NIN”光”のステージと音楽の魅せ方

音楽は、無くても生きていけるが、あった方がいい気もする。
音楽は、かつて生ものだったが、今は録音してあるものをいつでも聞ける。
しかし録音する際多くのモノが失われる。
それは数値化しづらい臨場感だったり、あるいは視覚的なステージ演出。

ライブの魅力は、音だけではなくステージ上のパフォーマンスでもある。
そんなライブならではの(一風変わった)ステージ演出と、中でも特筆すべきNINのステージについて。

スクリーンの裏側

【TOOL】
通常のライブであれば、バンドがステージに上がり演奏をする。
観客はそれを観て音を聴く。


TOOLは、変わってる。

ボーカルのメイナード・キーナンはステージ後方に立ち、観客からシルエットに見える。
変なダンスを踊ってる。

ステージ背後のスクリーンにPV映像が流れ、バンドが一切現れず終わることもある。
見えないところで演奏してる。
あるいはバンドメンバーの前に衝立、背後からスポットが当たって、観客から見ると全員シルエットなんてこともある。


GORILLAZ

初音ミク以前、虚構のキャラクターをステージに立たせ歌ったGorillaz
ただ観客は皆、歌ってるのがデーモン(Blur)だと知ったうえで見ているので声優みたいな感覚かもしれない。


PVも当然アニメ。

人力演出

【JANE'S ADDICTION】

ジェーンズアディクションはサーカス。
上から二人吊られてる。
ステージの上が円形に縁どられて中心に向けてストライプになってるのもサーカス小屋のイメージ。


【POLYPHONICSPREE】

電波な雰囲気のポリフォニック・スプリ―。
白装束で歌うバックにいるのはバンドの臨時コーラス隊ではなくて全部でポリフォニック・スプリ―と言うバンド。
メンバーは、13~27人だそう。
Wikipediaによれば”混声・シンフォニー・ロック”。


【渋さしらズ】

照明効果ではなくひとの多さで圧倒する、のは渋さ知らズ
前衛ダンサーやらギター、サックス、トランペット、ベース、ジャグラー、竜(ジャッキー・チェン映画に出てくるような)まで。
ともかくステージで騒乱が繰り広げられる光景は異様。
ポリフォニック~が法なら、こちらは混沌。

リアルタイムなテクノロジー

PERFUME

Perfumeの映像演出は素晴らしい。
ライゾマの先端技術がパフォーマンスに落としこまれてる。
エンターテイメント、という意味で視覚的なパフォーマンスと音の両方を、加工し作り込むということができるのもPerfumeならでは。
パフォーマーと音と視覚を切り離し、リアルタイムにフィルターをかけ加工できる。


COLDPLAY

COLDPLAYの光るリストバンド(Xylobands)演出は有名。
音とシンクロして観客のリストバンドが光る。
国内でもSEKAI NO OWARIなんかがとりいれたらしい。

最高峰、NINの”光”の演出

NineInchNails(以下、NIN)ことトレント・レズナー

冒頭、まるで地下室のようにメンバーの上から網目を通したような光が差し、それをスモークで浮かび上がらせる。
これは照明機械が頭の上まで降りてきているんだけれども、曲が変わり「MarchOfThePigs」になるとその照明が上昇し、後ろの照明がメインになってフラッシュする。
ここでステージが横→縦に変化し、広がりが一気に出る効果がある。

VEVO Presents: Nine Inch Nails Tension 2013 - YouTube
そして14:24辺り。天井からステージ前方にすだれが下りてくる。
このすだれがスクリーンとなってステージの上にフィルターのような効果を与える(22:40辺りでの空間を見せる演出)。
(以前からNINのステージでは透過性のスクリーンに映像を映す演出は取り入れていたんだけども、こういう見せ方はここ数年)
稼働するライトが光源を変化させることでステージの大きさを変え、広がりを出し、時には激しく幻想的に彩って見せる。

舞台裏のドキュメンタリー映像。


こちらは2013年にフジロックで来日した際の映像。
このときは衝立とスポットを使い影を映し稼働させることで演出して見せる。
光よりも影が印象的な作りになってる。

現地は雨でひどくて、そんな雷雨すらも演出のようだ、とか。
フード被ってると音が聴こえづらいし、雨は寒いですがね(特に苗場は)。

まとめ

CDが売れない、音楽が売れない。
だったらライブで稼がなきゃならない。
そうすると現地でどれだけ魅力的なステージを見せられるか、と言うところになるし視覚的なエンターテイメント性を追求しなきゃならない。
パフォーマンスのクオリティとエンターテイメント性。
エンターテイメントとして優れ「そこに行かなきゃ観れない」なら行く気にもなる。
ただの生演奏だけでは、ニッチなファンはまだしも、それ以外に対しての求心力に劣る。

もともとハウス、エレクトロ、テクノ系のミュージシャンはさまざまな映像を使いステージ演出してた。
ファットボーイ、アンダーワールドダフトパンク、オービタル。

Underworld - Born Slippy Nuxx (Live @ Zepp Tokyo ...
※BornSlippy!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!*1
聴かせるのではなく踊らせるのが主眼のレイヴ文化で、ステージ上で見せる演奏などが無いからこそ光と照明の視覚効果が発展した。
シンプルなロックバンドより、エンターテイメント性が豊かなステージ。

これから生き残り、盛り上げるのは、そんなエンターテイメント性に優れたパフォーマンスを見せられるミュージシャンなのかもしれない。
NINがやって見せたのは、単に照明を照明として光らせるだけではなく、光をオブジェのように扱い変化させ、光を形のある光として見せ、あるいは照らされてできた影を使うことで新しい演出を見せた。Perfumeもリアルタイムでデジタル処理した映像を照明として使ったり、あるいはLEDで光る衣装などさまざまな技術を盛り込み魅せ方を思索している。


そんな風に考えると、存在そのものがコンテンツであり演出である初音ミクは、面白い存在だと思える。

現状のライブ演出は、単にスクリーンに初音ミクを映して音がシンクロするようにしているだけ(技術的には、それもすごいんだけども)で
「ステージ上に初音ミクがいる」
という見せ方が主眼。
どちらかと言えばステージ演出自体はコテコテの定番。

ヴァーチャルなのだからそれこそ瞬間移動や(会場に幾つかサブスクリーンを設置して)ピアピア動画の世界みたくライブ中会場のそこここに等身大の初音ミクが出現し、観客が囲まれ、無数の初音ミクにミックミクにされる、という演出だってできるかもしれない。
ただ初音ミクの場合、初音ミク自体より「演奏しているPを観に行く」と言う部分もあり、観客も求めているのは新しい演出でもないのだろうけど(あの界隈はよくわからんから、こんなもので)。
南極点のピアピア動画

*1:カール・ハイドは踊ってますが