ダン・アリエリー「予想どおりに不合理」を読んで”ブログで金儲け”のうさんくささを考えた

予想どおりに不合理  行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」

「現金は盗まないが鉛筆なら平気で失敬する」「頼まれごとならがんばるが安い報酬ではやる気が失せる」「同じプラセボ薬でも高額なほうが効く」―。人間は、どこまでも滑稽で「不合理」。でも、そんな人間の行動を「予想」することができれば、長続きしなかったダイエットに成功するかもしれないし、次なる大ヒット商品を生み出せるかもしれない!行動経済学ブームに火をつけたベストセラーの文庫版。

非論理的で不合理な出来事は世の中に多い。
そして人間はそれに違和感を感じない。
考えた結果その”不合理な”行動へと至る。

とても面白かった。



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幾ら払えばいい?


このTED動画で話しているのが著者の行動経済学者ダン・アリエリー。

この本では、人間が行う一見不合理な行動がどういうメカニズムで行われているのか、それを実験し検証した内容になってる。
上記内容紹介にもあるように
「現金は盗まないが鉛筆なら平気で失敬する」
「頼まれごとならがんばるが安い報酬ではやる気が失せる」
「同じプラシーボ薬(偽薬)でも高額なほうが効く」

などなどさまざまな不合理なことを実験していのだけれど、なかから市場規範と社会規範に関する部分*1を少し。

たとえばデートに行って男がおごったとする(社会規範)
しかしデート回数が増え始めるが一向に関係が進展しない。
そこで男が「デートに一体幾らの金を払ったと思ってるんだ!(市場規範)」と言ってしまい、関係が破たんする。

これは社会規範(関係性を保つために利益を考えない行い)に対して市場規範(利益を求める行い)を持ちこんでしまうからで、同様にベッドで一夜を共にしたあとで「幾ら払えばいい?(市場規範)」と言ってしまうのも同じ。
人間は社会規範と市場規範二つの世界に同時に生きて、それを使いこなしている。

託児所の罰金

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面白いのが、社会規範が通用していたところへ市場規範を一度持ち込むと社会規範は戻らない、と言う部分だろう。
例を挙げる。

とある託児所で子供の迎えに遅れてくる親と託児所の先生の間には社会規範があった。
遅れると申し訳ない、と言う罪悪感から親は今後はキチンと迎えに来ようとする。

ところがここで託児所が迎えに遅れる親に罰金を科すことにした。
ここで社会規範(善意、罪悪感)から市場規範(罰金)に代わった。
すると罰金を払うのだから、という理由で(延滞料感覚で)迎えに遅れる親が増えてしまった。

上手くいかなかったため、託児所は罰金制度を撤廃(市場規範→社会規範)。
しかし迎えに遅れる親は罰金導入から変わらず、それどころかわずかに増えたと言う。

社会規範が市場規範と衝突すると、社会規範が長いあいだどこかへ消えてしまうのだ。社会的な人間関係はそう簡単には修復できない。バラの花も一度ピークが過ぎてしまうともうもどせないように、社会規範は一度でも市場規範に負けると、まずもどってこない。

一度、市場規範を持ちこむとそこに社会規範を戻すのは難しい。
「1時間遅れれば幾ら程度」という目安が一度出来てしまえば、罰金が無くなっても心理的にそれを基準にして考えてしまう。

ブログで金儲け!はなぜうさんくさいのか?

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※以下は、個人的な解釈が多分に含まれます
これを最近のネットのマネタイズに持ち込んでみると面白い。

ブログはもともと日記から始まった。
グーグルのアドセンス(広告収入)も昔からあったわけじゃない。
かつて個人のホームページやブログは多くが社会規範だった。

ところがそこへアドセンスなどが始まり、マネタイズが登場する。
マネタイズはネットのコンテンツでお金を儲ける方法を指す。
それまで社会規範により趣味だったブログが市場規範によってお金を儲ける手段の一つになった。
ブログは趣味(社会規範)だったが、しかし金儲けのツール(市場規範)にもなる。
この社会規範へ市場規範を持ちこんだことからくる反発が嫌儲だったり、あるいはマネタイズ勢へのうさんくささに繋がっているような気がする。

金儲けが悪いわけじゃあない。
誰だって金を稼いで生きてる。
なのにブログで儲ける!ネットで金稼ぎ!と言いだすと途端にうさんくささがわき出す。
具体的に書けば
※以下が全てではない

ブログで金儲けを言う(市場規範)ブログ記事は「お金を儲けるために」書かれている。
それを言わない(社会規範)ブログ記事は「面白いものを書くために」書かれている。

市場規範なひとのブログを読んでみると
「アクセス率を上げるための」
「SEOが」
「儲けるためのブログ運営論」
「読者に広告をクリックさせるための配置を」

と記事が書いてある。
市場規範なマネタイズブログを運営している管理人同士であればそんな記事も楽しいかもしれない。

しかし多くの読み手は、単に面白いものを読みたい(社会規範)。
なのに読み手を金儲けの方法(市場規範)としか捉えていない記事が書かれているからうさんくさい。
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「お前を儲けさせるために読んでんじゃねーわ!」と捉える。
市場規範を話したいならセミナーでも何でも行けばいい。
社会規範で行動する読み手に見せる必要もない。

市場規範を言うひとの書くものは、全て市場規範~金もうけのための記事に見える。

「ブログのアクセス増やす具体的な方法を教える」

「検索ニーズの多そうなキーワードと自分のが持っている知識で書けそうな記事の兼ね合いを考えキーワードをたくさん入れるためにマンガベスト100のまとめ記事を書いた。作品名やマンガ家の名前が同じ記事に入るから検索からのアクセスが狙える」

なんてぶっちゃけて書けば、そのブログでその後書くモノは全てそのために書かれているんだ、としか思えなくなる。
ゲームの攻略法を一日何度も書いたり、温泉だのグルメやテレビの時事ネタ、ジャンプ速報、マンガ100冊だの、ゲーム実況リストだの、そういうモノも全て「オレのブログでの儲け方」の延長線上にあるようにしか見えなくなるし、つまり結局あんたは金儲けなんでしょ?と思われてしまう


・趣味のまとめ記事を書いた(社会規範)
→ひとつひとつが熱い、濃い(好きで書いてる)
→→いいね!


・アクセス狙いのまとめ記事を書いた(市場規範)
→ひとつひとつに熱量がない、薄い(好きで書いてるんじゃなく、儲けるため?)
→→うさんくさい


そして一度マネタイズを口にしたひとが急に「ブログは読者のために~」などと言い出すと、これもうさんくさい。

・マネタイズ(市場規範)→ブログは読者のために(社会規範)

この市場→社会規範への移行の難しさは前述した託児所の例でもわかる。
SEOテクニック紹介しますとさんざやっておいて、ある日突然

「読者に喜んでもらえるような~」

など書くひとをたまに見かけるけれど、アレがまさに市場→社会規範の失敗例の気がする。

「お前先月は「PVがあってもはてなの連中は広告クリックしない」とか書いてたやんけ」と。

「この前「はてブって全然メジャーじゃないしバズるのはツイッターの方がいい」とか書いてたやん、今さら読者のためとかウソやん」と捉えられても仕方ない。


市場規範で捉えれば、ブログ読者一人は単なる1PV(UU)でしかない。
人間と捉えてないんだから、そりゃあ当たり前かもしれない。
自分を金儲けのツールとしてしか見ていないからこそ、読み手はうさんくささを感じる。
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面白いもので、全ての現実世界の商売も金儲けのために、仕事としてきちんと行っているのに、ブログで金儲けを言い出すと途端にクオリティが下がって見えるのは、趣味で書くひとのクオリティが高すぎるからかもしれない。
金儲けで書かれる記事のクオリティの低さ(バイラルメディア、まとめ、炎上商法)もマネタイズへの反発のひとつの要因だろう。

価格は相対的なモノ

http://www.flickr.com/photos/43888388@N08/5568397975
photo by El Chico Iwana

他にもこんなのがある。

同じ500円でもコミックス一冊なら払えるのに、タマゴ1パックには払いづらい。
お金は同じ500円。
タマゴ1パックは食料になるし栄養もある。
しかしコミックスは娯楽として一度読んでしまえばおしまい。
栄養価も無い。
なのに500円の重さが異なる。


ワンパック200円程度でタマゴが買えるから500円を高く感じるのであって500円の価値がないとは言えない。
コミックは500円が相場だから500円を払えるのであって500円の価値があるとは言えない。
価格とは、絶対的ではなく相対的に考えるからこそ起きる。


このようにさまざまな不合理を取り上げ実証した一冊。
人間は合理的・論理的に考えているようでいてそうではない。
専門用語が少なく、平易な内容なので楽に読めるところもポイントが高い。
有名な本だが、かなりおススメ。


つい面白くて続刊の「ずる―嘘とごまかしの行動経済学」も買ってしまった。
一冊読み終わると、少し賢くなったように錯覚するから恐ろしいw
ずる 嘘とごまかしの行動経済学

*1:市場規範、社会規範に関しては著書内での用例に基づく