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パトレイバーが海外で受けない理由


香ばしいまとめ。
さんざ突っ込まれてるので、ガンダムの部分は置いとく。
個人的に気になったのは、これ。


まず惜しい監督(via.北久保弘之)こと押井守作品が、まともに海外で相手されたのって攻殻以降。
ロボが理由で受けないっていうなら、過去作でもビューティフルドリーマーとか天たまとかダロスは受けたってことでいいのかしら。
パトがウケる/ウケないと言われてもその線引きはどの辺なんだろう?
よくわからん。


さらにIMDbを見れば


レーティングも7.2、7.6ですので、海外でもキチンと評価されてる。
これでウケないと言われてもですね。
(映画トランスフォーマーが7.2、攻殻で8.0、宮崎翁のラピュタで8.1)

ともあれ、そんなこと(事実誤認)を突っ込むよりは身になることを考えましょう。
もし仮に海外でウケないとすれば、それはどんな理由だろうか?(ロボであるという以外で)

もっと説得力のある理由を考えてみる。



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海外、と主語が大きくて香ばしいのだけれども、同じ海外でも惜しい作品はヨーロッパの映画祭では評価されアメリカではギークにしか評価されないと言うのが通説、と言うか実態。ウォシャウスキーとかキャメロンとか業界のヲタにはウケる。
それは映画文化の差異もあるんだろうけども、作品としてエンターテイメントであるか無いか、台詞で語るのか否かと言う部分も大きい。

P1

EMOTION the Best 機動警察パトレイバー 劇場版 [DVD]
たとえば「パトレイバーTHEMOVIE」は、天才プログラマー帆場英一が仕組んだウイルスによるテロを描いた。

しかしこの作品では明確な敵が存在しない。
ハリウッド的な作品では多くが敵は敵であり味方は味方。
パシフィック・リムのKAIJUなど明確に敵が存在しそれを倒す。
バットマンは自身の正義に悩むが、敵が悪であることは揺るぎがない。

しかしパトでの真の敵 帆場は既にこの世にいない。
OSに仕込まれたトロイの木馬HOSこそが悪。
悪であるコンピューターウイルスをいかにして倒して見せるのか?(倒したと映像化するか?)
だから帆場が残したウイルスとそのメタファーであるTYPE ZEROとイングラムとの一騎打ちで決着をつけさせ明確に決着を付けて見せた。

惜しい監督は不満そうですが。

そもそもが零式と戦うなんてこと自体が無意味なんだからさ。
方舟が沈んだところであの映画は終わるべきなんだもん。
というか物語は終わってるの。あとは映画としていかに終えるかという、それがテーマにあるだけだよ。
その限りで言えば零式と戦ってもいいんだけど、だったら零式が止まったところで終わるべきであってさ、それなのになんで全員で勢揃いして「やったやった!」で大喜びして抱き上げてくるくる回らなきゃいけないんだよ。しかもご丁寧にヘリのお迎えまで見えてさ。

【第9回】「解禁/押井守が『009 RE:CYBORG』を語る(4)」

明確な敵(悪)の不在。
法の下の警察として正義を追求することのむずかしさを描いている。
果たしてトリガーハッピーなアメリカのエンタメ映画文化に、この文化が伝わるのか否か、と。

P2

機動警察パトレイバー 劇場版 [Blu-ray]
「パトレイバー2 THE MOVIE」では、東京に虚構の戦争状況を再現する。

この虚構の戦争と言うものを東京に再現するのが特殊。

ハリウッド映画なら単純に戦争にしちゃえばいい。
実際にテロを仕掛け脅す方が単純。
警察ではなく海兵隊だとか元海兵隊員が戦えばいい。
一昔前なら敵はソ連、少し前ならテロリスト、今なら中国。
主人公が敵を撃ち殺して終了。

なぜ実際の戦争ではなく戦争「状況」にするのか?
それはP2で描く戦争状況が、日本と言う国の暗喩だからですよね。

だがあんたは知ってる筈だ。正義の戦争と不正義の平和の差はそう明瞭なものじゃない。平和という言葉が嘘吐き達の正義になってから、俺達は俺達の平和を信じることができずにいるんだ
戦争が平和を生むように、平和もまた戦争を生む。単に戦争でないというだけの消極的で空疎な平和は、いずれ実体としての戦争によって埋め合わされる。そう思ったことはないか
その成果だけはしっかりと受け取っておきながらモニターの向こうに戦争を押し込め、ここが戦線の単なる後方に過ぎないことを忘れる。いや、忘れた振りをし続ける。そんな欺瞞を続けていれば、いずれは大きな罰が下されると

パトレイバー2 THE MOVIE

イスラム国が人質を殺すと動画を上げてもクソコラを作る国民。
実際の戦争と自分との距離がわからない人々の住む国。
テレビは人々に戦線の遥か後方であることすら忘れさせたが、ネットはさらに全能感を与えた。

柘植は「戦争」ではなく、東京で起こる「戦争のシミュレーション」を起こす。
自ら軍隊を送り込み、世界の警察を名乗ったアメリカ的な文化からすれば、戦地に送り込まれたにもかかわらず専守防衛の果て、東京に帰り戦争のシミュレーションをして見せようとする柘植の動機を理解するのは難しいかも知れない(沈黙の艦隊の第2護衛艦隊とかさ)。

警察とPOLICE

パトレイバーに登場する特車二課は「正義の警察」を描いている。

アメリカの警察映画を見ればわかるが(マイアミバイスとかNYPDブルーでもいいけど)アメリカにおいての警察は正義。
あるいは悪徳警官。
法の名の元に銃を撃ち悪を懲らしめる。

特車二課のように僻地でダサくて、やる気がなくて暇を持て余し、警察と言う”形骸化した正義”を名乗る組織の中で正義を行う警察、と言うのはなかなか描かれない。
警察が主人公なのに明確に戦うべき敵が存在せず、終盤まで銃撃もなく、アクションもない。

惜しい監督のパトと言う作品はとても日本的~東京的な文化を背景に描かれた作品であって、だからこそテロリストと戦い、ハッカーを相手にする攻殻などとは違う。
攻殻の公安はマッチョなんですよね。
だから受け入れられやすい。

パトが海外で受けづらい、と言うのがもし事実だとすればそれはロボ云々ではなくて文化的な差異が大きい。
攻殻と違ってパトは実に日本的な文化が色濃い。
それが理由になりそうに思える。



そもそもレイバーは兵器ではないですからこそ、ひとを中心に描くんですよ。
汎用人型兵器ではなく重機ですし、日本でもロボット兵器と見てませんぜ。

パト2でロボがロボとして描かれないのは、惜しい監督がやりたいようにやったからですが。
なので特車二課のメンツもほぼ活躍せず後藤&南雲さんが活躍する。
全くもってロボット兵器アニメではない。

パト1では周囲の声でロボの戦闘を描いたんだしねぇ……。
vsグリフォンしかマトモに観てないないなら、こんな見解になるのかもしれませんが。

とまれIMDbの映画ギークなコメントを見ていても受け入れているので上記はあくまで実際を伴わない思考実験。
海外でもマニアにはキチンとウケてる。

攻略戦(殴り込み)が好まれるのは、意外性が自然に演出できるからでしょう。
 予測不能の事態に対処しているだけで、アクションが成立しますから。
 今回はヘリとの戦いですから、攻略戦という状況が設定し難く(不可能)、そもそも対空戦闘なんて防衛戦以外の何ものでもありませんから。
 厭も応もありません。
 戦車と戦闘ヘリのキルレシオは圧倒的だそうですが、ハンディマッチでしかあり得ないので設定に苦労しましたが、多少のムリは否めないですね。
 そこはそれ、映画ですから。

押井守の「世界の半分を怒らせる」。第51号

Methods―押井守「パトレイバー2」演出ノート

※Methodsは名著ですが復刊.comの方が安く買えます