炎上とはだかの王さま

むかしむかし。
インタネットの片隅にKという男がおったそうな。




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はじまり

Kはあるとき、ブログを始めることにしたそうじゃ。

ロックスターに憧れ、いつかは有名になりたい、そういう気持ちを持っておったK。
日記じゃと思っとったブログでは、今やマネタイズっちゅーもんが流行っとっての、このマネタイズっちゅーのはブログのアクセスがお金になるっちゅーなんともありがたい仕組みじゃった。
しかもブログで名前が知れれば有名人になれるかも知れん。
Kは自分のブログでお金を稼ごうと決めたんじゃそうな。

話題のネタを見つけては記事を書き、テレビ番組で取り上げられてるのを見たら記事にする。
そんな更新が実をむすんでKのブログのアクセスは徐々に増えて行ったんじゃそうな。

なかま

「参考になります!」
「さすがです!見習わなきゃあ!!」
「ボクも頑張ろう!!」
Kの書いた記事には同じようにお金を儲けるブログ仲間が集まり始めた。

同じブログをやっとるもん同士で手を組んで、お互いに褒めおうて、評価を上げる。
有名になる、そしてお金ももうけられる。

インタネットいうところは、ひとりで生きるんは大変じゃが、手を組んだらずいぶん楽に過ごせる。そういうことにKは気付いたんじゃそうな。
Kを中心にして仲間が増え始める。
Kが好きなマンガの世界のようじゃった。
ONE PIECE 75 (ジャンプコミックス)
Kはマンガが好きじゃった。
熱い友情、努力、そして力を合わせ最後に勝つ。
バトルマンガは、戦こうた相手と最後に仲良うなるもんじゃ。
拳で語り合う、そういう関係に憧れておった。

バズる

そんなある日のこと。
Kが書いた記事の一つが大当たり。
目を付けておった話題のコンテンツがヒットしたおかげで検索流入が増大。
なんとアルファブロガァ並みにアクセスがあったんじゃそうな。
喜んだKは早速記事にして

「いやー、これってあの○○さんに勝ってる?オレ??」
「やっぱオレのやり方は正しかったわ」

途端、寄せられる仲間からの賛辞。
すごいですね、おめでとうございます、さすがですね、ついて行きます、見事です。
それまで数千円から一万円程度だったアフィリエイト収入が、その月だけで数万円が振り込まれ、Kにとっては大いに自信になったそうじゃ。
皆の憧れ、カリスマ。
彼はそのときの流入記録を自分の名前として掲げたそうじゃ。

恐れ

しかしインタネットと言うのは怖ろしい。
熱しやすくも冷めやすい世界。
先月大当たりしたコンテンツの検索も徐々に減り始めた。
アフィリエイト収入もまだ数万円はキープしておったが以前のようになるのは時間の問題。
これはなんとかせにゃあならん。

えらそうに掲げた看板を下げるわけにもいかん。
人間上がるのは楽しいが、下がるのは我慢ならんもの。
そこでKはいろいろと試してみることにしたそうじゃ。

まず人気雑誌の速報記事。
買ってきた雑誌の人気マンガを写真に撮って記事にする。
「ネタバレ」と書いて上げておくと早く知りたい人が辿りつく。

これはやってはいかんことじゃが、流入が下がりつつあるKにとっては仕方がないことじゃった。
インタネット言うのは黒でなければグレー。
逮捕されるわけでもないし、告訴なんて滅多にされるもんでもない。
それにみんなやっとる。

はてな

Kは炎上商法も試すことにした。
炎上商法いうのは高知に住むカリスマアフィリエイターが始めた商法。
自分を餌に炎上をさせそれを稼ぎにする方法じゃった。

インタネットには「はてな村」と言われる、そりゃあ怖ろしい集落があって、そこに住まう手斧をふりまわすモヒカン族いうのはたいそう恐れられておったそうな。
Kは、まずははてな民を挑発してみることにした。
あの何でもかんでもちょっかいを出す連中なら簡単に燃えるだろう。

しかし反応がない。
はてな民言うのは露骨に煽って呼び寄せられるのが嫌いじゃったもんだから、誰も反応せんかった。

そこで個人に絞って名前を出して煽ってみた。
それでも反応がない。
しかしこの煽ってみせる、というのはKのカリスマを光らせる効果もあった。
あんなに強気なKさんはすごい、言いたいことを言うべきですよね、さすがです。
皆が褒めてくれる。
輪の中でKは王さまのような気分じゃったそうな。

炎上

キン肉マン 読切傑作選2011─2014 (ジャンプコミックス)
ある日のことじゃった。
Kの仲間のTが不用意な記事を書いて炎上したそうな。
もともとTは、昔の他ブログの人気記事をまるまる写してみたり、ニュース記事をまんま写してみたり、とりえあず話題になっていることを記事として書いて稼いでおったんじゃが、それを非難されてかなり怒っておった。

「どんなやり方をしても批判されるいわれはない!」
「何を書いても迷惑かけてない、丸写しもしてない(参考にしただけだ)」

それを見て怒ったK。
オレの仲間を、許せん!
そう思いTが批判されたと言う相手を批判する記事を書いたそうな。
炎上なんてなかなかするもんでもない。
Kは、この前の経験でそう思うとった。

沈黙

ところがじゃった。
何やら雲行きが怪しい。
Tが批判されたと言うたのは勘違いじゃったし、Tのやり方も色々まずかった。
それに、もともとKは、論理的な話には向いておらんかった。
今まで書いた記事も何かを写したり感情で書いとっただけじゃから、ネットの炎上とかケンカとか言う論理的なやりとりには向いとらんかった。
書いた記事は色んな人間に不評じゃったし、仲間は見て見ぬふりをしたそうな。
幾ら仲間でも負ける戦には加担できん。

そこでKは、相手と仲直りしようと話しかけてみた。
「やあ、アレはアレとして仲良くしましょう」
マンガの中の戦いと同じ。戦いが終わったら仲良くなれる。
そう思っとった。

しかしそうはならんかった。
現実は、話も終わっておらんのに仲良くなれんかった。

見る見る間に話が膨らみKは「炎上」いうもんに巻き込まれよったそうな。
「戦後最悪の狂気」「炎の魔術師」「黄色い悪魔」「腐ったソウルジェム」そう呼ばれる有名最凶ブロガーにも見つけられ、またたく間に騒動は知れ渡る。
こんなに燃えるはずも無かったのに、Kはたいそう燃え始めた!!
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「生存戦略ハゲー!」

Kは前にどこかで見た「炎上はスルー」と言う言葉を思い出したそうな。
ここで折れてはいかん!!
どんだけ言われてもKは無視することに決めてそれを書いた。

王さまは、はだか

仲間と和気あいあい、その合間に飛んでくる火の粉。
無視は大変じゃったが、やらんわけにはいかんかった。
なにせ仲間がおる。
ここで折れたら仲間への面目も潰れる。
Kにとってプライドだけは、守りとうさんといかんもんじゃった。
謝ることも、認めることも、認識して見せることも許されん。

自分らの世界に炎上は無い。
そうせんと積みあげたもんが壊れてしまう。


普段、上から目線で偉そうに言っておった分、Kが折れることはできんかったし、認めることも出来んかった。
放っておけば何とかなる。
どうせみんな忘れる。
仲間も見てみないふりをしてくれる。


Kは、はだかの王様じゃった。

しかし誰も仲間は、Kをはだかとは言わん。

Kはカリスマじゃ、皆の憧れじゃ、Kは見習うべき相手じゃ。
輪を保つには、皆が皆、Kをはだかと思っても口にすることはできん。
それを言えば輪が壊れてしまう。
そして今日もKは見て見んふりをして過ごす。



これが、哀しいKとその輪の話じゃ。
怖ろしい怖ろしい。
今でも新宿中央公園には、背中に無数の斧を突きたてたKが笑顔で仲間と手をつなぎ、輪を囲んでおる銅像が立っておるそうな。

(関東地方の民話)

裸の王様

※創作記事(当然、完全フィクション)