「ガンダムが難しくてよくわからない」と言う話

先日、某女性と話していて
「ガンダムが難しくてよくわからない」
と言う話になった。
詳しく何が解らないのかを聞いてみると、アァなるほど、と。
※雑感小ネタ




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ジャーゴン


富野由悠季が総監督!『ガンダム Gのレコンギスタ 特別先行版』予告編 - YouTube

先日、深夜にレコンギスタが放送開始された。
観ていると軌道エレベーターらしきものが上昇していき、その団子状のユニットの中に主人公ベルリらがいて、宇宙海賊の攻撃を受ける。
そこで登場するのがG-セルフ。
ベルリらはレクテン(作業用)MSを操り、軌道エレベーターのケーブルを盾にし戦うG-セルフを拿捕する。

一切コンテクストが解らないひとが観ると、

ん?何?お団子?ワイヤーで宇宙?地球?ん?ん?
海賊?何それ?
ん?ガンダムあれ?なんで海賊?
で、誰が誰でどう観ればいいのこれ??
主人公じゃないの?女の子なの?
「クラウンに戻れ!MMFフィールドを外れたら地球に引っ張られる!」
ほへ?クラウン?MMFフィールド??
ミノフスキー粒子?軌道エレベーター??
……理解不能。

となるらしい。
こーいうジャーゴンなセリフがバンバン登場する作品の見方は、前のめりでディテールから世界観を読み解こうとし、解らないワードは保留、ワードが何度か使われることでその意味が解る(説明セリフが少ない場合)だろうが、そういう見方を出来ないひとにとってみれば、説明のない用語が出まくり、誰が正しいか誰が間違っているかの立ち位置も曖昧なまま感情移入も出来ずに戦闘が始まって、ディテールやワードを理解できないまま続いていくためにそこで観るのを止める。

「つまらない、面白くない、難しい」
になるらしい。

よく調教されたガンオタからすれば富野っぽいこう言うセリフ回しも「らしいなぁ」と流せるし、そのまま気にせずに観れる。
前のめりのアニオタならそう言う解らないことを耐えて、あるいは自分から調べるんだが、消極的に「何となく見てみるか」と言うひとに作品単体で理解してもらえるように優しく出来てない。
誰もかれもが「この表現からすれば、多分このような設定なのかもしれない」などと類推し、読み説いて考えるわけじゃない。

ちなみにMMF(ミノフスキーマグネネットレイフィールド)フィールドと言うのは軌道エレベーターキャピタル・タワーに用いられている技術で、

構造体を支える為の外壁は存在せず、ケーブルとナットの間でミノフスキーマグネネットレイフィールド(MMF)を発生させる事で構造を安定させており、大気圏上層部に発生する電力をケーブルで吸収する事で力場を発生させるエネルギー源としている。

Gのレコンギスタ (じーのれこんぎすた)とは【ピクシブ百科事典】

ということなのだそうで、だからMMFの外に出てしまうと地球の重力に引かれて落ちるぞ、と。

重力に引かれて落ちる、なんてのも「え?宇宙だったら落ちないでしょ?」程度の否SF者に重力圏や宇宙速度の話を一からするくらいなら無言であさりよしとおの「まんがサイエンス」でも渡しておく方が楽。
まんがサイエンス 2 ロケットの作り方おしえます
こりゃあ一見さんにはむずかしい。
なにせ軌道エレベーターが解らなければ、舞台が何なのかすらもよくわからない。
そもそも海賊って海なのになんで宇宙で海賊?とか。
軌道エレベーターとは何なのか?からスタートすることになる。

セカイへの理解

妖怪ウォッチなら「日常/非日常」の境目は、妖怪ウォッチと言う時計と妖怪執事ウィスパーの存在。
あとの非日常に関してはウィスパーが解説することで理解が容易い。

作品を見るときに作品世界をいちから理解する必要がない。
自分が生きる小学校などの日常を前提として、非日常は、妖怪ウォッチというフィルターを通した先にある二重写し。
それさえわかっていれば、登場する妖怪(クリーチャー)に関して後はウィスパーが説明してくれる親切設計。

ファンタジーであれ、観客は既によく調教されているのでエルフやドワーフ、ゴブリン、オーク、ノームなどD&Dの時代から連綿と「ファンタジーに登場する異種族(デミヒューマン)」という常識を刷り込まれているから「耳が長いからエルフだ」「エルフが出るから中世をベースにしたトールキン風のファンタジーの世界だな」とわかる。
仮にSFしか知らない人間であれば、あれはロミュランかヴァルカン星人か?と思うかも知れない。
光で攻撃すればファンタジー者はマジックアローと捉えて、トレッキーはフェイザーと捉えたり。


「寄生獣」のように段階を踏んで
主人公に寄生→右腕だけに→頭を乗っ取られた寄生獣が登場(本来の姿)
などと順を追って物語が説明する構造なら理解もしやすいのかも知れない。
寄生獣(1) (アフタヌーンKC (26))
よくテレビのお笑い番組を見て「あんな内輪ウケのことを……」とDisるひとがたまにいるんだけれど、それはその輪の外にいるからこそ感じるわけで、いつもバラエティを見ている人間からすればそんな内輪感を今さら意識することもない。
実は、昔からお笑いにしろ内輪のもので、お笑いとはいかにして観客を内輪にとりこんで、安心して笑わせるか、にこそ主眼がある。
疎外感を感じれば、笑うことなんてできない。
吉本新喜劇が同じギャグを繰り返し笑わせるのも内輪ウケ。

内輪と前提と

テレビのアニメにしろ内輪向けのコンテンツは多い。
お約束や決まり事、前提知識を要する。
しかしその前提をいちいち説明していては物語の速度が落ちるために省略され、観客は読解にそれなりのテクニックや知識を要求され一層調教されていくことになり、コンテンツの排他性は上昇することになる。
しかしそれを意識することはまずない。
それらは自身の血肉になっていて、意識しなくても使っている自然なこと。


特に女性にそう言った「前提とする知識を要求するコンテンツへの不慣れ」感覚が多い感じを受ける。
(もちろん全ての女性ではない)
現実世界を舞台にした作品はいいが、何かしら非日常をベースにすると途端に難しいと感じてしまう感覚。

それはSFやアニメなどにあまり触れない、慣れにくいからかも知れない。
主に少女漫画で描かれる世界は日常を前提とした人間関係の機微が中心。
そういうモノを読んでいれば少年マンガ的な「まず世界の設定から理解を……」という段階の理解に慣れていないかもしれない(憶測)。

少年マンガと少女マンガ

少年マンガ慣れしていると少女マンガが読みづらいと感じることがある。

少女マンガの文法と少年マンガの文法の大きな差は、少女マンガの文法が内面世界を描くため時制や空間などの扱いが独特で、だからこそコマ割も同時性を持つ表現(外世界の時間の流れと内面世界の時間の流れが違う)や詩的表現(気持ちの昂りなどを表現する)などが折り込まれる。
文法が似ているが違うために、少年マンガに慣れていると、少女マンガが読みづらいと感じる。
少女マンガはキャラクターを描くが、背景をあまり描かない(空白やトーンで処理したり)のももちろんキャラの内面世界にこそ重心があるからだろう。

その「少年マンガ読者が少女マンガに感じる読みづらさ」と同じような感覚を、普段あまりアニメを見ないのにガンダムを見た女性は「SFアニメを見たときのわけのわからなさ」として感じているのかもしれない。


と言う小ネタ。
Pen (ペン) 2013年 6/1号 [少女マンガ 超入門]