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天才お姉さまTUEEEEEな創元SF短編賞受賞作 高島 雄哉「ランドスケープと夏の定理」

ランドスケープと夏の定理 -Sogen SF Short Story Prize Edition- (創元SF短編賞受賞作)ランドスケープと夏の定理 -Sogen SF Short Story Prize Edition- (創元SF短編賞受賞作)
高島 雄哉

東京創元社 2014-08-12
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天才科学者である気の強い姉に、なにかにつけて振りまわされる「ぼく」。大学4年生だった夏に日本でおこなわれた「あの実験」から3年、「ぼく」はまたしても姉に呼び出された。向かった先は宇宙空間――ラグランジュポイントL2に浮かぶ国際研究施設。姉はそこで、宇宙論に関するある途轍もない実験を準備していた……。ゲスト選考委員・瀬名秀明が「(日本SFの歴史を)次の50年に受け渡す傑作」と驚嘆した、新時代の理論派ハードSF。応募総数461作から大森望日下三蔵瀬名秀明が選出した、第5回創元SF短編賞受賞作(門田充宏「風牙」と同時受賞)。

創元SF短編賞を受賞した高島 雄哉「ランドスケープと夏の定理」を読んだ。
なかなかにハードSFな設定で、主人公の姉は量子ゼノン効果を利用し、脳から神経パルスを切り離し遠くへ送り込むという研究をしてる、などと描くと頭に「?」が三つは並びそうになる。







たとえば1光年は約9.5兆キロメートル。
もし人間がその距離を移動しようとするなら秒速15キロで2万年近くかかるらしい。

人間の脳を走る電気信号のパルスとそこで生まれるノイズが意識だとして、その電気信号だけを脳から取り出したとする。
もしその電気信号だけを乗せて宇宙船なり何なりで打ちだすことができれば、物理的拘束なしに遥か彼方の1光年や2光年へ研究するための意識だけを送り込むことができる。
意識を切り離した人間の身体……器は、すぐに死にはしない。
機械から電気信号を取り出してもまた新たに信号を発するので取り出す、と言うより意識を複製する、の方がニュアンスは近い。
ただし脳が動き出せば切り離された意識と脳が生み出す意識とに差が産まれてしまう(作中では「魂」と呼んでいる)。そうすると切り離した意識を再び元のように繋ぎ合せるのが難しくなる。そこで量子ゼノン効果により脳の動きと切り離された意識を同期させ……といった話で詳しい訂正や理屈は本編でどうぞ。


……ともかく、ざっくり説明すると、そういうなんかすごーい研究をしている超絶天才のハルヒ的なスタンスのお姉さまが、ラグランジュポイントの宇宙ステーションにいて、これも普通っぽい感じを装いつつ天才な弟が会いに行って、姉のマイペースな実験に巻き込まれ……といったお話。
脳内cvは、勝手に杉田智和平野綾で再現(ウアスラは茅原実里)。

説明しようとするとややこしいが、読んでいる間はややこしい印象は特になく、文系でもスルスル読めるのは、理屈や理論に関する説明が丁寧で解釈しやすいからかもしれない。
SFに関しての良し/悪しという判断基準は、その奇想にあると思っているのだけど、奇想と言う意味では意識だけを切り離したり(飛浩隆作品でもそういう設定ありましたが)、隕石をパカッと開くと中からxxxxxとか、更には切り離された自己と自己が……など書いて行くとネタバレになってしまうのでとりまこんな感じで発想が面白い。

そして姉が最強すぎw
姉TUEEEEEEですよ、肉体的にじゃなく天才的に(GENIUSUUUUU)。
真賀田四季を超えた天才物理系姉。
天才すぎてポストヒューマンなテクノロジカルシンギュラリティ状態(何を言いたいのか自分でもわからないがこんな雰囲気)。

なぜか火浦功氏のみのりちゃんシリーズ思い出した。
つまり理屈はきちんとしてるんだけど行動はマッドサイエンティ...。


なかなか面白かった。
デビューの短編で、このクオリティ。
100円で読めるしボリュームもある。

長編書いたらどーなるんだろ。
どっかの大賞作は、残念な感じでしたが(えーと、アリスのm...忘れたなー)。
このシリーズで連作短編ってのはどうでしょうかね。


次回は、もうひとつの受賞作も読んでみようか。
表紙だけだと「銀牙 -流れ星 銀-」っぽいけども。

風牙 -Sogen SF Short Story Prize Edition- (創元SF短編賞受賞作)風牙 -Sogen SF Short Story Prize Edition- (創元SF短編賞受賞作)
門田 充宏

東京創元社 2014-06-27
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