くと音が出る。
ピックアップに伝わった震動がシールドを伝わってアンプに入り増幅され鳴る。
アンプもギターも同じセッティング、同じフレットを抑え、同じ弦を弾けばどのギターでも同じ音を鳴らせる。
もちろん細かい成分の違い(ボディの形状、アンプの性能など)はあるがGならG、FならFが鳴る。
タブ譜の通りに弾いて行けば、その曲を演奏できる。
もし各ギターが統一されておらず、アンプにゲインもトーンも調整がないとすればいろんなギターといろんなアンプの組み合わせで同じ音が鳴らせないということになる。あるギターではGなのにあるギターではEm7では困る(もちろん三味線のようにざっくりした目安と唱歌(テレツンテンテン)で伝えてきたモノもあるわけですが)。
真っ当で当たり前な「音楽」において音やリズムとはある程度コントロールできるものなわけです。

ミュージックコンクレート

話は変わって録音のお話。
もともと「その場限りの演奏」でしかなかった音楽が、録音技術が発達することによって「音を記録できる」ようになった。
さらにはデジタルも発展してホワイトノイズ、サイン波などの機械的な音も作られコントロールできるようになってきた。

さてジョン・ケージと言うひとがいました。
ケージの話は何度目かになってしまうので端折りますが、ケージはざっくり言えば「予定されない音」「自然に溢れる音を使う音」「無音すら音」という考えをして、音楽というものを「楽器によって楽譜に従い鳴らされる」という前提を否定し、ピアノの前に座るだけの「4分33秒」やラジオを順番に鳴らす「ラジオミュージック」などなど実験的な音楽をいろいろとやったわけです。
【関連過去記事】
怒り新党「新三大ジョン・ケージの音楽」がわからなかった人へのガイド #1 4:33 - あざなえるなわのごとし
怒り新党「新三大ジョン・ケージの音楽」がわからなかった人へのガイド #2 「わからない」と言う感想 - あざなえるなわのごとし

音、とは自然に存在し空気を揺らすものであればそれはすべて音であって、それを「鳴らす」もしくは「聞く」ことで音楽と認識することができる、といった思考をしたのがジョンケージなわけです。

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デジタルで電気的な音の発展とジョン・ケージ的なあらゆる音を音楽と考える試み。
デジタルな音の嗜好はそのままテクノへ、そして実験音楽的な嗜好はそのままノイズミュージックへと進みます(もちろん他にもいっぱいあるけどここでは)。
題名のない音楽会」でも紹介された武満徹氏の名前はテクノ史でも登場します。
電子音や自然音を録音し、つなぎ合わせ新たな音に作り替える。
ミュージックコンクレートと呼ばれるジャンルや前衛音楽。
今ならサンプリングやミックス、テクノやアンビエントなどで使われている技法の元祖、って感じですかね。

Autechre - Dropp - YouTube
ここでは“テクノの極北”オウテカを挙げておきますが、テクノはピコピコしてなきゃならないわけでもないしリズムが刻まれなきゃいけないわけでもない。踊れなきゃならないわけでもない。
「当たり前」の前提を否定していくダダイスト的な「音」であり「音楽」。

コントロール下にない音楽

ノイズミュージックは絵画で言えばジャクソン・ポロックみたいな抽象性と偶然性を有する。

Jackson Pollock 51 - YouTube
ポロックの絵画は、絵の具を飛び散らせたりまき散らしたりしてその偶然性を使う。
決まった通りの決まった線を描く絵画とは思考が違うわけです。
フランツ・クラインなんかもそーですね。

額縁の中にひたすらペンキの粒が散らされた絵画。
あるいは真っ黒に塗りつぶされた絵画。
そういうものを見たときに
「この絵画をどう見たらいいかわからない」
と思ってしまう。
具象の絵画は見覚えのあるものや風景が描かれていたりするから、見たことのあるそれを頭の中で理解できるし、だから意図もわかる。

ところが抽象画は理解の仕方がわからない。
ガイドラインがないんですよね。
真っ黒な絵に「闇」というタイトルが付いていれば少しはガイドになる。
あるいは「この絵は○○をイメージしました」という注釈とか。
人間の理解は、未経験の対象に対してはそういう補助機が必要なんでしょう。
ノイズ音楽もそうなんですよね。
和音を聞いている人が和音にすらならない「ピーガー」という音がひたすら続くものを耳にすれば何を聞けばいいのか、どれを聞けばいいのかわからない。
いつも聞いている歌声、リズム、メロディ、どれも全部ない。
あるのは電子的なノイズだけ。

オウテカくらい少し音楽っぽくしてくれていれば聞けるんだけれども。

インプロ

ノイズを使い、ノイズを鳴らし、ノイズを音として演奏するものがノイズミュージック。
それが演奏者のコントロール下にありやなしやではなくて(ジョン・ケージ的な)情動と思考に従い鳴らされる場所で鳴らされ、鳴らされない場所で鳴らされてもそれは音楽を構成するわけです。

題名のない音楽会」の中で大友氏がギター演奏して「これジャズって言われちゃう云々」と言うのはつまり、あの演奏がコントロール下に強くありノイズではなく和音とそれに付随するノイズから構成されていたから「純粋なノイズミュージックとは言われない」旨を口にしたわけですね。

コントロール下にない偶然性、という意味ではジャズにもある。
ジャズはインプロバイゼーション(即興演奏)というミュージシャンが相手の演奏に合わせてその場で考え即興で鳴らす、という技法があって、当然ながらその演奏は一回こっきり・再現性不可の演奏なわけです。
すべてがコントロール下にあり、統制され、ひとつの巨大な物語を鳴らすクラシックとは全く別の発想。

ロック的ノイズ理解

ちなみに自分はロックな人なのでノイズや正弦波などを聞いて大友氏が「これたまりませんね☆」と言うのはいまひとつ理解できませんが、ただマイブラとかシューゲイザーの轟音とか、ソニックユースとかJマスシスの轟音とかフィードバックノイズとか「クリーントーンでない音にグッとくる感覚」と言うのは解らなくもないのですね。
女性ボーカリストのきれいな歌声よりもJの弾く爆音フィードバックノイズの「ぐわんっ」のほうが鳥肌が立つ世間で言う「歪み」「へた」「きたない音」嗜好ではありますから。

Sonic Youth - 100% - YouTube
ロックというのは(特にオルタナ、グランジ、パンク、ハードコアなど)そういうノイズも音として扱うし、ボーカルは上手ければならないというわけでもない。
ギターも上手くないことが多いし、演奏が下手だったり、でもそれをよしとしたりする。
ハイトーンの裏声のボーカルとか早弾きのギターとか、そういうのは好きじゃない。


アタリ・ティーンエイジ・ライオットが解散してた時にアレック・エンパイアを見に行ったことがありますけど、始まった途端にライブ会場がすさまじいノイズで満たされてモッシュピットにカップルがいたんだけれど、女性が外へ飛び出して行って、しばらくして帰ってきて今度は男の首をつかんで無理やり外へ連れ出してた、なんてこともありましたっけね。
何を言ってたか聞こえなかったけれど多分「こんなノイズは耐えられない」「なんでこんなの連れてきたのよ」だったんじゃないかなーと思うんですけどね。
デートにノイズ系のライブは避けましょうね。

Alec Empire "The Ride" - YouTube

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