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小川一水「第六惑星(上/下)」

読書

第六大陸1
第六大陸2

西暦2025年。
サハラ、南極、ヒマラヤ―極限環境下での建設事業で、類例のない実績を誇る御鳥羽総合建設は、新たな計画を受注した。依頼主は巨大レジャー企業会長・桃園寺閃之助、工期は10年、予算1500億、そして建設地は月。機動建設部の青峰は、桃園寺の孫娘・妙を伴い、月面の中国基地へ現場調査に赴く。だが彼が目にしたのは、想像を絶する苛酷な環境だった―民間企業による月面開発計画「第六大陸」全2巻着工

SFにはよく「月面基地」が登場する。
地球に一番近い衛星。
近い、とはいえ片道38万キロ程度あって、地球の重力もあって気軽いほいほい行ける場所ではない。
SFでは、既に基地があるものとして描かれているのだけれど、しかしあの基地をどうやって作ったのか、どれほどの工程や作業を伴ったか、は多くが描かれない。
軌道エレベーターがあるような未来の技術に(打ち上げなどのコストがかからない)立脚しているから容易なのかもしれないけれども。
この「第六大陸」では、近未来を舞台にし民間企業による10年計画の月面開発を描く。






ロケット一発数十億と言う単価の事業をいかにやりくりしていくか、という資金や技術との折り合い。
これまでにない月面開拓と言う新規事業は難題が当然山積み。
さまざまな妨害、事故や事件が起き、しかしそんな苦労を前にひたすら前に進み続ける。

新技術や既存の宇宙開発の先駆者らと協力しながら、月面に基地を造るという夢を推し進める主人公ら。
テレビやネットと言うものがあるから「今の地球の大気のさらに周囲には真空の宇宙があって」など知識ではわかっていても、実際に宇宙に出た人間も月に行った人間も数えるほどしかいない。
SFとは「月に行く」などという夢のような空想に科学に立脚した橋をかける物語。
現実にはそんな金を使うなら福祉を何とかしろ、道路を直せ、保険はどうした、年金は大丈夫か、と言われてしまうわけで、だから作中も日本政府ではなく民間企業が新技術の販売や宇宙旅行や探査などの名目などでそれなりに利益を見込みつつ開発を進める。考証も無く何でもかんでも上手く行くなんて話を書いてしまえばそれはSFじゃなくてファンタジーの世界。

地に足のついた近未来SF。
とはいえ終盤には、ちょっとしたSFチックな夢も入っていてその辺りもいい感じ。