小川一水「天涯の砦」

天涯の砦

地球と月を中継する軌道ステーション“望天”で起こった破滅的な大事故。虚空へと吹き飛ばされた残骸と月往還船“わかたけ”からなる構造体は、真空に晒された無数の死体とともに漂流を開始する。だが、隔離されたわずかな気密区画には数人の生存者がいた。空気ダクトによる声だけの接触を通して生存への道を探る彼らであったが、やがて構造体は大気圏内への突入軌道にあることが判明する…。真空という敵との絶望的な闘いの果てに、“天涯の砦”を待ち受けているものとは?期待の俊英が満を持して放つ極限の人間ドラマ。

衛星軌道上の宇宙ステーション“望天”が舞台のディザスター(災害)作品。
前半はいわゆるディザスターの定番としてひとりひとりバラバラの登場人物が紹介されていく。
航宙士、宇宙に来た女性、月から地球へ帰ろうとする医師、お金持ちのお嬢様と取り巻き、心を開かない青年、農家を営む夫婦と幼い兄妹、パイロット、そして謎の男。

やがて軌道ステーションで事故が発生。
それぞれ生き残った人間が動き始める。
絶望的な状況の中、協力し合い、それぞれに事情を抱え、それぞれの思惑で生き残ろうとあがく。

たとえば映画「ポセイドンアドベンチャー」あたりだと障害は炎だったり、浸水とか、あとガスが発生してたりして、生存者の行く手を阻むわけですが、この“望天”の場合、場所が衛星軌道上なので当然壁一枚隔てた外は真空なので穴一つ空いていても空気が漏れ出し、外に出るわけにもいかない。
無重力で遅れれば遅れるほど状況が変化していくし、地球上ではありえないようなことも起きる。

しかも衛星軌道だから地球の重力も近くて引き寄せられれば真っ逆さまに大気圏突入。
だからと言って離れてしまえばダークマターの遥か彼方。
ややこしい人ばっかり生き残ってるもんだから、どっからか人間ドラマと言うか人と人とのめんどくさい感じも出てくる。
謎の男もいる。

特殊な状況の災害の中、普通の人たちが普通に生き残ろうと努力するエンターテイメント長編作品。