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映画「エリジウム」を見て考える強化外骨格

映画 小ネタ

※少々濃い目
※三連休明けなので思うままに書いており思考が散在しております。ご了承ください

エリジウム [Blu-ray]

第9地区』のニール・ブロムカンプ監督が放つSFアクション。2154年、世界は人造スペースコロニーに住む富裕層と、荒廃した地球に住む貧困層とに二分化。余命宣告をされたマックスは「エリジウム」への進入を試みる。

ツッコミどころ満載で、幾らなんでもエリジウムの防空だのセキュア甘すぎだろとか、大気圏離脱がものすごくお手軽だったり、エリジウムに向かって破片が突っ込んで行ってますけどデブリ対策の装甲が凄すぎとか、指揮系統どないなっとんねんとか、独りのエゴでコロニーの管理システム全体を書きかえられる杜撰な設計したアーキテクチャ呼んで来いとか、システム書き変えただけで思想そのものが変わったわけではないよね、などいろいろ。
さんざ感想は書かれてると思うので、ここでは作中の強化外骨格についてつらつらと。

映画の「強化外骨格」


人間のちからを機械によって増幅する強化外骨格。
マット・デイモンに取り付けられた強化外骨格は面白いんだけれど、海外の映画で外骨格が登場する際は、人物の顔が出る構造が多く過去にも「エイリアン2」のシガニー・ウィ―バーがエイリアン・クイーンと闘ったときのパワーローダー、「オール・ユー・ニード・イズ・キル」の機動スーツなどにも見られる。
役者の補助としての機械の骨格。

特撮リボルテック SERIES No.037 機動歩兵
ロバート・A・ハインライン「宇宙の戦士」のパワードスーツが、機動戦士ガンダムに始まるロボット=兵器の源流、と言われてますが、アップルシードに出てくるようなランドメイドタイプの「身体を動かせばその通りに動く」機動甲冑のような操作方法、ディテールのモノは少ない。

「顔が塞がれていて内側がモニターになっている」
と言うものは映画として画的に役者の顔が出ないので映画に少ないのは理解できる。
文法として、日本なら人の顔がなく機械の姿にアフレコしても(中に搭乗してるんだな、と)視聴者は納得するし、アニメは機械の動作で演技ができるんだけれど(日本人はロボアニメで調教済み)、海外だとまず文法を定義するところからなのでその分を端折るには役者の顔が出てる方が当然やりやすい。
そこで搭乗者の顔が出ている、あるいはコクピットがガラスになっている、と言うものが演出として容易い。
S.H.フィギュアーツ アイアンマン マーク42
稀有な例は「アイアンマン」のようにそのスーツ自体がヒーローと認識されているもの(ヒーローはマスクを被り身分を隠すので役者の顔が出なくても問題ない)などが挙げられる。
近年で見ると「パシフィックリム」の、あの巨大なイェーガーを動かす仕組みは副座式のGガンダム的な操作方法だが、あの場合、役者の動き=イェーガーの動きなので観客がイェーガーの動作と搭乗員の動作を結び付けて観やすくなっている。

とはいえ残念ながら死角が大きいのが気になるが。

あれだけ死角があるとかなり不備がありそうだけれど相手が巨大なKAIJUだから許されるのかもしれない。
ギャプランは、全天周囲モニターの下方に死角があったためにZに負けたわけですけれども、KAIJUは真下からは来ないから。


少し余談ですがエリジウムに登場するロボットがマット・デイモンに首を千切られて機能停止する。
コントロール系統が頭にあるからこそちぎられ機能停止したわけですが、今の日本の多くの作品だと頭は単にカメラアイでしかなくてコクピットなど操作系の中枢は胴体部にあることが多い。搭乗する構造であれコクピットを設置にするなら頭部よりも胸部の方がスペースを取れる(頭部に操作系がある場合、マジンガーZのように機体が巨大化せざるを得ない)。
頭部は、宇宙戦艦ヤマト第三艦橋みたいに突き出していて銃撃であれ格闘であれやられやすいわけですから、警備や暴動鎮圧などに使うロボットであれば設計として装甲を厚くして、AIを守りやすい胸部などにおく方が現実的。
もっというなら操作系はリモートにすれば制御系の演算などは外部に任せられるのでかなり負担が減る。
と言うのは、あくまで観ながら考えた余談……。

映画の「リアリティ」


エリジウムの強化外骨格は、被爆したマット・デイモンの脳神経系統にコントロール系統を直接埋めこむことで思考コントロールを可能にしているが、むき出しの配線やパイプなど非常に危なく、言ってしまえば日常動作としてドアに後頭部の配線が引っ掛かって、つい引っ張ってしまえばそれで死んでしまいかねないという杜撰さで、しかもパイプが向きだしなので衣服などを巻き込んだらどーすんだろうか?などなどいろんなおせっかいを考えてしまう(大リーグ養成ギブスのバネに肉を挟むんじゃないか的な)。
せめて配線周りは何とかしてほしいけれども……。
それまで被爆して余命五日で、ゲーゲーやってたのに、外骨格を付けた途端にそれなりに血色が戻って動けるのはなんか微妙な話ではある(あの辺で被爆の設定がちょっと跳んでる)。よほど貰った薬が効いたんだか、ドラッグでもフィードバックしてるのか。

まず風呂には入れないし、トイレの時にデニムを下すのが一苦労しそうな格好ではある。
横向きに寝ようにもパイプが邪魔だし、それこそいろいろ挟みそうだし、寝返りも打てなさそう。
とはいえ、余命五日だからいいのかもしれない。

映画におけるリアリティと言うのは「現実に即した技術」ではなくて「いかにツッコミどころがないか」であって、現実的に不可能な技術だろうが「それが実現できている世界」が舞台なので映画内の空想科学的な超越した技術自体は問題はない。しかし「パイプとか配線むき出しだと危ない」「外骨格を動かす燃料はなんだろう」というのは技術的な問題ではなく実際運用的側面で、それが映画における「リアリティ」。

まとめ

外骨格を大分するとフレーム状の強化外骨格(エリジウムエイリアン2)、装甲系(アイアンマン、アップルシードのランドメイド、機甲創世記モスピーダのアーマーバイク、メガゾーン23ガーランド)があり、体長数メートル級のリアルロボット系(ダグラムボトムズ)に体長数十メートルの巨大ロボ系(ガンダム、パシフィックリム等)など大きさが等身大から数十メートルまで幅広い。
クラタスはリアルロボット系、MK3は今のところ強化外骨格ですかね。

押井 だから今回の実写版は本当の意味での原点回帰なんだよ。二足歩行の巨大ロボットなんて、それぐらい使えないものなんだ、誰がこんなもん作ったんだ、ってところから話を始めようぜって。

――そういえばエピソード0でも整備班・班長、シバシゲオがレイバーのダメさを語っていました。

押井 だってロボットって無人であるべきなのに、人が乗ったら意味ないだろ!って(笑)。本当は顔も足も必要ないんだけどさ。でも日本人はデカいロボットに人が乗って戦うってのが好きだからね。そんなミステイクを警視庁が大まじめにやってしまったというのが劇中の背景にある物語なんだよ。ここから始めないとリアルは一切出てこないと思ったから。

――けど、けど……、ロボットが嫌いな男のコなんていませんよ!

押井 本当言うと僕も好きなんだよ(笑)。二足歩行ロボットが得物をぶら下げてガチャガチャ歩くなんて男ならみんな好きでしょ。

http://wpb.shueisha.co.jp/2014/04/13/28882/

映画にしろアニメにしろ、どれだけウソをついてそれに説得力を持たせられるかなので、そこに「イェーガーの自重だと足関節の負担がハンパねーし、地面が液状化すんじゃね?」「KAIJUと闘うにしろあんなダイダロスアタックみたいな殴りつける感じにするなら人腕を模すよりも思いっきり兵器にしといたほうが……」などとツッコミを入れるのは野暮なわけですけれども、現実的にはMSVのザクタンクみたいな構造がリアリティがあるだとかそーいう思考はさておき、だからマット・デイモンが外骨格つけたままのベッドの寝心地とかトイレの心配などせずに映画を観るのが正しい。
ただロボ好き的には幾らジャンクの外骨格であろうがそれなりのディテールとリアリティ欲しかったな、と言うのが感じるところ。
マット・デイモンはツルツルだからいいけど、ヒロイン(?)の髪の毛が外骨格のパイプに挟まったら大変……。


貧富の差とモラトリアム。
幾ら歪であれ、たったひとつのテロで社会のパラダイムが書き変わってしまうような未来なら、それはそれで危うい。
いろいろ気にせずに観ないとついつい余計なことを考えてしまいがちな映画でした。
クラタス スターターキット