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内藤 明宏「なぜ中国はこんなにも世界で嫌われるのか」で中国人の考え方を知る

Kindle 読書 社会

なぜ中国はこんなにも世界で嫌われるのか
幻冬舎がセールをやってたので買ってみた。
今は、続けて安田 峰俊「知中論 理不尽な国の7つの論理 (星海社新書)」を読んでる。

もともと中国に対して悪感情は無い。
カンフー映画だの、チェン・カイコーとか中国映画はよく観るし、封神演義も春秋戦国も項羽と劉邦も三国志も読んだし、反日運動とかガス抜きとはいえひどいなぁ、とは思うがだからと言って中国人全部があんな感じとも思ってない。
「悪の出世学」も読んで毛沢東がどうやって昇りつめたかも理解した。
とはいえ中国の生の姿や、中国人の考え方などには疎い。
しかし仕事で関わりになることもある。
特に詳しいわけでもない、普通の日本人程度の知識じゃないだろうか。

そういう前提でこの本を読んだ感想が以下。



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著者近影

タイトルは「なぜ中国はこんなにも世界で嫌われるのか」なので嫌中本かと思いきやそんなことは無かった。

著者は、中国でベンチャー会社を起業し、中国人の女性と結婚したブログ「パンダでも分かる!中国政治 Blog」の管理人さんだそうで。

著者が、中国で過ごす実体験などから読みとった
「中国人とは?」
「中国の文化とは?」
「どのように考えるのか?」
を書いている。
巻末には「中国人嫁メイからのメッセージ」という中国人から見た中国について書かれた記事も載っているんだが「中国人は政府と関わりたくない」という章題はなかなか興味深い。

「知中論」は、中国の過去の歴史を遡ったり、ライターだけに取材を行ったりした立場から書いているので、この本と読み比べるとその辺の差も面白い。
(知中論には、中国人マンガ家による中国人から見た中国のマンガが挿入されている)

好中から嫌中への道程

中国に親しみを感じるか聞いたところ,「親しみを感じる」とする者の割合が18.1%(「親しみを感じる」3.6%+「どちらかというと親しみを感じる」14.5%),「親しみを感じない」とする者の割合が80.7%(「どちらかというと親しみを感じない」35.6%+「親しみを感じない」45.1%)となっている。

外交に関する世論調査 2 調査結果の概要 1 - 内閣府

日中平和友好条約が締結された1978年から天安門事件までは中国に対し「親しみを感じる」は70~80パーセント近くを推移していた。

しかし1989年、天安門事件を境に「親しみを感じる」の評価は50パーセント台まで低下。
そのまま「親しみを感じる」「親しみを感じない」は50パーセント台を上下しつつ、2004年のサッカーアジアカップでの反日運動による暴動をきっかけに「親しみを感じない」が70パーセント近くまで上昇、2005年には歴史教科書問題、日本の国連安保理常任理事国入りに対する反日デモでの日系スーパーに対しての暴動などあり「親しみを感じない」は70~80パーセント台をキープし続けることになる。
2005年の中国における反日活動 - Wikipedia

各国の反中に関してもページが割かれているが、この本が出版された時点ではまだ西沙諸島付近でのベトナムと中国の艦船の衝突などが発生していない。
2014年ベトナム反中デモ - Wikipedia
新疆ウイグル自治区でのウイグル族によるとみられる暴力・テロ事件に関しても近年目立ってきた。
現在も世界各地で様々な反中的な事件が勃発しているが、本書でのこの一文が中国の行動をよく現わしているように思う。

中国人は他国で特別悪辣な振る舞いをしているというわけではなく、よくも悪くも中国国内と全く同じように振る舞っているのである

中国人のやり方に他国はがまんできない

中国という国の中国国内での当たり前のパラダイム。
外に持ち出したとき、それが衝突を生む。

なぜ中国はこんなにも世界で嫌われるのか?

・なぜ中国人はすぐにばれるような嘘をつくのか?
・なぜ中国人は人の言うことを聞かないのか?
・なぜ中国人は他者を軽視しがちなのか?

などなどを中国に暮らす経験から解説。民度が云々などという偏見丸出しの意見ではなく、文化的にそもそもが異なる、という冷静な視点で説かれた「中国人の考え方」はとても面白いし、海を挟んだ隣国がこれほど異なる文化だと言うのにも驚かされた。
日本とは全く異なる国の捉え方、考え方。コミュニケーション。
上海でベンチャーを起業した著者の経験から導いた仕事における中国人に対する交渉や態度、心得なども書かれていて、実際的な側面でも役立つ面も多々ある。

パンダと龍

いろいろ読むべきところが多いんだが、中でも面白かったのはアメリカの「Panda Hugger(パンダ好き)」と「Dragon Slayer(ドラゴン殺し)」のところ。
少し引用する。

パンダとドラゴンはいうまでもなく、中国をイメージする表現だ。
中国のプラス面、よい面に目を向けて有効路線を提唱する人が「パンダ好き」であり、これは親中と同じ立場だ。中国のマイナス面、危険な面に注目して警戒路線を支持する人が「ドラゴン殺し」である。反中というよりは警中と言うべきだ。
「パンダ好き」がエスカレートすると「ドラゴン好き(Dragon Hugger)」となり、これは日本語の媚中にあたる。中国の危険な面すらスルーしてしまう状態であり、牙をむくドラゴンに抱きつこうとする危機感知能力ゼロのお花畑な人々である。
逆に「ドラゴン殺し」がエスカレートすると「パンダ殺し(Panda Slayer)」となり、反中、嫌中の意味となる。中国のやることにはどんなことでも片っ端から敵意を持って迎え撃ち、ドラゴンもパンダもお構いなしに無差別攻撃の対象にしてしまう状態だと言える。
<p align="right">パンダ殺し(嫌中)と、ドラゴン好き(媚中)の日中友好</p>

「パンダ好き」「ドラゴン殺し」
なかなか上手い表現。
中国でパンダは友好的で柔和な外交手段だし、龍は神格化され権力の象徴になっている。

そして著者はそんな龍とパンダの間に「警中」という概念を置いてはどうかと書いている。

媚中<親中<警中<反中<嫌中

過度に媚びることなく仲良くする必要は無く、偏見で感情的に嫌うこともなく、冷静に向かい合い警戒しつつも「戦略的互助関係」(表現は本文中に登場)を結ぶのがよいのではないか?と。
違う文化を理解し合う必要は無く、違うモノは違うのだ、という前提で対処する。

まとめ

個人的に中国人のひとと仕事をする機会が過去にも現在にもあるが、だいたい相性が悪く、日本人には当たり前でもテキトーだったり全然やってくれないのでどやしたり、電話で延々やり合ったこともあるけれど、この本を読んで思い返してもいろいろと納得できる部分が多かった。

中国という巨大な国に属する「中国人」
中国という国、中国に属する民族、そして中国政府。
それらは同じ国だがそれぞれに違う。
もし中国のひとと関わる機会がある、あるいは中国文化の考え方は何だろう?と思うひとがいるなら是非一読を勧めたい。
参考にすればとても役立つと思う。

残念ながら幻冬舎のセールは終了してしまっているけれど。
対価を払う価値がある一冊。

余談


中国人芸術家 アイ・ウェイウェイは中国政府を敵に回し、さまざまな妨害行為を受けつつも作品を発表している。
アイ・ウェイウェイが政府の依頼で上海にアトリエを建設し完成した直後、中国政府は「違法建築だ」と言いだし取り壊す嫌がらせ。
経緯を見ても意味がわからない。

そこでアイ・ウェイウェイは、友人らを招待し河蟹を食べるスタジオ解体パーティを開く。
「河蟹」はネットの隠語。
中国政府によるネットの言論規制による「削除」を指す。
その「河蟹」を食べる意趣返し目的のパーティによるパフォーマンス。

そして画像にある無数の、積み上がったセラミック製の河蟹。
中国政府による都合の悪い記事の削除。
河蟹は中国政府によるグロテスクな規制を表現している。

中国人、と全てを一言で言って考えてしまいがちだが、日本人にもいろいろいるように、同じ文化で育とうが時代や環境などで考え方は異なり、同じ環境でも同じ考え方が育つとも限らない。
アイ・ウェイウェイのように政府に拘束され、嫌がらせを受け、戦いながらもパフォーマンスを行い続ける中国人アーティストが存在する。
知中論 理不尽な国の7つの論理 (星海社新書)
アイ・ウェイウェイは謝らない [DVD]