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ラノベ風SF? 小林泰三「天獄と地国」

SF 読書

天獄と地国

頭上に地面、足下に星空が広がる世界。人々は僅かな資源を分け合い村に暮らしていた。村に住めない者たちは「空賊」となり村々から資源を掠め取るか、空賊の取りこぼしを目当てに彷徨う「落穂拾い」になるしかない。世界の果てにもっと人間の暮らしやすい別天地があると確信した、落穂拾い四人組のリーダー・カムロギは、多くの敵と生き残りを賭けた戦いを繰り返し、楽園をめざす旅を続ける―。傑作短篇の長篇化完全版。

天地が逆転した世界のお話。
そもそもそんな環境で(農作物すらどうやって育てるんだ)どうやって技術を手に入れるほど発展できたのかとか考えないのか?、などいろいろツッコミどころは多いけれど、舞台設定のアイデアの勝利と言うか、天地が逆転しいつでもどこでも鉄骨渡りゲームみたいな状況で行われる争い。

主人公らは風呂にも満足に入ってない「落ち穂拾い」(空賊が村を襲ったあとを漁る)で、なにやらオーパーツ、と言うか謎の兵器を発見する。
これがもしコテコテのスニーカーとか富士見ファンタジア辺りのラノベジュブナイル)だとすると武半慎吾辺りがデザインした巨大人型兵器だったりするだろうけど、”玩具修理者”小林泰三だからなのかどうかは知らないけれど見つけるのは、触手をウニョウニョさせた歪な進撃の巨人で、操作系も全天型スクリーンなどではなく肉が肛門など穴と言う穴から侵入してパイロットの神経系と直接結び付くグロテスクな思考操作系になってて美化がしづらい。

ディテールを除いてお話だけを抽出すれば

古代兵器発見→他の古代兵器と戦う(戦闘、知略)→世界の謎に迫る→古代兵器での戦闘→そして……

と言った風で、これが美少年美少女とカッコいい機動兵器に変えたりすれば即ラノベと言って問題がなさそうな構造をしてる。
それが言いきれないのは、概ねディテールが「肛門」「汚物」「不気味」などのディテール。
だとすればラノベかそうでないかの差は「美」ということになるが、確かにラノベで現実の人間の生物らしい「臭さ」「不潔」「汚物」などと言うディテールが排除されていて、生活感があまりないものが多いかもしれない。

あまり固いSFはちょっと……という読者にも読みやすいエンタメな一作。