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【神様探偵】 麻耶 雄嵩 「さよなら神様」【再降臨】

さよなら神様

隣の小学校の先生が殺された。容疑者のひとりが担任の美旗先生と知った俺、桑町淳は、クラスメイトの鈴木太郎に真犯人は誰かと尋ねてみた。殺人犯の名前を小学生に聞くなんてと思うかもしれないが、鈴木の情報は絶対に正しい。鈴木は神様なのだから――(「少年探偵団と神様」)。衝撃的な展開と後味の悪さでミステリ界を震撼させた神様探偵が帰ってきた。

神様探偵?第二弾。
ネタバレなしで以下。



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2014末のミステリランキング上位に入るのは間違いのない一作。

前作では、特徴のない小学生の姿で現れた”自称神様”の鈴木太郎。
今作では急に美少年として登場。
神様なので容姿も思うがままらしい。
そして”神様”鈴木は、事件が起きると前作同様ご託宣(神託、お告げ)として犯人の名前を告げる。

少年探偵団の一員 主人公 桑町淳は、鈴木のそんなご託宣を聞き、それを聞くから振り回される。

犯人を知りたいのか?なぜ犯人かを知りたいのか?

犯人の名前だけがわかる。
しかもそれが身近な人間や、身近な人間の親だったりする。
どうして犯人なのか、ではなく誰が犯人かだけがわかる。
これは問題集の答えだけを見せられるのと同じ。

数式があって答えがわからない。
探偵はその数式のとき方を皆にわかりやすく説明し、回答を導き出す。
それが役割。
しかし今作に登場するのは神様であって探偵ではない。
だから解き方ではなく回答だけを提示する。

桑町淳は答えだけを知らされ、その解答にどうやったら至るかの解法をひたすら考える。
しかも犯人が全く知らない無関係な人間ならまだしも身近な人間。
自分のこととして想像してみるとよくわかる。


近所で殺人事件が起きる。
容疑者は捕まっていないが強盗だろうといううわさが流れる。
しかし神様に
「犯人はキミのお父さんだよ」
と言われたら?

父親がどうして犯人なのか?
本来、犯人を導くための推理が、逆に犯人で無いための保証を行うための推理に代わる。
推理の過程で破たんすれば「父親が犯人じゃない」「神じゃない、インチキだ」と言える、と。


真犯人の名前がわかった上でそこに至る道筋を考えるというのは、ミステリーの構造として非常に逆説的。
しかも今作は前作「神様ゲーム」と違い、短編形式。
毎回毎回さまざまに趣向をこらされた意地悪な仕掛けが待っている。
この辺、鈴木太郎は神様といっても霊験あらたかな神様というより、どちらかといえばギリシャ神話に出てくるような、人間を困らせて喜ぶ神様に近い(とはいえその感情すら神が作ったものなので人間からは計り知れないわけで)。
あるいは悪魔のような。


非常に高水準な短編集。
これがミステリファンから評価されるのはよくわかる。
ニヒリズムな展開もいかにも麻耶雄嵩っぽい。

にしても大オチは舞城かと思いましたよ♡


一作目の感想はこちら。

次は麻耶雄嵩「化石少女」を読まねば。


化石少女 (文芸書)