一緒に始まってバラバラに終わるまで 映画『ビーツ、ライムズ・アンド・ライフ ~ア・トライブ・コールド・クエストの旅~』


映画『ビーツ、ライムズ・アンド・ライフ』予告編 - YouTube



ア・トライブ・コールド・クエスト(以下、ATCQ)は、ニューヨーク市クイーンズでMCのQティップに幼馴染のファイフ・ドーグ、DJのアリ・シャヒード、ジェロビ・ホワイトを加えた4人で1988年にデビュー。
3MC1DJの構成。
アフリカバンバータのズールーネイション。

この頃、リック・ルービンがデフジャムを立ち上げビースティやパブリック・エナミーがデビュー。

Public Enemy - Don't Believe The Hype - YouTube

1986年にはRUN-D.M.C.が「WalkThisWay」でヒット。
People's Instinctive Travels and the Paths of Rhythm
そう言う中でデビューしたATCQは、それまでのディスコティックでファンクなレコードを使ったオールドスクールや、ロック的な感性の強いデフジャム勢とは違いジャズなどをトラックとして使うヒップホップのゴールデンエイジに現れたニュースクールの先兵。

デビュー当時アフリカの民族衣装を着て他と差別化したのも「ネイティブタン」というムーブメントを現わしてる。

A Tribe Called Quest - Can I Kick It - YouTube
そしてシングル「Can I Kick It」がヒットし一躍注目を浴びることになる。


A Tribe Called Quest - Bonita Applebum - YouTube
映画の中ではこの「Bonita Applebum」のセクシーさが取り上げられてる。
いわゆるヒップホップに多い女性観と言うのは女性蔑視的な目線が強く、誰かへの攻撃を含んでいたりするリリックに比べるとBonita Applebumへの誘い文句が続くこのリリックに「ATCQがラップと言うジャンルを音楽的にパーティーサウンドに変えた」と言われるのがよくわかる。

Low End Theory
セカンドアルバム「Low End Theory」
これでATCQの人気が確定する。
ただメンバーのジェロビ・ホワイトが1st発表後に脱退。その後飲食業に。
そしてファイフ・ドーグが注目を浴び始める。

A Tribe Called Quest - Check The Rhime (1991 ...

亀裂

要するにA TRIBE CALLED QUESTという80年代から90年代に主に全盛期というかワーっと盛り上がった、本当に歴史を変えた名盤を何枚も出しているHIP HOPグループがございまして、それがメンバー同士が不仲になってしまって解散に至ってしまう。それから10何年たって・・・みたいなそういうグループなんですけど、不仲に至ってしまったいきさつなんかも結構赤裸々に描いていて、これ長くグループやってきた身としては、『あっ、ここでそういう態度とってはダメなんだ!』とか自分にも身に覚えのある、たとえばメンバーとしてのエゴであるとか、グループでこっちに舵切ったらダメになる、俺たちはこっちにちゃんと舵が切れたから続いているんだなとか、そういうことをすごく思わせる面白い映画でしたし、

宇多丸 映画ビーツ、ライムズ・アンド・ライフを語る

ATCQは、グループ内の確執が原因で解散する。
この辺、ジェロビが脱退して、飲食業に行ったり、あるいはファイフが持病を気にしてたりラップよりNBAのスカウトマンに生きがいを感じたり、Q-TIPは独自のセンスで音楽的にレベルの高いラップをやろうとして、その辺で齟齬が産まれる。
グループって言ってもしょせんは他人の集まりなわけで、だからメンバーそれぞれが向いてる方向も違えば進む方向も変わるし、人気の差も出るし確執も生まれる。
映画内でファイフは「Q-TIPATCQじゃないか」と言う風な発言をしてる。
楽屋でのいざこざも撮影されてる。

Q-TIP

その後、再結成を何度かしたATCQ
Q-TIPはソロで活動し、アルバムも発表してる。

Q-Tip - Breathe And Stop - YouTube
非常に評価も高いし、他のメンバーもそれぞれの方向で活躍している。

バンドでもよくある話だけど、初めは同じ方向を向いて未知の世界が広がり、やりたいことも多くあってメンバーの間に愛がある。
しかしどこかでボタンをかけ違え、ギクシャクし始め収拾がつかずにバラバラになってしまう。
そりゃあバンドだろうがなんだろうが他人の集まりなのだし、誰かと一緒に何かをやるなら差が出来たり、食い違ったりすることはあって、それを把握してそれぞれに解決しようとお互いを理解しようとしないと、どんどんに離れていくしかないのだろうな、と。