小川一水「青い星まで飛んでいけ」

青い星まで飛んでいけ

それは人間の普遍的な願い。彗星都市での生活に閉塞感を抱く少女と、緩衝林を守る不思議な少年の交流を描く「都市彗星のサエ」から、“祈りの力で育つ”という触れ込みで流行した謎の植物をめぐる、彼と彼女のひと冬の物語「グラスハートが割れないように」、人類から“未知の探求”という使命を与えられたAI宇宙船エクスの遙かな旅路を追う表題作まで、様々な時代における未知なるものとの出逢いを綴った全6篇を収録。

大河SF巨編「天冥の標」の小川一水氏による短編集。

 



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未来。
星から氷を切り出し生計を立てている都市彗星バラマンディ。
地球から遠く離れ衣食住足り、誰も出ていかないその星から出て行こうとする若者二人を描くガール・ミーツ・ボーイ「都市彗星のサエ」や異生物とのちょっと変わったファーストコンタクトを描く「静寂に満ちていく潮」など宇宙を舞台にした作品もあれば、他人の転職が見えるという不思議な超能力?者の「占職術師の希望」やダイエット商法にハマる女性の暗喩のような「グラスハートが割れないように」などさまざま。

中でも「青い星まで飛んでいけ」は秀逸。
自己進化、自己修復再生機能を持つAI搭載の宇宙船群エクスが地球外生命体との接触を繰り返す。
主観が人工知能、そして舞台が宇宙と言うことでスケールが大きく作中の時間単位が、一行で数百年だの数千年だの数万年だの。
数百数千光年の星から星へと旅をしてさまざまな知性体と接触を繰り返すお話なのでスケーリングが全く違う。
主人公エクスにしろ、工場担当の下位プローブを浮かべた直径百キロの空間を占める2,000隻のハードとソフトの宇宙船群のを代表している集合意識からの主観として描かれる。
とはいえ実に人間的、と言うか人間的な性質を与えられているAIなので作中では、人間同等ですが。
解りやすく言えば破壊的でない「自己進化」「自己再生」「自己増殖」デビルガンダムの群れとでも言いますか。

そんな宇宙船群が、遥か昔に滅びたかもしれない人間に作られ、AIの奥底に刻み込まれた「他惑星の知性体と接触しろ」という命令のままに動くのは、まるで遺伝子(セルフィッシュジーン)に仕込まれた指示通りに動かざるを得ない人間のようにも思える。
複雑なAIは、まるで人間のように自己の感情や感覚に疑問を持ち、そして気づき進む。
設定上AI、宇宙船ってだけで中身は、人間的な成長物語になってる。

さすが小川一水。
短編も面白い。