まったりのほほんなボーイ・ミーツ・ガール 田島列島「子供はわかってあげない」

子供はわかってあげない(上)

水泳×書道×アニオタ×新興宗教×超能力×父探し×夏休み=青春(?)。モーニング誌上で思わぬ超大好評を博した甘酸っぱすぎる新感覚ボーイミーツガール。センシティブでモラトリアム、マイペースな超新星・田島列島の初単行本。出会ったばかりの二人はお互いのことをまだ何も知らない。ああ、夏休み。

予備知識無しで試し読み読んだら面白くって買った。
で、一気に読み切った。

いいね!

と、読書感をボールドとフォントサイズでまず示しておく。


簡単に言うと小田扉が恋愛もの書いた感じと言うか。

子供はわかってあげない/田島列島 ① 書道男と競泳女 - モーニング・アフタヌーン・イブニング合同Webコミックサイト モアイ
↑こちらで一話を試し読みできるんで、気に入ったら買うのをお勧めしたい。
後半の展開は読めないと思う。




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少しのネタばれは勘弁してくれ

黒田硫黄にしろ、小田扉にしろ「日常」と言われるんだけど、よく考えてみるとあまり日常でもない。
結構シュールなネタやキャラを日常空間に放り込んで、それでも違和感なく溶け込むモラトリアム。
松本大洋が「花男」で描いたセカイを思わせる。

日常に見せた非日常を描いていても、それを日常に見えるくらい淡々と描くので日常に見えてしまう。
あらゐけいいち「日常」みたいに日常と言いつつ非日常をシュールにやってみせて笑わせるのとはまた違って、がっちりと現実に立脚したうえで、超常や非日常的な事件をやって見せる。

ちょっとしたズレの感覚を絵じゃなくセリフで持ち込むのも独特な感じ。
オヤジギャグ、ダジャレ。
水道で手を洗う効果音が「ジョビジョバ」……。


読書感としては、衿沢世衣子作品がなんとなく近いかもしれない(絵柄も)。
全体的にまったりと暖かく、優しくて柔らかい。
シンプルノットローファー

悪意のない日常(モラトリアム)

ボーイ・ミーツ・ガールな展開から、探偵(兄・姉)に依頼して新興宗教団体とその金を持ち逃げした教祖の話になり、その持つ能力も本物(存在する)として描かれたりする。

よくよく考えてみれば、探偵が横領事件と人探しやって、しかも宗教団体と超能力が絡み、性転換した探偵が登場するわ(しかも兄貴だわ)祖父と犬猿の仲で、主人公の方も宗教絡みだったり、書き手が違えばもっとズブズブで非日常な事件なんだしサスペンスフルな展開の話にだってなりかねないんだけど、気づくとひとの善意と繋がりで事件が展開し、誰も悪人がいないままほんわか物語が進んでいる。
主人公の兄(姉)の探偵だって、居候してる眼鏡の店主とねんごろで、いろいろズブズブな(暗喩)筈なんだけどそう言う辺りもソフトにさらっと描いて見せる。
小説家で言えば北村薫とか、毒のない若竹七海みたいな。

「善意と善意のひとの繋がりで織りなされる物語」

どこにも悪人がいないし、悪意が存在しない。
そう言う学園生活と、そういう事件と、そう言うひと夏の風景と恋。


前半~中盤漠然と進んでいたボーイ・ミーツ・ガールの恋愛要素は、こう言う話だと何となくフワッとしたまま終わるのが定番だと思っていたのだけれど、田島列島くらいの年代の作家だとその辺もがっつり、顔面から火を噴きだしつつ告ったりするようなシーンを描くのも縁側のぢぢいのごとく微笑ましく読んでしまう。
......いいねぇ、若いひとは(ずずずず、とお茶をひと啜り)。

んでまぁ、ボーイミーツガールな少年と少女の恋とか関係とかがこれからどうなるかはわからないけれど、夏が過ぎて少しだけ大人になって、少しだけ子供じゃなくなっていく。
夏休みは、人生のモラトリアム。
そういうお話。

なんとなく、よかった。
でも、こう言う青春は無かったなぁ。
子供はわかってあげない(下)