天然お嬢さまの素人探偵 麻耶雄嵩「化石少女」

化石少女

「まりあ先輩、でたらめな推理はやめてください!」京都の名門学園で続発する凄惨な殺人事件。事件に対峙する名探偵は……赤点女王にしてマンジュウガニ以下のすべすべ脳みそを誇る化石オタクの変人女子高生! 一番身近な下僕もとい、ワトソン役の幼なじみにもバカにされ、推理を認められない女子高生探偵は、事件をどう解説するのか? 年間ミステリ・ベスト10常連の異才が放つ青春ミステリ!

麻耶雄嵩のコミカルミステリ。
天然ツンツンキャラの古生物部部長 神舞 まりあと同じ古生物部の(仕方なく入部した)部員でありまりあの幼なじみ桑原 彰をメインにした物語。
もちろん麻耶雄嵩なのでただのコミカルミステリであるはずもなく。。。


※以下、多少のネタバレありつつ核心は無しの方向で



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神さまと天然少女

2015本格ミステリベスト10で堂々一位の麻耶雄嵩「さよなら神様」に登場した神様は、推理の必要のない無敵の存在。
全知全能であるが故に犯人も事件も全て理解して、神さまは犯人の名前だけを伝え、人間の弱い心を翻弄してみせる。
ニヒリズムな神。

対して今作の探偵役 神舞 まりあは天然ワガママのお嬢様。
無茶なことを平然とやるマイペース娘で、推理にも無縁な素人探偵。
しかも犯人として指摘する名前にもいろいろ問題があって、廃部寸前の古生物部存続を願う桑原 彰はまりあの推理を聞いて誰にも言わないよう口を封じる。
わざわざ波を立てる必要もない。

ここで面白いのは「神様ゲーム」「さよなら神様」では神が出す答えに辿りつくために主人公が推理を行うという「決まったゴールにどうやったら辿りつけるか」
今作で、まりあの推理過程は披露されるが、指摘する犯人を誰かに喧伝するわけにもいかず桑原 彰が「誰にも言うな」と推理を否定してしまうためにまりあの推理は昇華しない。

・アイツが犯人だ→でも、誰にも言わない→犯人は捕まらない、推理が正しいかどうかわからない

推理は披露し、犯人が認め証拠が出るからこそ正しさが証明され昇華する。
推理しかなく証拠も状況証拠だけでは、机上の空論。
そして探偵小説では通常、論理が至高にも拘らず、今作ではまりあの論理的推理より、彰の世間体を考えた「体面」が論理を否定し封殺してしまう。


麻耶雄嵩の作品は、デビュー以来探偵小説と言うモノの構造に対しての自己言及的であり懐疑的な目線が常にある。

最後に登場するだけの探偵メルカトル鮎にしろ「探偵」と言う役割と存在を問い直した存在。
神様シリーズや今作での推理→犯人と言う構造に対しての懐疑と否定。
コミカルミステリ、と見せつつ実際はガッツリした実験的ミステリなのはさすが。
面白かったですよ。

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2015本格ミステリベスト10