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フィクションと正義と警察(PSYCHO-PASS 2ndシーズン)

監視官 常守朱 1 ジャンプコミックスDIGITAL

ジョージ・オーウェルは言った。
<思考犯罪>は死を伴わない
<思考犯罪>が即ち死なのだ

私は問おう
己の意志を支配されただシビュラの信託のままに生きる人間たちに
果たして如何なる価値があるのか

私は視よう
虚飾に覆われたこの街の 誰も知らないはらわたの中で
繰り広げられる死の遊戯
人の魂の輝きをーーーーーー

監視官 常森 朱1


「PSYCHO-PASS」2ndシーズン面白い。
少しばかりサイコパスの話と「フィクション正義と警察」に関して。



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警察と正義

先日も埼玉県警の警部補が、飲酒轢逃げで逮捕されたり警察の不祥事は多い。
現実の警察は、正義とイコールじゃない。職務。
にんげんだもの。


社会システムの中で犯罪・暴力を行い倫理・道義的にシステムから逸脱する存在・行為(事件、犯人)に対してシステムが自浄を行うための組織が警察。
従うのは「正義」ではなく「法律」。

社会システムや政府によって警察組織の性格は変わる。
それは必ずしも正義であるとは限らない。

海外なんかで民間のデモを抑え込むのに警察が導入されて制圧したりする。
普段は正義と思われ、市民の味方の筈が政府の操り人形になったりもする。
圧政下なら警察組織は恐怖の対象にだってなりえる。

ヒーローと刑事

刑事ドラマとは、大人向けのヒーローショー。

踊る大捜査線の「現場vs管理」と言う構造は「個人の正義vs警察組織」
警察=正義じゃないからこそ青島の正義が成立する。
幾ら青島が正義と捉える行動でも、警察組織のシステムから逸脱すれば認められない。
もし警察組織が正義なら、青島は組織に従ってりゃあいい。

ドラマ「相棒」においては、主人公である杉下右京が絶対の正義。
社会的正義より理想主義な倫理・道義的な正義。

杉下「禁じられた取引をして証拠を捏造しました」
甲斐「それは……」
杉下「どんな事情であれ、我々警察官は真実から目を背けてはならない。僕はそう思いますよ」

相棒season13 #5

杉下が正義だから警察組織は扱いづらく、冷飯を食わせる。
情を挟まず方の法の正義を貫く。
相手が誰であろうが関わりなく、事情も鑑みない。
パトレイバーの後藤が「カミソリ後藤」だったのにキレすぎて埋立地(特車二課)に飛ばされたのにも近しい。

甲斐「杉下さんは正しいかもしれない。でも正しければそれでいいんですか?」

相棒season13 #5

ヒーローと正義と暴力

大門がショットガンを撃つ時、その弾は「正義の弾丸」
だから大門は許される。

「暴力に対抗するのに更に強い暴力をもってする」
暴力を抑制する暴力が重なり、インフレを起こしたのが犯罪のデパート アメリカ。


刑事ドラマと違いヒーローは、悪と戦うのに暴力が許される。
イカデビルに人権があるわけねーだろうが!ごるぅぅあああっ!!ライダーきりもみシュートォォッ!!
ライダーが天本英世を蹴り殺し、喜ぶ子供ら。
私刑と暴力が許される独立独歩の絶対正義、それがヒーロー。
東映レトロソフビコレクション イカデビル (仮面ライダーより)
醜い悪の怪人はライダーキックされて当然。

ヒーローの敵は死なない。
「殺し」→「死ぬ」んじゃなく、悪の怪人を「必殺技」で「倒す」だけ。
正義のパンチは暴力ではない。
それに怪人は、人間ではない。
人間じゃない悪いやつはとっとと殺して倒していい。
「正義のヒーローは、みんなの平和を守るために、日夜 悪の組織と戦うのである!」
とナレーターが説明してみんな納得。

ヒーローは、社会の司法に所属せず私刑を行う。
クリストファー・ノーランは「ダークナイト」でヒーローの私刑について掘り下げた。
シャマランの「アンブレイカブル」だってリアルなヒーローは、光線とかキックとか出さずにチョークスリーパーで絞め殺すし、死体も爆発しないし、相手は怪人じゃなく、悪は人間(キックアスもそうですね)。

PSYCHO-PASSの正義

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成しうる者が為すべきを為す
これこそシビュラが人類にもたらした恩恵である

監視官 常森 朱1

サイコパス セカンドシーズン。

シビュラシステムにより管理され、人間の感情を測定し「将来犯罪を起こす可能性」を示す犯罪係数をはじき出し、システマティックに社会を抑制する未来。
犯罪者を追う公安の監視官・執行官にはドミネーターと言う銃が渡され、シビュラと繋がった銃自体が数値に基づき量刑を行う。
現代であれば、司法が担う役割をドミネーターと繋がったシビュラシステムが担ってる。

セカンドシーズンでは、そんなシビュラシステムに管理された社会における犯罪係数という「数値化された悪」と対する正義の「ドミネーターによる量刑」の抱える矛盾に関して話が進んでる。

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ドミネーターって強すぎるんですよ。
司法を担ってるどころか量刑→死刑まで独断で行う。
しかも基準は数値だけ。

警察は本来、殺人は犯す権利を持たない(結果的に公務の執行が殺人相当の行為になることはあっても)。
死刑は行うにしろ裁判と量刑の後だしそれは警察の役割じゃない。
私刑警察*1じゃないんだから。

しかしシビュラの支配する未来には、そんな守られる人権が欠けている。
システムが、人間の生殺与奪の権利まで握ってる。

本来、潜在犯(犯罪を犯す可能性が高い)相手にノンリーサル パラライザー(麻酔銃)は順当でも、リーサル エリミネーター(爆殺)、デストロイ デコンポーザー(消失)に至っては銃を越えてもはや軍用兵器。
そこそこ色相が濁れば犯罪者→執行対象なので潜在犯(これから犯罪を起こす可能性が高い)でもリーサル エリミネーターで殺人許可済にすぐになる。

「お前、犯罪犯すかも?→リーサル エリミネーターwww」

量刑が一段階緩いんですよ。そりゃあ執行官の色相が濁る。
日高のり子は「リーサル エリミネーター」ばっかり言ってる。
ネット民なんてどんだけ執行対象になるんだか……。


社会正義は、シビュラシステムが担う。
常守監視官は、シビュラに従いながらも人間的に倫理・道義の正義で動く。

対して鹿矛囲は、犯罪係数として数値化できない……社会正義のルールから外れたところで暴力を行いシビュラの矛盾点を探る。
鹿矛囲はシビュラのパラダイムの中にいないから犯罪者にならない。

ドミネーターを使い法の下の殺人を行う監視官・執行官の色相が濁ることに気付き、鹿矛囲はドミネーターを奪い自動化されたシビュラの正義によって色相の濁った監視官・執行官を殺害する意趣返しを行ってみせた。
シビュラの世界における正義と悪の境目が、人間的判断の帰結ではなく単にシステムの数字が基準でしかないという弱点を突いてみせた。

シビュラとマシン

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海外ドラマ「パーソン・オブ・インタレスト」にもネットワーク上で特権的に情報を集め犯罪を予知するプログラム”マシン”、が登場する。
この”マシン”は社会保障番号しか出さないために対象が犯罪者予備軍なのか被害者予備軍なのかわからない。
主人公らは、黒か白かわからない対象を守ることになる。

人工知能が追求するのは本来”目的”だけだ。
閉じ込めて制御しないと……いつか人が制御される

パーソン・オブ・インタレスト シーズン4 #5

”マシン”はあくまでも信託を示す存在でしかない。
そこがシビュラと大きく違う。
”マシン”は予知しかしない。
だから倫理で動く主人公らの行いでドラマ内での「正義」になる。
生殺与奪は主人公ら人間が握る。
だからこそ主人公らは正義でいられる(人も出来るだけ殺さないし)。
”マシン”が人間を殺していいかどうかまで判断するならその先はスカイネット(ターミネーターに登場する自立思考型基幹コンピューター)になっていくディストピア。

最期に

サイコパスは、刑事ドラマで当たり前に行われる正義について自問自答して見せる。
社会正義、法と正義、そしてシステム。

シーズン1でシビュラシステムという選民思想的なエゴに基づいた不気味な存在が明らかになっている状態で、さらにそのシステムのキモである犯罪係数を突っ込んでくるあたり、どう転がして行くのかわかりませんがシビュラの支配が続いても安定した奴隷の楽園が続くしかなく、シビュラの支配が解除されれば巨視的には善かれだけど鹿矛囲のテロが正当化される。
常森の正義は、シビュラの保証する未来と合致しないんですよねぇ......。

どう転んでも難しいですが、どーなって行くのか期待しとります。
霜月はあのままエゴに食われるのだけは確定か。
それとも霜月が救われて、常森が……と言う展開もあるのかな。
監視官 常守朱 4 ジャンプコミックスDIGITAL

*1:1988仏 主演 アラン・ドロン