小川一水「天冥の標8 ジャイアント・アークPART1」

※ネタバレはそれなり
天冥の標8 ジャイアント・アークPART1

「起きて、イサリ。奴らは撃ってきた。静かにさせましょう」―いつとも、どことも知れぬ閉鎖空間でイサリは意識を取り戻した。ようやく対面を果たしたミヒルは敵との戦いが最終段階を迎えていることを告げ、イサリに侮蔑の視線を向けるばかりだった。絶望に打ちひしがれるイサリに、監視者のひとりがささやきかける―「人間の生き残りが、まだいるかもしれないのです」。壮大なる因果がめぐるシリーズ第8巻前篇。


天冥の標は、地球より遥か彼方。
とある惑星の移民の物語として始まった。
しかし時間を遡り、ウイルス冥王斑のパンデミック、感染し生き延びたものは感染者として差別され隔離され<救世群>となり、被展開体と名乗るミスチフとノルルスカイン、ひとに性的に尽くすために作られたアンドロイド<恋人たち>、未来へ繋がるそれら道具立てを一つ一つ描いた。
人類が壊滅し、しかし生き残りは隠れ生き延びた。
人類を滅ぼした敵<救世群>から逃れ、隠れ、モラトリアムとしての世界メニー・メニー・シープを作り上げる。
文明の崩壊と復興、虚構の歴史、虚構のストーリー。
戻った時間が繋がり、再び未来が描かれる。


一度描いた物語だけにかなりイサリ側からの描写は端折っていたものの、ここへ来てさまざまな思惑が入り乱れる単純に「為政者 対 市民」ではないメニー・メニー・シープの危うい状況がハッキリと判る訳で、同じ時系列の話ながらも見える風景が全く違うのは面白い。
一度目は植民地を揺るがす大政変に見えたのに、その実もっと巨大な危機〜咀嚼者(フェロシアン)〜が背後にあって、さらにはダダーとノルルスカインの全宇宙と膨大な時間をかけての戦いもその後ろにはあって、それと比べればメニー・メニー・シープでの政変は局所的なレベルの争いでしかない。

遂にメニー・メニー・シープに咀嚼者(フェロシアン)が登場し、カルミアンは覚醒し、人類は再び生き残るためにメニー・メニー・シープというゆりかごを守るための戦いを開始することになる。

ミスチフの潜むカヨが何を企んでいるのか。
物語も遂に終盤に突入。
どこまでスケールの大きな話になるのか。
メニー・メニー・シープを含む人類と咀嚼者(フェロシアン)の関係だけか。
それとも非展開体ミスチフ(オムニフロラ)とノルルスカインの対峙にそれなりの決着がつくのか。

次の巻が、楽しみで仕方がない。