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怒涛の超絶銃撃戦 映画「ドラッグ・ウォー / 毒戦」

映画

ドラッグ・ウォー / 毒戦 [DVD]

香港の巨匠、ジョニー・トー監督によるサスペンスアクション。爆発事故があったコカイン製造工場から逃亡した男が、衝突事故を起こして病院に担ぎ込まれた。中国公安警察の麻薬捜査官・ジャン警部は、男に捜査協力を要請し、潜入捜査を開始する。

ジョニー・トーと言えば「エレクション」という香港版「仁義なき戦い」のような血で血を洗う抗争劇を描かせれば右に出るものがいない名監督。
今作でもその香港ノワール&アクションの魅力がふんだんに発揮されている。







緊迫感ある展開と怒涛の終盤

中国公安警察の捜査官ジャン警部が、ラリって事故を起こした男を捕まえ、その男の背後に巨大な麻薬の取引があるのを感づく。
そこでジャン警部は麻薬の取引に紛れ込み、自身が麻薬組織の一員であるように演じ、組織を追いつめていく。

こうやってあらすじだけだと
「なんかありがちな話だな 笑」
「香港のこーいうのってハリウッドより安いし面白くないんじゃね?」
と思われてしまいがち。

序盤~中盤は潜入&おとり捜査がメインであまり派手なアクションもない。
ただ本当に先が読めない。
どうなっていくか見当がつかない、敵の姿が見えづらい。
刑事が敵にバレないかどうか、ドキドキしながら見ることになる。

刑事キャラに生活感が全くないのも面白い。
普通の映画だと刑事の人間らしさ(家族を出してみせる、酒を飲む、私語)とかを描写するもんですが、あえて削ってる。
その逆に犯人側は、人間性を描いてる(ラリる、家族、酒を飲む)のは、中国公安警察っていうものを
「そーいう人間性など感じさせない組織」
だということを強調したいのかもしれない。

日本だとこう言うものでも、それっぽいいまどきのイケメン俳優を主演に据えて出したりとかするんでしょうが……しょーもない。
この作品は、主人公のジャン警部が、いかついオッサンってところがとても良い。
叩き上げの中国公安警察って雰囲気がある。

ガンアクション最新形態

ところが終盤、とる事件をきっかけに一気にアクションへと突入。
すさまじく無情な銃撃戦はとても無慈悲。
この銃撃戦のためにあえて前半を地味に積み上げてきたのかも知れない。

香港の警察がどんな風になってるのかよくわからないんだけれども、応援の警官隊だとか特殊部隊だとか、そういうものが来ないで麻薬捜査専従の中国公安警察孤軍奮闘で睡眠時間を削り、ほぼ不眠不休で組織を追ってるもんだからみんなボロボロ……どうも人手不足っぽい。
そしてフラッフラの状態。

そんなところで、いろいろ積み上げてきたものが一気に瓦解。
西部劇を思わせる大混戦に突入。
敵味方入り乱れ、銃弾が貫き、車は突っ込み人をはねて轢き殺す。
戦車戦みたく車のトランクを開けそこに乗っかり銃を撃ちながら銃を撃ちまくる相手に突っ込んで行くとか(トランクのパネルを盾にして)かなりの自殺行為。

普通の映画だと、銃撃戦のさなか、巻き込まれた子供の命が最優先で刑事が命を貼って子供を助ける、とか言う描写があったりするもんですが、中国公安警察、その辺一切気にしないで銃をガンガン撃ちまくってる。
いちいち動きがキレっキレで格好いい。
終盤一気にたたみかけるカタルシスの大波。
 

裏切り、皮肉、毒と毒

そして済んだ後のドライな空虚感。
敵味方に一瞬垣間見えた情と言うか信頼のようなもの。
それが転じ、尊敬や崇拝や信頼が一気に反転。
騙し騙され、抜け駆けし、自分が生き残ろうとあがき始める。
そしてニヒリズム横溢するエンディング、と全く隙がない。

エンドロールが流れ、大きくため息ついて
「いやー、すごかったー」
「さすがジョニー・トー!」

と言いたくなる。

銃撃戦、ガンアクションと言うのはもう大概やりつくしていて目新しいものもない。
マンネリだからこそ、どのように見せるか、どう裏切るかと言うのはとても難しい。
あえて開けた場所で、映画っぽいお約束や、キャラクターへの感情移入だとかそっちのけで、命知らずの連中が敵味方入り乱れ、撃たれること構わず撃ち返す西部劇のような長尺のガンアクションシーンは素晴らしいし、最後の最後の展開もさすが。


毒(中国公安警察)をもって毒(ドラッグ)を制す。

ドラッグ(毒)で儲け毒で死ぬ、なんてのも皮肉。
だからこそ最後の銃撃で○○ったんだろう。

さすがジョニー・トー
面白かった。満足満足。
間違いなく必見級の一作。

映画『ドラッグ・ウォー 毒戦』予告編 - YouTube