本の「要約」で読書体験になるならそれは読む必要がない

に数度書店に行く。
学生時代は、週五~六だったので減ったが、それでも読みたい本は尽きることがない。

文庫 思考する機械コンピュータ (草思社文庫)昨日買ったダニエル・ヒリス 著「思考する機械コンピュータ」の文庫。
金子 常規 著「兵器と戦術の世界史」と越前 魔太郎(新城カズマ) 著「魔界探偵 冥王星O ジャンクションのJ」
そして村山 斉 著「宇宙は何でできているのか」と大村 大次郎 著 「税金の抜け穴 国民のほとんどが知らない納税で「得する話」「損する話」」の二冊をKindle電子書籍
今のところ上記を併読している。
ひとつの本だけを読むのはあまり好きじゃあない。

積読は他にもあるが、現行「読んでいる」のは上に挙げたものだけ*1


これらより後に購入し、読み始めた大栗 博司 著「重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る」や岡田斗司夫ホリエモンの対談本「ホリエモンオタキングが、カネに執着するおまえの生き方を変えてやる!」など、一気に読み終わったものもある。
特に後者は、語るほどの中身もない。

次に読みたいのはマイケル・ルイス 著「ライアーズ・ポーカー」なのだけれど、なかなか積読も解消しないし、読む時間もない。
ドーキンスの伝記なんていつになるやら。

ネットをやらない時間も決めて読書に費やしている。
ネットに転がっていない知識は、紙の上にある。


ここ3カ月で会員数は倍増の2万人突破、本の要約サービス「flier(フライヤー)」が資金調達を実施 - THE BRIDGE
約サイトが流行らしいが、上記の本で「要約」し、それを読むことで知的に満足できるものはあまりない。
「ライアーズ・ポーカー」を要約して「マイケルルイスが実体験から債権業界の裏側を描いた」云々を読んでもそれは単に概要でしかなく、だったらアマゾンのあらすじや素人ブログのレビュー記事で足りる。
物語は、その物語を追体験しひとつひとつのディテールを読むことで成立する。
ストーリーのみが要約された「60秒でわかる死霊のはらわた」では、元映画のさまざまな面白さが解らないのと同じ。

物語における読書体験とは、書かれた文字のデコードによる脳内での復元作業をいう。
物語の紹介に必要なのは導入であって、全体の要約ではない。


兵器と戦術の世界史 (中公文庫)「兵器と戦術の世界史」を要約しても「歴史上の武器の使用やそれに応じた戦術などを取り上げつつ……」など言われるまでもない。

「思考する機械コンピュータ」を「コンピューターの基礎になるAND/OR/NOTという論理演算子から……」と要約するのも必要と思えない。

こういう知識が羅列された本は、要約しても薄い概要にしかならない。
さまざまな事例を時系列に読むことで知識が深化する。
知識を読み、それを蓄え理解するには要約では足りない。
繰り返すが、紹介はアマゾンのあらすじや素人ブログのレビュー記事で足りる。


のブログでも読書感想文のマネごとのような記事を書くし、要約も含む。
書いてみてよくわかるのは、いわゆる実用書、ビジネス書と言ったモノは要約が書きやすい。
実用書とは基本的にハウトゥであり、まず明確な方法論があってそれに事例や比喩などで尾ひれをつけて広げているものが多く、その尾ひれを切り離してやれば明確で単純な骨子だけが現れる。

「○○は××すべきである!」
「一流の成功者が実践している○○の法則」

といった惹句インパクトと比較して、内容は順当で地味なものであったりして、針小棒大、タイトルは大山だが中身はネズミが一匹と言うことも多いし、仰々しいタイトルでもつけなければ評価すらされないのだろう。
単純で当たり前のことをさも新しい方法であるかのように飾る。

それだけハズレが多く、だからこそ要約サイトが繁盛する。
一冊の本を読みこんだ読書体験を皆で共有できるなら、そんなに便利なことはない。


もし要約で足りてしまう本があるならそれは読む価値があるのか。


るまでもない「ホリエモンオタキングが、カネに執着するおまえの生き方を変えてやる!」だが*2、ひとつ首肯する部分があった。

最も愚かな質問とは「どうやるんですか?」です。
「どうやってお金を儲けるんですか?」「どうやって有名になるんですか?」
大勢の人は方法のみを求めます。その結果、大多数の人は失敗し、「なぜ失敗したのか」すら永遠に理解しません。
(中略)
お金でもモテでも全部同じ。
「どうすれば儲かる?」「どうすればモテる?結婚できる?」という問いと答えに飛びつく人たちは、そういう商売をしている人たちの「永遠のカモ」です。

ホリエモンオタキングが、カネに執着するおまえの生き方を変えてやる!

安易にいいものを、ハズレのないものを、
誰かが評価したものを、おススメを。
要約された安易な方法論は解りやすく明快で、TWITTERで流れてくるキレイごとの格言には何かがあるように感じる。
誰かのおススメ、誰かのまとめは誰かのモノでしかない。
切り離された名言は耳心地がいいが、単に耳心地がいいだけ。


実用書やビジネス書を読んで資本主義社会で成功できるなら、もっと世に成功者は多い。
誰しも上手く行かないから本を読み、また次の本を読む。


誰かの成功例や方法は、多くがその人の、そのときのモノでしかない。
共有できて皆で幸せになれるならベースが上がってまた誰かが不幸になるだけだが、そんな心配すらなくカモがネギを背負って業界に金を落としてるのは変わらない。

無数のカモの上に要約サイトは鎮座ましましてる。
ホリエモンとオタキングが、カネに執着するおまえの生き方を変えてやる!

*1:今、来月あたり小川 一水著「天冥の標VIII ジャイアント・アークPART1」が電子書籍になると、上記を全部差し置いて先に読みますが

*2:動画を観るか、既刊「評価経済社会」を読んでいれば充分だと思う