暴力&暴力&暴力「アウトレイジビヨンド」


『アウトレイジ ビヨンド』5分特別映像 - YouTube

北野武について以前に押井守が、

たけしの映画からは怒りとかそういうものをいっさい感じないし、むしろ虚無的だよね。
あの呆気なさというか、情もなければ怒りもない。
人間の生の暴力っていうか。「ソナチネ」だったかな?
エレベーターのなかでボカンボカンというのがあったけど「すげえな」と思ったもん。
ああいうのはやっぱり日本映画の系譜には全然ないよね。
ペキンパーとも違うと思う。ペキンパーの場合はもっと情緒みたいなのが出るからね。
暴力そのものに悲しさみたいなのが出てくるけど、たけしにはないもん。ずっと虚無的なまんま。
なんか風景のようにというか、みんな日常行為と同じように撮ってるというかさ。もちろん明らかに意識的にやってる。あえてロングで撮ったりとかね。あるいはワンショット入ったりとかね。すごく「風景」なんだよね。

勝つために戦え!監督篇/押井守

と話していて、この暴力すら「風景」として扱うと言う感覚が、このアウトレイジビヨンドにはよく出ている気がする。







過剰なまでに容赦のない暴力の描写。
既存のヤクザ映画よりもよほど淡々と命が失われていくさまは、まるで戦争映画で主人公の背後で撃たれて死んでいく兵隊のようにバンバン死んでいくただのモブのよう。そこに血肉がない。
ストーリーとしては非常に単純な、組同士の抗争をやってるに過ぎない。
松田優作の作品にあるような死の美学と言うか、そういうものが感じられた気がした。

北野武:日本のヤクザ映画の流れは、(高倉)健さんとか鶴田(浩二)さんとかの任侠映画がまず全盛時にあって、今度は深作(欣二)さんの『仁義なき』シリーズがある。それから、ちょっと逸れてVシネもあるんだけど、ヤクザ映画の流れは深作さんで止まってたと思うよね。進化のグラフがあるとしたら、深作さん以降、Vシネで右に反れたラインをね、真っすぐこう持ってくると世界観は『アウトレイジ ビヨンド』で描かれているものになると思うんだよね。任侠、深作、『アウトレイジ』のラインだと思うよ。

OUTSIDE IN TOKYO / 北野武『アウトレイジ ビヨンド』インタヴュー

任侠映画が「義理と人情」を描き、それを東映ヤクザ映画で深作欣二が「暴力」としてギャング的な近代ヤクザ象を描いた実録路線。
そこから「北陸代理戦争」以降のVシネマで、近代ヤクザとそこで生きる女の世界が描かれた。

アウトレイジビヨンドには女性がほぼ出てこない。
幹部の情婦など脇役が多少出てくるくらいで、他は全部男男男。
かつてのヤクザ映画ではジェンダーにうるさい人が見るとヒステリー起こしそうな男尊女卑が行われてたわけですが、今作では女性の存在が云々以前に出てこない。

ひたすら描かれる男の世界は、たしかに深作に続くのかもしれない。
ヤクザが殺し合い、殺されたら殺し返す。
拳銃ではじいて、電動ドリルを突き刺し、ナイフで腹をえぐる。

深い意味だとか教訓だとか考えさせないくらいに淡々と純化した暴力描写がひたすら車窓を流れる風景のように連鎖し、ただただ続いて行く。
誰もが主人公である群像劇。
ロングショット(遠景)を多用する画面によって抑えられた熱量の中、マシンガンのようにがなりたてる激しいヤクザの言葉の応酬とそこそこに転がる死体の山で描かれる淡々とした価値の無い死のギャップ、どれだけ偉そうにがなりたて脅しつけても銃弾数発で死体として転がる。
そして大友が心の奥に秘めた怒り狂う激情が最後の最後で爆発する。
安全地帯から手を汚さず、任侠や仁義の外の世界から糸を引く「黒幕」に対しての怒り。
血で血を洗う抗争は、やられれば怒りを持ち報復し、やられた方はまた怒りを持って報復する...その繰り返しだが、今作では大友が黒幕に向けて引き金を引くことで、この報復の循環が幕を閉じる。


とても面白かった。
その男、凶暴につき」「3-4X10月」と並んで好きかも知れない。
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