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中国のどうしようもなさと個人の無力さと 映画「アイ・ウェイウェイは謝らない」

映画

アイ・ウェイウェイは謝らない [DVD]

「ペンは剣よりも強し "the pen is mightier than the sword"」
言論で訴える力は武力で押さえ込むより人々の心に訴えるのだ、という言い回しだが、芸術家アイ・ウェイウェイは芸術によって人々に訴え、剣を持ち襲いかかる中国と戦っている。



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艾未未

詩人である父親、艾青が文化大革命で非難を受け、一家で新疆ウイグル自治区の労働改造所に送られ5年間を労働改造所で暮らす(Wikipedia参照)。
成長したアイ・ウェイウェイはアメリカへ留学、そこで資本主義の洗礼を受ける。
一度自由を味わえばそれは魂に残り続ける。
父親の急病により中国へ帰ったアイ・ウェイウェイは中国国内で芸術活動を開始する。


中国の現代芸術家であり社会活動家としても有名なアイ・ウェイウェイのドキュメンタリー「アイ・ウェイウェイは謝らない」を観た。

映画の中にこんなシーンがある。
四川省の環境活動家 譚作人が裁判にかけられ、その裁判に出廷するために成都を訪れたアイ・ウェイウェイ一行。
真夜中、ホテルに警官が押し寄せ、扉を蹴破る。
応対したアイウェイウェイは警官に暴行され、ホテルに監禁。

警官が大挙して、監禁した理由ははっきりしない。
四川大地震の活動で逮捕された譚作人氏と譚夫人 - (大紀元)
結果、裁判には出廷できず譚作人は「国家政権転覆煽動」で禁固5年の刑が言い渡される。

そして寝付いて三時間ぐらい経った夜中の3時、私たちのビル全体がハリウッド映画みたいなことになった。すべてのドアが蹴破られた、ドア一枚全部破られたのもある。私は先ず110番に電話した。誰かが私たちの泊っている旅館に闖入してきたと。そして私はドアの向こうの人間に誰だと訊いた、彼らは警察だという、私は自分たちが警察だとどう証明できるのか訊いた、彼はドアビュアーから見てみろという、私はなぜ見なければいけないのかといった、すると彼らは腹を立ててドアを蹴破って私を殴った。その時私はまともだったと思う、なぜなら警察はどのみち人を使って殴らせる、私だって初めての事ではなかった、だが頭はずっと痛かった。
 一カ月後、私がドイツへ行って美術展を開催した時、博物館の館長がかなり心配性の人で、絶対に病院へ行けという。病院へ行くと医者はすぐに入院しろという。その医者は最も優れた脳外科医でミュンヘン大学の脳外科専門だった。彼はその時こんなに酷い大脳内出血は四年に一度やっと出会うぐらいのものだ、と言ったのだが、私はその時にはもう感覚がなかった。当時幸いにも入院できて、今こうしてここに立って皆とおしゃべりすることができる。

艾未未読本

アートは剣よりも強い(ただし時と場合による)

この映画を観て確かにアイ・ウェイウェイは「芸術は剣よりも強し」を信じて戦っているのが解る。
殴られても、拘束されても、理不尽でも。
どれだけ怒られても謝らない、表現を止めない。

スタジオの前に監視カメラが設置され、常に私服警官が尾行しているのは、なんだか舞台が北朝鮮のような錯覚を覚える。
外にいる間はずっと監視下にある。
アイ・ウェイウェイは常にカメラを回し撮影し、ツイートし、それを政府が撮影している。



アイ・ウェイウェイが上海に新スタジオを建設。
すると政府は建物の完成を見計らったかのように(事実そうだろうが)それを取り壊すように命令を出す。
アイ・ウェイウェイはその命令を逆手に取り皮肉をこめて「解体記念パーティー」を開く。
ところが政府はその「パーティーを開いた」ことを罪としてアイ・ウェイウェイを自宅軟禁にした。

中国の現代芸術家、艾未未(アイ・ウェイウェイ)氏は6日、自身のスタジオの「解体パーティー」を企画した罪で中国当局により自宅軟禁に置かれていることを明らかにした。上海にある艾氏のスタジオが7日に政府の命令で取り壊される予定だったことから、艾氏は同日に友人らと解体作業を眺めつつサワガニを食べ、演奏会を楽しむパーティーを企画していた。パーティーには800人近くが出席する予定だったという。艾氏は、「つい最近当局から、上海に建てた新しいスタジオを取り壊すと言われた。理由は私の活動だと当局から聞かされた」と語る。

http://www.cnn.co.jp/world/30000813.html

逮捕、拘束

http://www.flickr.com/photos/32373689382@N01/5598101048
photo by Bopuc
2011年4月。
アイ・ウェイウェイが逮捕される。このPVではオチがマツコデラックスだが、この逮捕は世界的に話題になり、氏は80日後解放。
しかし詳細は語られず。
中国政府は、脱税などでアイ・ウェイウェイを告発。
その後、アイ・ウェイウェイは政府からの告発に対して訴訟を起こすが、(また)警察に出廷を邪魔されたり政府もやり方が露骨になってきた。
というか中国の警察は法の番人じゃなく政府の「中国共産党の指導の元」の私警ですか(そう言う国ですね)。

艾未未氏は、権力を前にしての認識も批判も、その多くは彼の人間性から出発している。加えてあの性格から発する牽引力である。馮小剛(中国の映画監督)は艾未未氏を「秩序を破壊する衝動にかられる男」と称し、米紙「ワシントン・ポスト」は彼を「いたずらっ子」と名付けた。では『環球時報』の社説はと言えば、真面目くさった口ぶりで「(艾未未は)法律すれすれの活動が好きな男」と呼んでいる。艾未未氏は、権力に対して、一種の新境地を開くような「からかい」の態度を保持し続けている。中国社会は、杓子定規で、平凡な特性を崇拝することによって、これまでずっとエセ道学の「偽君子(偽善者)」を山ほど産出してきたが、この艾未未氏の「からかい」の世界は、過去にそれをなしえた先人はなく、またこれから先もしばらくは、このような後継者は出ないと言ってよいだろう。

何清漣:中国政府から見た艾未未の「罪」 - (大紀元)

芸術とはコミュニケーションツールであって、言語化できないモノを伝えるために機能する。
アイ・ウェイウェイは、そんな芸術を通じて人々に訴え、愛すべき祖国「中国」の現状を打開したいその思いを表現し、国が抱える矛盾だらけの理不尽に対して対抗して見せるが、権力を持ち論理もなく理不尽であれ暴力をふるい押さえ込む政府が敵では、どこまでもどうしようもない。
ツイッターで正論を言い、理不尽な政府を糾弾してもそれを無視し続ける政府。
アイ・ウェイウェイは、そういう無力さを理解しながらも止めようとはしないし、中国に残り続ける。

ベトナムとのいざこざにしろどれだけ理不尽だろうが中国政府は態度を崩さない。
正論を突き付けてもそれが通じない・聞かない、論理的にコミュニケーションできない、姿も見えない相手に、国に対してただの人がどうやって抗えばいいか。

最後に

もともと国は人が集団を成して社会を作ってできたわけだけど、やがて思想と言うものができ、それが宗教のように国を縛るようになった。
ジョンレノンは「国なんてないと想像してみよう」と歌ったけれど、社会秩序がない人間の集団はただの倫理観のない動物の群れ。
社会と国と言う仕組みは、本来そこに住む国民に役立ち、秩序の元に安心して生きやすくするようにできてる。
あくまで本来は。
ところが政治思想が暴走し一部特権階級が自らの利益と仕組みを守るために論理も倫理もかなぐり捨てた結果、芸術家は殴られ、ベトナム船に船は突っ込み飛び地のような自国の領土を主張する。
ほんとどうしようもない。


そういう どうしようもなさと戦う芸術家の戦闘の記録。
果たしてネットの繋がりは無法を許す権力とどこまで戦える力になるのか、そんなことを考えた。

あなたはどう思いますか?
映画『アイ・ウェイウェイは謝らない』予告編 - YouTube

艾未未読本(アイウェイウェイどくほん)