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ミステリ好きならハマる 小池ノクト「密の島」

マンガ ミステリ

蜜の島(1)

東京にいる妻子を、妻の故郷の島まで送り届けてほしい。復員兵南雲は戦友の遺児ミツを連れ、南へ向かう。目指す石津島は、地図にも載っていない幻の島だった。昭和22年という特異な時代が生んだ奇跡! 人類最古の謎に挑む、壮大なるサバイバル・ホラー!!




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ブロスの2014マンガ大賞は「蜜の島」に決定 - コミックナタリー
テレビブロスで2014年度の一位になったそうでさっそく読んだ。
こら面白いわ、と一気に三巻まで購入。


戦後の日本が舞台。
地図にも載っていない石津島。
主人公 南雲は、戦友が遺した子供 ミツを故郷の石津島へ連れていくよう頼まれる。
フェリーに乗って、そこから海路もなくボートで政府から遣わされた瀬里沢と共に向かうことに。
そこで待ちうけるのは?!
と言った話。

伝奇ミステリ

絵柄は劇画的。
モーニングと言われりゃ確かに。
サバイバルホラー!という謳い文句だから、どんな話かと思いきやゴリゴリに伝奇ミステリじゃないですか。

日本とほぼ交流が無く戦争を体験せず、閉鎖的に文化が独自発展した石津島。
そこで起こる連続殺人と、島に秘められた謎。
南雲は、ワトソン役としていろいろ掻きまわす。
探偵役は、政府の調査官 瀬里沢↓
蜜の島(2)

諸星大二郎辺りだと山間の偏狭な村にフィールドワークで訪れ、そこで不思議な慣習を見かけ調べていくとそこに闇の住人が……という展開だがこの「ミツの島」ではその辺の核心を超常的な存在ではなくてロジカルに落とそうとしているように思える。
勿論、そういう要素もあるし、以降どうなるかは定かではないけども。

死なない島

ここから、ちょこっとだけネタバレで。

まずこの島での「死」に対しての概念の扱い方。

もし諸星なら「おらパライソさ行くだ」が有名。
人間が知恵の実を食べたと旧約聖書にあるが、他に生命の実を食べた人間もいた。
知恵は無いが死ぬことが無い。
だから穴の中で生き永らえ続け→パライソ(天国)へと向かう、と。
これは常識ではありえない超常での「不死」を核心にしてる*1

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しかしこの石津島では死と言う概念が理解されず、遺体を弔うということもない。
生と死の概念が曖昧な独自のパラダイムがある。
そこで殺人が起きる。
死なないわけではないのに「死」が無い、

一般的に言う「死」が理解されない村。
殺人は対象を「死」に追いやるために行われる行為。
なのに「殺す」意味は何か?
つまり「死」が「死」ではなく別の……。


この辺は山口雅也「生ける屍の死」でゾンビとなって生き返る世界で行われる殺人(殺しても生き返るのに?)のように「誰が殺したか?」より「なぜ殺されたのか?」が徐々に重みを増してくる。

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フーダニット(誰が殺したか?)からホワイダニット(なぜ殺したか?)へ。
そこに閉鎖空間で歪に発展した島の習俗が関わってくる。

その辺りがミステリと言うよりもサバイバルホラーと言う辺りなのかもしれない。
「なぜ殺した?」よりも、さらに「まず生き残ること」が前提になってくる。
なにせ村独自のパラダイムにいれば、何があって殺されてもおかしくは無いし何が原因なのかもわからない。

最後に

石津島に秘められた謎と童歌、民俗学、見立て、平田篤胤。
探偵すら殺されかねない閉鎖空間下での生き残りをかけた推理。
コードが満載。
ミステリ読みこそ読んで欲しい一作。

一位をとるだけのことはある。
ただ万人受けするかどうかは知らない。
蜜の島(3)

*1:via生命の木