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「ミステリが売れないならラノベっぽい表紙にすればいいじゃない」はいつ頃からか

この前、
出版不況で売れないのならラノベっぽい表紙にすればいいじゃない - あざなえるなわのごとし
こう言う記事を書いておりました。
年中こんなことばかり書いてる気がする......。


エラリー・クイーンのラノベ風表紙にビックリ - maze713's blog

で、上記maze713さん記事での

もともと、日本でも一番はじめにラノベ風表紙がつきはじめたのは、本格ミステリなんじゃないだろうか?メフィスト賞作家たち。

と言うことなんですが、こればっかりは微妙かも知れない。
(海外ではわからないですが)

ということでミステリとラノベ(ジュブナイル)と表紙のお話を少し掘り下げてみたい。




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子供xミステリ

過去を振り返ってみれば、江戸川乱歩の書いた「少年探偵団」や「怪人二十面相」と言ったミステリ作品は、少年少女向け...今でいうラノベ、昔で言うジュブナイルと言うジャンルだったわけです。
「少年倶楽部」に連載をしていた子供向け小説だから当然。
絵柄も当然ながら
怪人二十面相―少年探偵 (ポプラ文庫クラシック)
海底の魔術師―少年探偵 (ポプラ文庫クラシック)
これじゃない感のポセイドンが……。

こういうハードカバーの少年向け小説が、小学校の図書館とかに置いてあった。
乱歩とはいえ、倒錯エロな「屋根裏の散歩者」「芋虫」とかとは違う。
海野十三、高木彬光らの少年向け小説などもあった。
↓こちらに詳しい
少年物の部屋


ドイルにしろ「毒ガス帯」「失われた世界」などのSFも書いてたし、大人向けと言うよりも子供向けの性質があったかもしれない。
失われた世界―チャレンジャー教授シリーズ (創元SF文庫)
(書影小さっ!)

「江戸川乱歩推理文庫」として表紙絵を天野喜孝が書いたものが刊行されたことがある。
二銭銅貨 (江戸川乱歩推理文庫)
もう今は古本屋でもあまり見かけませんが、全66巻刊行(確か20冊くらい買って諦めた……)。

天野の場合はソノラマの「吸血鬼ハンターD」「幻獣少年キマイラ」などに代表されるラノベの表紙画を多く手掛けてる。
元々、天野氏はタツノコプロダクション。
天狼星
”ミステリ作家”栗本薫の「天狼星」も天野画でしたっけね。
とても懐かしい。


かつて「ラノベ」と言うジャンルは無くて「ジュブナイル小説」などと呼ばれてた。
初期の朝日ソノラマ文庫や富士見ファンタジア、スニーカー文庫の時代。
やがて新本格の台頭と同時にジュブナイル→ラノベに変化し、盛り上がりを見せる。

江戸川乱歩やドイルを子供が読む。

名探偵ホームズ OP [STEREO] - YouTube
特に宮崎駿がホームズを犬で描いたりした日本では「ミステリ=子供向け」というのはそれほど違和感があるものではない。
まっちにながれてる~♪

日本でのミステリと子供向け小説と言うのは、乱歩の時代から既に親和性が高いものだった。
今でも「名探偵コナン」に「金田一少年の事件簿」「名探偵マーニー」とか。
時折、パタリロが探偵になる話も結構好きですが。

海外では少ないですかね。
「ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎」とかありましたが。


「ミステリにラノベ風表紙」と言う意味で言うなら、上記のような天野画をラノベ風と取るかそれとも一般向けと取るか、によっても異なるかもしれない。
それに他にもいろいろとですね……以下に続きますが。

マンガ家xミステリ

マンガ家が表紙を書いてるミステリが多いのも日本の特色かもしれない。
海外ではペイパーバック主体ですし文化が異なるので。


北村薫「空飛ぶ馬」の表紙は、
空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)
高野文子が書いてる。

倉知淳の「猫丸先輩」シリーズの表紙は唐沢なをき。
猫丸先輩の推測 (講談社ノベルス)

我孫子武丸「特捜班」シリーズはミステリマニアの喜国。
特捜班危機一髪~警視庁特捜班ドットジェイピー~

西澤「笑う怪獣」も同じく。
笑う怪獣―ミステリ劇場


若竹七海の作品は、イラストレーター 杉田比呂美のものが多い。
ヴィラ・マグノリアの殺人 (葉崎市シリーズ1/光文社文庫)

マイクル・Z. リューイン「A型の女」が有名な探偵アルバート・サムスンシリーズも杉田比呂美画。
A型の女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ちょっと地味な主人公を上手く表現してる。
元はこれ↓
Ask the Right Question
印象が全然違う。


西澤保彦「神麻嗣子シリーズ」は、超能力を使った事件をロジックで解決すると言う一風変わったミステリ。
水玉螢之丞。
幻惑密室―神麻嗣子の超能力事件簿 (講談社文庫)

同じく西澤「神のロジック 人間(ひと)のマジック」は、なぜか銀河英雄伝説でお馴染み加藤直之御大。
神のロジック 人間(ひと)のマジック (文春文庫)
中身と表紙の乖離がパねぇ。

2010年に出た山田風太郎「青春探偵団」の表紙は黒田硫黄氏。
青春探偵団 (ポプラ文庫ピュアフル)


竹本健治「キララ、探偵す。」が書店に並んだ時は驚きましたわ。
「た、た、竹本健治の新作がメイド?!」って。
キララ、探偵す。

同じく竹本健治氏が書いたマンガ「入神」
入神
小説では、推理を披露する天才棋士 牧場智久のスピンオフ作品。

まとめ

新本格ミステリは盛り上がりを見せた。
メフィスト賞でアニメ的、マンガ的な多くの作品が見出され「ファウスト」でその動きが本格化する。

2002年には、角川スニーカー文庫から<スニーカー・ミステリ倶楽部>が刊行されるもすぐに終了。
しかしのちに米澤穂信「氷菓」「愚者のエンドロール」はアニメ化によって注目されることになるわけですが。

富士見ファンタジア文庫では、新城カズマ氏が「蓬莱学園」シリーズ(米澤穂信が「蓬莱学園の犯罪!」を影響を受けた100冊に挙げているのは一部で有名)。
富士見ミステリー文庫(2000~2009)より「浪漫探偵・朱月宵三郎」
浪漫探偵・朱月宵三郎 屍天使学院は水没せり (富士見ミステリー文庫)
そしてスーパーダッシュ文庫より名作「15x24」を刊行する。

ちなみに富士見ミステリー文庫と言えば、桜庭一樹「GOSICK」「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」が一番のヒットでしょうか。
【富士見ミステリー文庫版】
GOSICK―ゴシック (富士見ミステリー文庫)

【富士見ミステリー文庫版】
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)

【角川文庫版】
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない  A Lollypop or A Bullet (角川文庫)



講談社から発売された「魔界探偵 越前魔太郎シリーズ」は、覆面作家越前魔太郎名義で乙一や入間人間、秋田禎信、新城カズマ、そして舞城王太郎 などが書いている連作。
魔界探偵 冥王星O デッドドールのダブルD (講談社ノベルス)
こちらもミステリxラノベを語る上では欠かせない。


ミステリxラノベの目論見はさまざま行われ、結果ミステリからラノベの要素などを取り入れた作品は多く残り、反対にラノベのレーベルからミステリ寄りのものを出すとポシャるという法則があるらしい。
こういう歴史を振り返ってもミステリがラノベっぽい(アニメ・漫画な)表紙を(海外作品であれ)付ける流れ、と言うのは実は自然なことだったりする。

表紙によって普段手に取らないひとが取ってくれるかも知れないし他社と同じでは差別化がない。
昔っぽい表紙でいいなら早川とか創元でいいわけです。
最近ではその流れがさまざまな作品で起こっているらしい、と(それは以前の記事で書いた)。

【ハヤカワ版】
ローマ帽子の秘密

【東京創元版・旧】
ローマ帽子の謎 (創元推理文庫 104-5)
↓↓↓
【東京創元版・新】
ローマ帽子の謎【新訳版】 (創元推理文庫)

【カドカワ版】
ローマ帽子の秘密 (角川文庫)

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